世間はお盆休暇というのに、いろいろと忙しい。下旬に休暇を取ろうと頑張っているためである。そこで、少し溜まってしまった「読んだもの」を、この際、お蔵出し。
■高田理惠子『学歴・階級・軍隊:高学歴兵士たちの憂鬱な日常』(中公新書)中央公論新社 2008.7
「国民皆兵」を掲げた大日本帝国において、大学出身者は、一生軍隊とかかわらないで済むはずだった。1943年12月、その特権がついに廃止され、学徒出陣が始まる。貧乏クジを引いたのは、1920年代前半(大正10年代)生まれの大学生たちだった。彼らはまた、戦後、アプレゲールと揶揄された世代でもある。高学歴兵は、兵営において、学校(=立身出世)から排除された庶民兵士のルサンチマンの標的になった。著者は、近代日本において、最も「平等主義的」であった2つの男性世界「旧制高校」と「軍隊」を行きつ戻りつして、両者の実態を冷徹に描き出す。なお、彼らの人生の背後に「母の問題」を見通しているのは、女性の著者ならではの興味深い分析だと思った。
■中島岳志、西部邁『パール判決を問い直す:「日本無罪論」の真相』(講談社現代新書)講談社 2008.7
パール判事といえば、東京裁判において、被告人全員の無罪を主張した人物らしい、ということしか知らない。さきの安倍首相が、インド訪問の折、パール判事の遺族と面会するなど、妙に持ち上げていたので、これは困った人だと思い、『パール判事』(白水社、2007) という本を書いた中島岳志さんも、困った人の一味なのだろうと思っていた。けれども、本書をパラパラとめくってみたら、パールの主張は、決して「日本無罪論」でも「大東亜戦争肯定論」でもない、というのが中島氏の立場である、と分かり、それなら、とりあえず本書を読んでみようと思った。日本の自称保守(反左翼)勢力によるミス・リーディングを、真正保守の西部邁氏が痛烈に批判している。
■浦沢直樹、手塚治虫『Pluto(プルートゥ)』第6巻 小学館 2008.8
なんと、物語の序盤から、実質的な主役だったロボット刑事のゲジヒトが殺されてしまった。最後に残ったのは、光子エネルギーロボットのエプシロンのみ。2003年9月から連載が開始された長い物語も、ようやくクライマックスに辿りついたのか。既に退場してしまったアトムやゲジヒトの復活はあるのだろうか。完結したら、もう1回、まとめて読み通したいなあ。
■出久根達郎『続 御書物同心日記』(講談社文庫) 講談社 2004.2
先日読んだ『御書物同心日記』の続刊。登場人物は、前作と同じ、新米御書物方同心の東雲丈太郎と、その同僚、白瀬角一郎。世話役の時田敬之助、日本橋の古本屋、小泉喜助など、おなじみの面々。前作よりも、本にちなんだ話のつくりかたが上手くなっているように思う。稀覯本をめぐる珍事件など、本好きなら、あるあるwと嬉しくなるような趣向である。さらに続編が1冊あるらしいので、楽しみ。
このほか、雑誌『芸術新潮』7月号(大特集・私はそれを見た!ゴヤの「戦争と平和」)と8月号(大特集・北京)も買ってあって、ときどき眺めている。ゴヤは一生惹かれ続ける運命の画家。後者は、執筆陣の選択が実にいいのよね~。
■高田理惠子『学歴・階級・軍隊:高学歴兵士たちの憂鬱な日常』(中公新書)中央公論新社 2008.7
「国民皆兵」を掲げた大日本帝国において、大学出身者は、一生軍隊とかかわらないで済むはずだった。1943年12月、その特権がついに廃止され、学徒出陣が始まる。貧乏クジを引いたのは、1920年代前半(大正10年代)生まれの大学生たちだった。彼らはまた、戦後、アプレゲールと揶揄された世代でもある。高学歴兵は、兵営において、学校(=立身出世)から排除された庶民兵士のルサンチマンの標的になった。著者は、近代日本において、最も「平等主義的」であった2つの男性世界「旧制高校」と「軍隊」を行きつ戻りつして、両者の実態を冷徹に描き出す。なお、彼らの人生の背後に「母の問題」を見通しているのは、女性の著者ならではの興味深い分析だと思った。
■中島岳志、西部邁『パール判決を問い直す:「日本無罪論」の真相』(講談社現代新書)講談社 2008.7
パール判事といえば、東京裁判において、被告人全員の無罪を主張した人物らしい、ということしか知らない。さきの安倍首相が、インド訪問の折、パール判事の遺族と面会するなど、妙に持ち上げていたので、これは困った人だと思い、『パール判事』(白水社、2007) という本を書いた中島岳志さんも、困った人の一味なのだろうと思っていた。けれども、本書をパラパラとめくってみたら、パールの主張は、決して「日本無罪論」でも「大東亜戦争肯定論」でもない、というのが中島氏の立場である、と分かり、それなら、とりあえず本書を読んでみようと思った。日本の自称保守(反左翼)勢力によるミス・リーディングを、真正保守の西部邁氏が痛烈に批判している。
■浦沢直樹、手塚治虫『Pluto(プルートゥ)』第6巻 小学館 2008.8
なんと、物語の序盤から、実質的な主役だったロボット刑事のゲジヒトが殺されてしまった。最後に残ったのは、光子エネルギーロボットのエプシロンのみ。2003年9月から連載が開始された長い物語も、ようやくクライマックスに辿りついたのか。既に退場してしまったアトムやゲジヒトの復活はあるのだろうか。完結したら、もう1回、まとめて読み通したいなあ。
■出久根達郎『続 御書物同心日記』(講談社文庫) 講談社 2004.2
先日読んだ『御書物同心日記』の続刊。登場人物は、前作と同じ、新米御書物方同心の東雲丈太郎と、その同僚、白瀬角一郎。世話役の時田敬之助、日本橋の古本屋、小泉喜助など、おなじみの面々。前作よりも、本にちなんだ話のつくりかたが上手くなっているように思う。稀覯本をめぐる珍事件など、本好きなら、あるあるwと嬉しくなるような趣向である。さらに続編が1冊あるらしいので、楽しみ。
このほか、雑誌『芸術新潮』7月号(大特集・私はそれを見た!ゴヤの「戦争と平和」)と8月号(大特集・北京)も買ってあって、ときどき眺めている。ゴヤは一生惹かれ続ける運命の画家。後者は、執筆陣の選択が実にいいのよね~。