都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
『写真と絵画-セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策』 アーティゾン美術館
アーティゾン美術館
『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画-セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策』
4/29〜7/10
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/11/dd43d7690d460f73ef2c97345898536b.jpg)
アーティゾン美術館における石橋財団コレクションと現代アーティストのコラボレーション企画、『ジャム・セッション』も、今年で第3回目を数えるに至りました。
今回のジャム・セッションに参加したのは、ともに写真家の柴田敏雄と鈴木理策で、2人の新作や未発表作品約130点を含む約240点と、石橋財団コレクション約40点のあわせて計280点の作品が公開されていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/bf/890dfc09cf4e677456891f4ddd806543.jpg)
まず冒頭のセクションIでは、コンクリート擁壁や橋梁といった構造物を写す柴田の写真が展示されていて、藤島武二やマティス、それにモンドリアンの『砂丘』などの絵画も並んでいました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/fb/82aaa7770d567f94de33c22c7f091bee.jpg)
地形や構造物といったかたちを際立たせるような柴田の写真は、ともすれば抽象絵画を連想させて、同じく抽象的平面を開くモンドリアンらの絵画と響きあっていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/9c/c3847c9c3adb0592303d60940447d7f8.jpg)
それに続くのが、故郷の熊野をはじめ、水面や桜の咲く景色などを捉える鈴木の作品で、モネの『睡蓮』やクールベの雪景色を描いた絵画とあわせて展示されていました。
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ここでは鈴木が蓮の浮かぶ水辺を写した作品と『睡蓮』が並んでいて、ともにありのままの水面のみを捉えながら、光景そのものを切り取っては画面上で再構成するような表現に目を引かれました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/8a/2cb801d03dde3e654f8b598c8646e32b.jpg)
タイトルが示すように展覧会の1つの核となっていたのが、フランスのポスト印象派の画家、ポール・セザンヌの作品でした。というのも、柴田と鈴木はアーティストを志す頃からセザンヌの表現に触発されたとしていて、例えば柴田は高校時代に購入した画集にて『赤いチョッキの少年』を見たことが、美術へ進もうとしたきっかけだとキャプションにて語っていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/d9/1ad219614dde7c6af255c1b97d8d3717.jpg)
そして中央にセザンヌの名作『サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール』、左右に柴田の『高知県土佐郡大川村』と鈴木の『サンサシオン 09, C-58』が横一列に並んでいて、山というモチーフから構図、そして遠近感やそれぞれのかたちがよりクリアに浮かび上がっているように思えました。
今回のジャムセッションで興味深いのは、主に絵画のコレクションだけでなく、例えば円空の仏像やジャコメッティといった彫刻の作品も出展していたことでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/b6/e086009aca259bf9dc956392c0f088bd.jpg)
そのうち柴田は円空の二体の仏像を選んで展示していて、山の樹木より削り出されたプリミティブともいえる造形が、柴田の幾何学的な写真の構図と呼応していました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/bd/f33699c068beb38b10833dce01f9813a.jpg)
鈴木の連作『Mirror Portrait』とは、鏡によって反転した人物が写し出されたポートレイトで、エドゥアール・マネの『自画像』を頂点にした通路のようなスペースにて左右並んで展示されていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/cb/29e7becf52721267de3d90eb4a3aa8c6.jpg)
この『Mirror Portrait』の一方の壁の反対側には実際の鏡が設置されていて、ジャコメッティの『ディエゴの胸像』をはじめとした周囲の作品が映り込んでいました。こうした見ると見られるの関係を問い直すような展示も面白いのではないでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/d7/e9af06ebadd874e5b0f2378408eaba50.jpg)
アーティゾン美術館の定評のある西洋美術コレクションと、いま充実した制作を続ける柴田と鈴木の2人の写真を同時に楽しめる贅沢な内容といえるかもしれません。なおアーティゾン美術館にて写真家の作品を本格的に取り上げるのは、前身のブリヂストン美術館時代を含めて初めてのことだそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/fe/d0e37e3b7beae56b4830a9091cf968ac.jpg)
このほか、雪舟と2人の写真家の作品を参照するかつてない試みなど、リニューアルオープン以後、ますます活動の幅を広げるアーティゾン美術館ならではのチャレンジングな展示ともいえそうです。
会期末が迫ってきました。7月10日まで開催されています。おすすめします。
*写真は『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画-セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策』展示風景。撮影が可能です。
『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画-セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策』 アーティゾン美術館(@artizonmuseumJP)
会期:2022年4月29日(金・祝)〜7月10日(日)
休館:月曜日。
時間:10:00~18:00
*毎週金曜日は20時まで。(但し4月29日を除く)
*入館は閉館の30分前まで。
料金:【ウェブ予約チケット】一般1200円、大学・高校生無料(要予約)、中学生以下無料(予約不要)。
*事前日時指定予約制。
*ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ当日チケット(1500円)も販売。
住所:中央区京橋1-7-2
交通:JR線東京駅八重洲中央口、東京メトロ銀座線京橋駅6番、7番出口、東京メトロ銀座線・東西線・都営浅草線日本橋駅B1出口よりそれぞれ徒歩約5分。
『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画-セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策』
