都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
『フランソワ・ポンポン展』 群馬県立館林美術館
群馬県立館林美術館
『開館20周年記念 フランソワ・ポンポン展』
2021/11/23~2022/1/26
20世紀前半のフランスの彫刻家フランソワ・ポンポンは、50歳を過ぎてから動物の彫刻を手がけると、形態を単純化した革新的な作品として評価され、亡くなるまでの10数年間に渡ってさまざまな彫刻を作り続けました。
そのポンポンの日本初の回顧展が群馬県立館林美術館にて開かれていて、初期から晩年までの石彫、ブロンズ、石膏、デッサン約90点に加え、同館の所蔵する関連作品などが公開されていました。
まず最初は若きポンポンが手がけた作品で、ヴィクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」に登場するコゼットを象った彫刻などが並んでいました。1855年にブルゴーニュに生まれたポンポンは、20歳にしてパリへ出ていて、ロダンの工房では大理石の下彫り職人として活動しました。
この頃のポンポンは『コゼット』に見られるように、ロマン主義的とも写実的ともいえる彫刻を作り出していて、後年の丸みを帯びた動物彫刻とは作風が大きく異なっていました。
ポンポンが動物をモチーフにした作品を手がけたのは、1895年に彫刻家のルネ・ド・サン=マンソーの助手を務め、ノルマンディー地方の田舎で多くの時間を過ごすようになってからのことでした。そしてパリでも動物園に通いながら動物の絵葉書などを購入していて、1906年には初めて動物の彫刻を発表しました。
当初、具象的ともいえる彫刻を作っていたポンポンは、野外の逆光に照らされた動物の輪郭線に美しさを見出したと伝えられていて、古代エジプトや日本美術、また中世の頭頂彫刻などの影響を受けながら、細部を省略した動物の彫刻を手がけるようになりました。
ポンポンが一躍脚光を浴びたのは、長さ2.6メートルもの『シロクマ』を出品した1922年のサロン・ドートンヌでした。当時、毛並みなど写実的な表現が多かった動物彫刻の中、流麗なフォルムと滑らかな質感を特徴としていて、世の中から大きく称賛されました。古典的でありながら、アール・デコの要素を感じさせつつ、のちのモダニズム彫刻の観点も垣間見える点に、ポンポンの動物彫刻の魅力があるのかもしれません。
会場でも『シロクマ』や『ヒグマ』、それに『キリン』などのブロンズ像が並んでいて、どこかかわいらしくも映る中、例えば『シロクマ』では地に足をつけてのっしのっしと歩くような重厚感も感じられました。
さて今回のポンポン展は、昨年の京都を皮切りに、名古屋、そして館林にて開かれてきた全国巡回展ですが、私が館林で見ようとしたのは理由があります。
それはそもそも同館がポンポンの作品を多くコレクションしている上、ポンポンのアトリエの雰囲気を当時の写真の元に表した「彫刻家のアトリエ」が公開されているからでした。
「彫刻家のアトリエ」には、ブルゴーニュ地方の一般的な農家の納屋の雰囲気が模されていて、ポンポンは20歳から亡くなるまでパリを拠点にしていたことから、入って右側の部分にはパリの芸術家向けの住宅の部分の様子が示されていました。
中にはポンポンの関連資料から選ばれた塑像台、道具箱、机などが置かれていて、レプリカやアンティーク品とともに、ポンポンが実際に使ったものもありました。*「彫刻家のアトリエ」は撮影可。
この他、道具類の実物や彫刻作品の製作プロセスを追う展示も充実していたのではないでしょうか。日本初の回顧展とするに不足はありませんでした。
1月26日まで開催されています。なお館林での展示を終えると、千葉県の佐倉市立美術館(2022年2月3日~3月29日)へと巡回します。
『開館20周年記念 フランソワ・ポンポン展』(@pompon_ten) 群馬県立館林美術館(@gunmatatebi)
会期:2021年11月23日(火・祝)~2022年1月26日(水)
休館:月曜日(ただし1/10は開館)、12/29(水)~1/3(月)、1/11(火)
料金:一般900(720)円、大高生450(360)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:群馬県館林市日向町2003
交通:東武伊勢崎線多々良駅から徒歩約20分。東武伊勢崎線館林駅からバス多々良巡回線にて「県立館林美術館前」からすぐ。バス停「多々良公民館南」からは徒歩約15分。
『開館20周年記念 フランソワ・ポンポン展』
2021/11/23~2022/1/26
