◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「百年目」という言葉の意味。

2007-03-19 11:30:26 | 気になる言葉、具体例
             食らいついたが百年目じゃぁ
 「思い込んだら100年め」が、関西限定というよりも、もっと狭い範囲、あるいは、ひょっとして誤用なのではないか、というわけで、「100年め」という言葉の意味や使われ方について調べてみました。その前に一つ、表記辞典では、「3日め」「7番め」のように、公用文以外では「目」ではなく「め」と表記することになっているので、私はふだん「め」と書いているのですが、今回いろいろ検索してみて、どうも「め」では都合が悪いので、この記事に限って、以降、「目」と表記することにします。
 「100年目」「百年目」で検索したところ、最もたくさん出てきたのが落語(江戸というより上方の落語であるらしい。この辺がルーツ?)の「百年目」で、次が「ここで会ったが百年目」というセリフです。なお、「100年目の○○」といったものは、調べる目的から外れているので無視します。落語の「百年目」の「えらいとこを見られた、こりゃもう百年目じゃと思いました」は、もうどうにもならない、運の尽き、観念するしかないといった意味のようです。「ここで会ったが百年目、いざ、尋常に勝負」と言われたらもう逃れられないですよね、相手は「絶対逃がさんぞ」という気迫を持ってこのセリフを言っているのですから。
 それ以外では、思い込んだら百年目、思い込んだが百年目、思い立ったが百年目(吉日なら慣用句)、目が合ったが百年目、ここで知ったら百年目、見付けられたが百年目、その他いろいろ出てきましたが、いずれも、頑として変わらない、この機を逃さない、運命的な時だ、そういう強い意志、あるいは、逆にあきらめを表すような感じです。つまり、自分が主語なら強い意志、相手が主語ならもう逃れられないから観念する、ということになります。「福徳の百年目(三年目)」なんていうのもありましたが、久しぶりに幸運が巡ってきて思いがけず利益を得るといった意味だそうです。う~ん、100年は長すぎるので、3年ぐらいでお願いしたいですよね。
 さて、「思い込んだら100年めなんですよね」をどうするか。日夜研究に没頭してある発明品を完成させた人について語ったセリフなのですが、思い切って「思い込んだら命がけなんですよね」と修正してしまうか、絶対逃がさないぞ → 絶対あきらめないぞ、こういう解釈でよしとしてそのまま書くか、どちらかでしょう。そのまま書くにしても、「100年目」ではなく「百年目」のほうが雰囲気が出ますね。「目」だけ削って「100年」とするのは中途半端で意味がなく、「絶対にあきらめず、頑張って一刻も早く成し遂げるぞ!」という決意が伝わりません。「ここで会ったが百年」ではなく「ここで会ったが百年目」であるのと同じです。
 それにしても、私が数日にわたって考えてやっと結論を出したことを瞬時に判断しなければならないのですから、テロップの入力作業者は大変です。すべての入力作業者が高い日本語力を有しているかというと、昨日の記事にも書いたようにばらつきがあるようですし、スピード優先ということもあるようなら、常に話し手の意図を完ぺきに伝えるなんて無理でしょうから、それならせめて勝手に削らないで~。

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