都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
『加耶―古代東アジアを生きた、ある王国の歴史―』 国立歴史民俗博物館
国立歴史民俗博物館
『加耶―古代東アジアを生きた、ある王国の歴史―』
2022/10/4~12/11
国立歴史民俗博物館で開催中の『加耶―古代東アジアを生きた、ある王国の歴史―』を見てきました。
日本における古墳時代、朝鮮半島南部に存在した国々の伽耶は、新羅や百済をはじめ、日本の倭や中国と関わりながら、海上の交易と鉄の生産にて栄えました。
その伽耶の歴史をたどるのが『加耶―古代東アジアを生きた、ある王国の歴史―』で、大韓民国国立中央博物館の協力のもと、当地の墳墓から出土したアクセサリーや土器、それに武器や馬具など約200点以上の資料が公開されていました。
『短甲』 4世紀 伝金海退来里出土 国立中央博物館
伽耶において重要だったのは、鉄生産と交易と一体として運営していたことで、重厚な武装とともに華麗な土器も生産していました。
『有刺利器』 4世紀末〜5世紀前半 咸安道項里(文)10号墳 国立金海博物館
4世紀に成立した伽耶において最初に力を持ったのが、金官加耶と呼ばれる国で、豊かな鉄を背景に王や有力者の甲といった武具も作られました。
金官加耶 土器 展示風景
また金官加耶における土器は曲線的なかたちを特徴としていて、器台には波状文をはじめとするさまざまな文様が付けられました。
大加耶 土器 展示風景
この金官加耶に入れ替わって伽耶の盟主となったのが大加耶で、周辺地域を統合していくと、5世紀の終わりには伽耶の中で唯一、中国へ遣使を実現させるなど対外的にも力を誇示しました。
『龍鳳文環頭太刀』 5世紀後半 陜川玉田M3号墳 国立晋州博物館 ほか
大加耶の王陵からは、土器や鉄矛、馬具、それに百済に由来する銅鋺などが出土していて、有力者の身分を示す金銀のアクセサリーや細かな装飾の施された太刀も作られました。
『金銅冠』 5世紀中葉 高霊池山洞32号墳 国立大邱博物館
ともに大韓民国指定宝物である『金銅冠』をはじめとする装身具や、『龍鳳文環頭太刀』といった装飾太刀も見どころかもしれません。その精緻な意匠とともに金色の輝きに心を引かれました。
倭との交流 展示風景
伽耶では4世紀の中頃から倭との繋がりを伺わせる品々が副葬されていて、倭との交流が盛んになった金官加耶では沖ノ島で安全のための祭祀も行われるようになりました。
伽耶王と倭 展示風景
また伽耶の墳墓では倭で作られた須恵器や鏡が副葬されるなど、倭の葬送儀礼によって葬られた痕跡も残っていて、倭の人々が伽耶に「雑居」していた可能性も指摘されるなど、伽耶と倭は深い交流を繰り返していました。
『ガラス容器』 5世紀後半 陜川玉田M1号墳 国立晋州博物館
このように多方面と交流していた伽耶も6世紀に入ると勢力にかげりを見せ、532年には金官加耶、そして562年には大伽耶がそれぞれ新羅に下ると、伽耶の歴史は幕を閉じました。
『頸飾り』 6世紀前半 高霊池山洞45号墳 国立大邱博物館
倭は伽耶を通して鉄の道具や金工、馬の飼育や灌漑、また炊事器具やカマドなどを道具や技術を入手したとされていて、倭、ひいては日本の歴史にとっても極めて重要な存在だったといえるのではないでしょうか。日本と朝鮮半島の交流の歴史の原点を見る思いがしました。
12月11日まで開催されています。なお歴博での会期を終えると、九州国立博物館(2023年1月24日~3月19日)へと巡回します。*予定
『加耶―古代東アジアを生きた、ある王国の歴史―』 国立歴史民俗博物館(@rekihaku)
会期:2022年10月4日(火)~12月11日(日)
休館:月曜日。但し休日の場合は翌日が休館日。
時間:9:30~16:30(入館は16:00まで)
料金:一般1000円、大学生500円、高校生以下無料。
*総合展示も観覧可。
住所:千葉県佐倉市城内町117
交通:京成線京成佐倉駅下車徒歩約15分。JR線佐倉駅北口1番乗場よりちばグリーンバス田町車庫行きにて「国立博物館入口」または「国立歴史民俗博物館」下車。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
『加耶―古代東アジアを生きた、ある王国の歴史―』
2022/10/4~12/11
国立歴史民俗博物館で開催中の『加耶―古代東アジアを生きた、ある王国の歴史―』を見てきました。