20世紀前半のフランスの彫刻家フランソワ・ポンポンは、50歳を過ぎてから動物の彫刻を手がけると、形態を単純化した革新的な作品として評価され、亡くなるまでの10数年間に渡ってさまざまな彫刻を作り続けました。
そのポンポンの日本初の回顧展が群馬県立館林美術館にて開かれていて、初期から晩年までの石彫、ブロンズ、石膏、デッサン約90点に加え、同館の所蔵する関連作品などが公開されていました。
まず最初は若きポンポンが手がけた作品で、ヴィクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」に登場するコゼットを象った彫刻などが並んでいました。1855年にブルゴーニュに生まれたポンポンは、20歳にしてパリへ出ていて、ロダンの工房では大理石の下彫り職人として活動しました。
この頃のポンポンは『コゼット』に見られるように、ロマン主義的とも写実的ともいえる彫刻を作り出していて、後年の丸みを帯びた動物彫刻とは作風が大きく異なっていました。
ポンポンが動物をモチーフにした作品を手がけたのは、1895年に彫刻家のルネ・ド・サン=マンソーの助手を務め、ノルマンディー地方の田舎で多くの時間を過ごすようになってからのことでした。そしてパリでも動物園に通いながら動物の絵葉書などを購入していて、1906年には初めて動物の彫刻を発表しました。
当初、具象的ともいえる彫刻を作っていたポンポンは、野外の逆光に照らされた動物の輪郭線に美しさを見出したと伝えられていて、古代エジプトや日本美術、また中世の頭頂彫刻などの影響を受けながら、細部を省略した動物の彫刻を手がけるようになりました。
【館林】◆ポンポンのひみつ13◆《シロクマ》は大型作品で知られますが、生前の実物大は2点のみ。本展では美しい大理石の卓上サイズをご堪能下さい。最晩年はライオンの大型化を夢みたポンポン。館林会場では モデルのライオンの写真も展示しています。#フランソワポンポン展#群馬県立館林美術館 pic.twitter.com/zBShpwVC7H
— フランソワ・ポンポン展 〜動物を愛した彫刻家〜 (@pompon_ten) January 10, 2022
ポンポンが一躍脚光を浴びたのは、長さ2.6メートルもの『シロクマ』を出品した1922年のサロン・ドートンヌでした。当時、毛並みなど写実的な表現が多かった動物彫刻の中、流麗なフォルムと滑らかな質感を特徴としていて、世の中から大きく称賛されました。古典的でありながら、アール・デコの要素を感じさせつつ、のちのモダニズム彫刻の観点も垣間見える点に、ポンポンの動物彫刻の魅力があるのかもしれません。
会場でも『シロクマ』や『ヒグマ』、それに『キリン』などのブロンズ像が並んでいて、どこかかわいらしくも映る中、例えば『シロクマ』では地に足をつけてのっしのっしと歩くような重厚感も感じられました。
さて今回のポンポン展は、昨年の京都を皮切りに、名古屋、そして館林にて開かれてきた全国巡回展ですが、私が館林で見ようとしたのは理由があります。
それはそもそも同館がポンポンの作品を多くコレクションしている上、ポンポンのアトリエの雰囲気を当時の写真の元に表した「彫刻家のアトリエ」が公開されているからでした。
「彫刻家のアトリエ」には、ブルゴーニュ地方の一般的な農家の納屋の雰囲気が模されていて、ポンポンは20歳から亡くなるまでパリを拠点にしていたことから、入って右側の部分にはパリの芸術家向けの住宅の部分の様子が示されていました。
中にはポンポンの関連資料から選ばれた塑像台、道具箱、机などが置かれていて、レプリカやアンティーク品とともに、ポンポンが実際に使ったものもありました。*「彫刻家のアトリエ」は撮影可。
この他、道具類の実物や彫刻作品の製作プロセスを追う展示も充実していたのではないでしょうか。日本初の回顧展とするに不足はありませんでした。
1月26日まで開催されています。なお館林での展示を終えると、千葉県の佐倉市立美術館(2022年2月3日~3月29日)へと巡回します。
『開館20周年記念 フランソワ・ポンポン展』(@pompon_ten) 群馬県立館林美術館(@gunmatatebi)
会期:2021年11月23日(火・祝)~2022年1月26日(水)
休館:月曜日(ただし1/10は開館)、12/29(水)~1/3(月)、1/11(火)
料金:一般900(720)円、大高生450(360)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:群馬県館林市日向町2003
交通:東武伊勢崎線多々良駅から徒歩約20分。東武伊勢崎線館林駅からバス多々良巡回線にて「県立館林美術館前」からすぐ。バス停「多々良公民館南」からは徒歩約15分。
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