古い居酒屋には独特の雰囲気と味がある。八重洲のふくべ、湯島のシンスケ、もう店は閉じてしまったが銀座の樽平、いずれも風格があって楽しい。そんな店よりはるかに前、創業1905年の『みますや』にお邪魔した。現在の建物が建てられたのは1928年、関東大震災で焼失した後に建てられた看板作りに銅板を貼った耐火性の建物。
この辺り一帯は戦災で多くの建物が焼かれたが、この店は焼け残った。それは偶然ではなく、隣家まで火が迫ったが、近所の男達が水をかけてなんとか類焼を食い止めた。それも自らの家も顧みずである。そのため、この店は伝説の居酒屋と呼ばれているのである。それほど愛され、男達からはなくなると困る店であったのであろう。
店は表通りから一本入った所にあり、思いのほか静か。入口の『どぜう』の赤提灯が目印となる。そして戸を開けて驚く、真ん中の大テーブルはもちろんこれを取り囲むようにある席には沢山の人、皆いい機嫌で大声で話している。我々は6人のため、左奥の座敷に座るが、とにかく賑やか。まだ、6時半というのに圧倒される。
まずは生ビールで乾杯、つまみには刺身盛り合わせ、出し巻き卵、塩ジャケ、鳥から、牛煮込み、焼き鳥、そして名物の馬刺し、赤身もあるが、今回は霜降りの肉にしてみる。
お通しはきぬかつぎが2つ、粗塩で頂く。すると次の瞬間に刺身盛り合わせ、出し巻き卵、少しして塩ジャケと牛煮込みが運ばれてくる。何と早いんだ。
刺身盛り合わせはマグロ赤身、中とろ、タコ、イカ、甘エビ、飛び子、明太子が載っていてマグロの刺身の大きさにびっくり。しかし、これがかなり美味い。
鳥からや出し巻き卵は普通だが、普通に美味い。私はこの店のやや辛めな塩ジャケと大根おろしで呑むのが好きである。
酒は皆ピッチが早いので2合を2本ずつ。最初は磯自慢(静岡県)と七田(佐賀県)から。七田の辛口が美味い。
次いで出てきた焼き鳥、周りはカリッと中はしっとりと上手く焼けていてボリュームも十分。さらに馬刺しは値段も高いが量も多い。私はニンニクではなく、生姜を付けて頂く。口の中でとろける旨さがある。
酒は頼んでも瞬間蒸発するので〆張鶴(新潟県)、刈穂(秋田県)をまた2合ずつ。日本酒のラインナップも素晴らしく、次いで田酒(青森県)も追加。
追加したつまみで美味かったのがアジフライ、メニューには魚フライとある。揚げたてパリパリは素晴らしい。但し、次に頼んだ肉じゃがは先ほどの牛煮込みと同じ味付け、これはかぶらない方がいい。
さらに酒一筋(岡山県)を頼むが、この辺りから売り切れの酒が増えてきて、面倒なので澤乃井(東京都)の四合瓶を追加。つまみは漬物にしておく。
しかし、我ら居酒屋探検隊のメンバーはあっという間に飲み干してしまう。名物のカレーも食べたいのだがさすがに腹が一杯。なお、穴子の煮付けが売り切れていて食べられなかったのが心残りである。
みますや
千代田区神田司町2ー15ー2
0332945433