日本における古墳時代、朝鮮半島南部に存在した国々の伽耶は、新羅や百済をはじめ、日本の倭や中国と関わりながら、海上の交易と鉄の生産にて栄えました。
その伽耶の歴史をたどるのが『加耶―古代東アジアを生きた、ある王国の歴史―』で、大韓民国国立中央博物館の協力のもと、当地の墳墓から出土したアクセサリーや土器、それに武器や馬具など約200点以上の資料が公開されていました。
『短甲』 4世紀 伝金海退来里出土 国立中央博物館
伽耶において重要だったのは、鉄生産と交易と一体として運営していたことで、重厚な武装とともに華麗な土器も生産していました。
『有刺利器』 4世紀末〜5世紀前半 咸安道項里(文)10号墳 国立金海博物館
4世紀に成立した伽耶において最初に力を持ったのが、金官加耶と呼ばれる国で、豊かな鉄を背景に王や有力者の甲といった武具も作られました。
金官加耶 土器 展示風景
また金官加耶における土器は曲線的なかたちを特徴としていて、器台には波状文をはじめとするさまざまな文様が付けられました。
大加耶 土器 展示風景
この金官加耶に入れ替わって伽耶の盟主となったのが大加耶で、周辺地域を統合していくと、5世紀の終わりには伽耶の中で唯一、中国へ遣使を実現させるなど対外的にも力を誇示しました。
『龍鳳文環頭太刀』 5世紀後半 陜川玉田M3号墳 国立晋州博物館 ほか
大加耶の王陵からは、土器や鉄矛、馬具、それに百済に由来する銅鋺などが出土していて、有力者の身分を示す金銀のアクセサリーや細かな装飾の施された太刀も作られました。
『金銅冠』 5世紀中葉 高霊池山洞32号墳 国立大邱博物館
ともに大韓民国指定宝物である『金銅冠』をはじめとする装身具や、『龍鳳文環頭太刀』といった装飾太刀も見どころかもしれません。その精緻な意匠とともに金色の輝きに心を引かれました。
倭との交流 展示風景
伽耶では4世紀の中頃から倭との繋がりを伺わせる品々が副葬されていて、倭との交流が盛んになった金官加耶では沖ノ島で安全のための祭祀も行われるようになりました。
伽耶王と倭 展示風景
また伽耶の墳墓では倭で作られた須恵器や鏡が副葬されるなど、倭の葬送儀礼によって葬られた痕跡も残っていて、倭の人々が伽耶に「雑居」していた可能性も指摘されるなど、伽耶と倭は深い交流を繰り返していました。
『ガラス容器』 5世紀後半 陜川玉田M1号墳 国立晋州博物館
このように多方面と交流していた伽耶も6世紀に入ると勢力にかげりを見せ、532年には金官加耶、そして562年には大伽耶がそれぞれ新羅に下ると、伽耶の歴史は幕を閉じました。
『頸飾り』 6世紀前半 高霊池山洞45号墳 国立大邱博物館
倭は伽耶を通して鉄の道具や金工、馬の飼育や灌漑、また炊事器具やカマドなどを道具や技術を入手したとされていて、倭、ひいては日本の歴史にとっても極めて重要な存在だったといえるのではないでしょうか。日本と朝鮮半島の交流の歴史の原点を見る思いがしました。
【本日より国際企画展示「#加耶」開催】10月4日(火)から12月11日(日)まで、企画展示室Aにて国際企画展示「#加耶-古代東アジアを生きた、ある王国の歴史-」を開催します。今回の展示では、加耶と倭の交流の移り変わりについても考えていきます。https://t.co/JHMTt4QFHW pic.twitter.com/9tPntkyyIT
— 国立歴史民俗博物館(歴博) (@rekihaku) October 4, 2022
12月11日まで開催されています。なお歴博での会期を終えると、九州国立博物館(2023年1月24日~3月19日)へと巡回します。*予定
『加耶―古代東アジアを生きた、ある王国の歴史―』 国立歴史民俗博物館(@rekihaku)
会期:2022年10月4日(火)~12月11日(日)
休館:月曜日。但し休日の場合は翌日が休館日。
時間:9:30~16:30(入館は16:00まで)
料金:一般1000円、大学生500円、高校生以下無料。
*総合展示も観覧可。
住所:千葉県佐倉市城内町117
交通:京成線京成佐倉駅下車徒歩約15分。JR線佐倉駅北口1番乗場よりちばグリーンバス田町車庫行きにて「国立博物館入口」または「国立歴史民俗博物館」下車。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
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