『メトロに乗って』その112。西郊ロッヂングの横を通り過ぎ、しばらく行くと5分ほどで大きな邸宅、今は一般開放されている太田黒公園に到着する。
入口は立派な門があるが、圧巻は門の内部。70mの御影石が敷き詰められた道の両側には樹齢100年を越す銀杏が整然と並木のように植えられている。
その右手には管理事務所や蔵などがあるが、まっすぐに行くと自然の水の流れがあり、一面の芝生、その先にはモミジ、さらには池がある。池に突き出すように四阿があり、そこから本屋を見るのもいい。ただ、蚊が多いけれど。
池を回って戻ると記念館と名付けられた昭和8年築の洋館。これは先ほどの西郊ロッヂングと同じである。中は公開されていて、当主であった太田黒元雄氏が生前に使っていたスタインウェイ社製のピアノや蓄音機などが飾られていて暖かい雰囲気。
これからの季節はモミジやイチョウが紅葉し、ライトアップもされる荻窪の名所であった。
元の通りをさらに5分程度行き、左に曲がると荻外荘(てきがいそう)公園、広々とした芝生の広場である。
ただ、この広場は昭和初期の首相も務めた近衛文麿の荻外荘の中庭の一部で金網越しに建物も半分程度(残りは豊島区に移築)を見ることもできる。
昔の写真を見るとこの場所には大きな池があったようで確かに建物のある方が高くなっている。近衛の私邸ではあったが、この場で政治会談や組閣などが行われ、その後の鳩山一郎の音羽御殿、田中角栄の目白御殿などと同様に新聞の活字を飾っていた。また、昭和20年12月にGHQからの逮捕の知らせを聞いた近衛文麿が自決をしたのでも有名な場所である。
今回は西郊ロッヂング、太田黒公園、荻外荘公園と巡ったが、荻窪は昭和に入り開発された高級住宅地であり、昭和初期を偲ぶ建造物が数多く残されていることがよくわかる散歩であった。