見もの・読みもの日記

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神話から近代まで/歴史物語 朝鮮半島(姜在彦)

2008-08-19 23:06:47 | 読んだもの(書籍)
○姜在彦『歴史物語 朝鮮半島』(朝日選書) 朝日新聞社 2006.9

 建国神話に始まり、古朝鮮→三国時代(高句麗・百済・新羅)→統一新羅→後三国時代→高麗王朝→李氏朝鮮→大韓帝国→日韓併合まで、およそ二千年の朝鮮半島史を概観したもの。

 私は、もともと好きだった古代史と、最近、関心の高い近代史については、多少の知識を蓄えてきたが、その間が全くの空白だった。本書によって初めて、統一新羅の繁栄と退廃、後三国の鼎立と、高麗による国土再統一、李氏朝鮮の長期支配と、なんとか「間」がつながった感じだ。

 最近、韓国の歴史ドラマが日本でも放映されているが、『チャングム』『チェオクの剣』など、近世もの(朝鮮時代)は、だいたい架空の人物が主人公である。歴史実在(?)の英雄を主人公にしようとすると、『太祖王建』(10世紀)の高麗とか、『朱蒙』『太王四神記』など高句麗王朝(紀元前~7世紀)まで遡ってしまう。ありえねーだろう、と思っていたのだが、本書を読んで、よく分かった。朝鮮の場合、中世以降は、文官貴族の支配力が強くて、日本の戦国時代のような、胸躍る「武士の時代」がないらしい。

 わずかに武人の活躍が見えるのは、ひとつは高麗末期の「武臣の乱」。しかし、「武臣たちは政治的経験がなく、相互間に自滅的な権力争うを繰り返し」わずか62年間の崔氏武臣政権が続いただけだった。日本では、源頼朝以後、670余年も武士政権が続いたのと、何とも対照的である。ちなみに、この「武臣の乱」を扱った韓国ドラマに『武人時代』というのがあるそうだ。なお、この短命の武臣政権が、モンゴル軍との戦闘から国土を守ったというのも興味深い。もう1例、朝鮮王朝の太祖・李成桂も、武勲によって頭角をあらわし、武力クーデターで高麗を倒している。李世民とか趙匡胤みたいだ。ドラマの主役になってもよさそうだが、晩年は息子たちの王位争いに嫌気がさして、念仏三昧の生活をおくったというから、ちょっと可哀想な人物である。それで人気がないのかしら。

 近代化に向かう朝鮮の歩みについては、同じ著者の『西洋と朝鮮』(朝日選書、2008)や、最近読んだ岡本隆司『世界のなかの日清韓関係史』(講談社選書メチエ、2008)と重なるところがあって、理解しやすかった。ただし、ただの洋夷嫌いだと思っていた大院君が、党派争いの温床である書院650余りの撤廃など、大胆な内政改革を断行していることは初めて知った。

 閔妃暗殺(1895)から韓国併合(1905)までの15年間は、最終章の30ページほどで語られているのが、この間については、まだまだ私の知らないことが多いと実感した。独立協会と皇国協会の集団的暴力による攻防、「第二次日韓協約」(保護条約)締結の具体的ないきさつ(本書の記述が本当なら、韓国では「皇帝も首相も承認していない」と言い分にも理があると思う)、義兵と言論による抵抗運動など。続けては、同じ著者の『日本による朝鮮支配の40年』を読むべきだろう。
コメント
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