4/29〜7/10
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/11/dd43d7690d460f73ef2c97345898536b.jpg)
アーティゾン美術館における石橋財団コレクションと現代アーティストのコラボレーション企画、『ジャム・セッション』も、今年で第3回目を数えるに至りました。
今回のジャム・セッションに参加したのは、ともに写真家の柴田敏雄と鈴木理策で、2人の新作や未発表作品約130点を含む約240点と、石橋財団コレクション約40点のあわせて計280点の作品が公開されていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/bf/890dfc09cf4e677456891f4ddd806543.jpg)
まず冒頭のセクションIでは、コンクリート擁壁や橋梁といった構造物を写す柴田の写真が展示されていて、藤島武二やマティス、それにモンドリアンの『砂丘』などの絵画も並んでいました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/fb/82aaa7770d567f94de33c22c7f091bee.jpg)
地形や構造物といったかたちを際立たせるような柴田の写真は、ともすれば抽象絵画を連想させて、同じく抽象的平面を開くモンドリアンらの絵画と響きあっていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/9c/c3847c9c3adb0592303d60940447d7f8.jpg)
それに続くのが、故郷の熊野をはじめ、水面や桜の咲く景色などを捉える鈴木の作品で、モネの『睡蓮』やクールベの雪景色を描いた絵画とあわせて展示されていました。
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ここでは鈴木が蓮の浮かぶ水辺を写した作品と『睡蓮』が並んでいて、ともにありのままの水面のみを捉えながら、光景そのものを切り取っては画面上で再構成するような表現に目を引かれました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/8a/2cb801d03dde3e654f8b598c8646e32b.jpg)
タイトルが示すように展覧会の1つの核となっていたのが、フランスのポスト印象派の画家、ポール・セザンヌの作品でした。というのも、柴田と鈴木はアーティストを志す頃からセザンヌの表現に触発されたとしていて、例えば柴田は高校時代に購入した画集にて『赤いチョッキの少年』を見たことが、美術へ進もうとしたきっかけだとキャプションにて語っていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/d9/1ad219614dde7c6af255c1b97d8d3717.jpg)
そして中央にセザンヌの名作『サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール』、左右に柴田の『高知県土佐郡大川村』と鈴木の『サンサシオン 09, C-58』が横一列に並んでいて、山というモチーフから構図、そして遠近感やそれぞれのかたちがよりクリアに浮かび上がっているように思えました。
今回のジャムセッションで興味深いのは、主に絵画のコレクションだけでなく、例えば円空の仏像やジャコメッティといった彫刻の作品も出展していたことでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/b6/e086009aca259bf9dc956392c0f088bd.jpg)
そのうち柴田は円空の二体の仏像を選んで展示していて、山の樹木より削り出されたプリミティブともいえる造形が、柴田の幾何学的な写真の構図と呼応していました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/bd/f33699c068beb38b10833dce01f9813a.jpg)
鈴木の連作『Mirror Portrait』とは、鏡によって反転した人物が写し出されたポートレイトで、エドゥアール・マネの『自画像』を頂点にした通路のようなスペースにて左右並んで展示されていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/cb/29e7becf52721267de3d90eb4a3aa8c6.jpg)
この『Mirror Portrait』の一方の壁の反対側には実際の鏡が設置されていて、ジャコメッティの『ディエゴの胸像』をはじめとした周囲の作品が映り込んでいました。こうした見ると見られるの関係を問い直すような展示も面白いのではないでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/d7/e9af06ebadd874e5b0f2378408eaba50.jpg)
アーティゾン美術館の定評のある西洋美術コレクションと、いま充実した制作を続ける柴田と鈴木の2人の写真を同時に楽しめる贅沢な内容といえるかもしれません。なおアーティゾン美術館にて写真家の作品を本格的に取り上げるのは、前身のブリヂストン美術館時代を含めて初めてのことだそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/fe/d0e37e3b7beae56b4830a9091cf968ac.jpg)
このほか、雪舟と2人の写真家の作品を参照するかつてない試みなど、リニューアルオープン以後、ますます活動の幅を広げるアーティゾン美術館ならではのチャレンジングな展示ともいえそうです。
#アーティゾン美術館 では金曜日は20:00までの夜間開館を行っています🌟お仕事やお買い物帰りにぜひお立ち寄りください🌱あいにくのお天気ですが、美術館は雨宿りにも最適ですよ🌈アートなディナーが楽しめる #ミュージアムカフェ も21:00まで🍽️ pic.twitter.com/PhASKextPQ
— artizonmuseumjp (@artizonmuseumJP) May 13, 2022
会期末が迫ってきました。7月10日まで開催されています。おすすめします。
*写真は『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画-セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策』展示風景。撮影が可能です。
『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画-セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策』 アーティゾン美術館(@artizonmuseumJP)
会期:2022年4月29日(金・祝)〜7月10日(日)
休館:月曜日。
時間:10:00~18:00
*毎週金曜日は20時まで。(但し4月29日を除く)
*入館は閉館の30分前まで。
料金:【ウェブ予約チケット】一般1200円、大学・高校生無料(要予約)、中学生以下無料(予約不要)。
*事前日時指定予約制。
*ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ当日チケット(1500円)も販売。
住所:中央区京橋1-7-2
交通:JR線東京駅八重洲中央口、東京メトロ銀座線京橋駅6番、7番出口、東京メトロ銀座線・東西線・都営浅草線日本橋駅B1出口よりそれぞれ徒歩約5分。
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