◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「人口減少を緩和させる」か。

2012-03-14 19:58:40 | 気になる言葉、具体例
                                 ストレス緩和?

 「固定させる」と立て続けに聞いて、違和感があったのですぐに辞書を引きました。東京の新名所、恐竜の橋について語るナレーションが「できるだけ早く固定させる必要があるのだ」だったのですが、聞いた瞬間に誤りだと感じたわけで、これは「固定する」が正しいのです。だって、それぐらいやってのける技術がありますもんね。
 「固定する」は、自動詞・他動詞、両方の意味がありますが、自動詞の意味では「固定観念」「固定客」「固定した収入」「固定した相場」のように言うことが多く、「~が固定する」は違和感があります。「~が」のときは「固定化する」と言っていませんか? 一方、他動詞の意味で「~を固定する」は普通の言い方です。「棚板を固定する」「枠を固定する」ですよね、「固定させる」とは言いません。
 2月22日に、「ストレスを緩和させる作用がある」ではなく「ストレスを緩和する作用がある」、「痛みを改善させる効果」ではなく「痛みを改善する効果」だと書きました。「緩和」「改善」は、自動詞・他動詞、両方の意味で使えますから、わざわざ「緩和させる」「改善させる」にする必要はないわけです。
 ところが、報道バラエティ番組で日本の将来の人口や年金について話していたとき、「人口減少を改善させる」「人口減少を緩和させる」は違和感なく自然に聞こえたので、その理由を整理してみました。「ストレス」や「痛み」は「~する」でいい、それは、治療、あるいは、軽いものなら気の持ちようで緩和・改善が可能だからで、人口減少という、ちょっとやそっとではどうにもならないような事象は「~する」では無理がある、だから「~させる」なのだ、ということでしょうか。
 つまり、人口の減っていくペースが「緩やかになるようにする」といったニュアンスであり、何もしないで成り行きに任せるというわけではないけれども、ペースを「緩やかにする」というほど直接的でもない、なるべく緩和してほしい、緩和するように促す、ということです。「する」「させる」は、全体的な意味やイメージによって違ってくる、そういう幅を持っているのかもしれません。
 でも、それは、自動詞・他動詞、両方の意味があるときだけで、例えば「成功」のように自動詞と決まっているものは「4回転を完ぺきに成功」なんて変ですよ。このごろは、ナレーションでもテロップでも「~を成功!」ですが、「~が成功」もしくは「~に成功」が正しいのです。「○○の開発に成功した」と言うでしょ?! そんなものまでぐずぐずにしないでぇ( ̄ ̄)!

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