○畠山記念館 夏季展『赤のやきもの-金襴手・万暦赤絵・古赤絵・南京赤絵』
http://www.ebara.co.jp/socialactivity/hatakeyama/
中国明時代後半(16世紀~17世紀前半)、主に景徳鎮の民窯で生産された、赤を主体とする色絵の焼きもの、金襴手、古赤絵、万暦赤絵を集めた展覧会である。
最初に目に留まったのは『古赤絵人物文壺』。官女(仙女?)と唐子たちの戯れるさまをのどかに描く。古赤絵とは、万暦以前に製作された焼きもので、赤・黄・緑のみを用い、染付を併用しない(※ほほう、なるほど、と思ったら、以前、同じことを戸栗美術館でも学んでいた)。はっきり言うと、絵はあまり上手くない。美人であるべき官女たちも、くしゃくしゃした丸顔をしていて、柿右衛門の洗練とは、大人と子供ほどの隔たりがある。オランダで、古いデルフト陶器のコレクションを見たとき、東洋風に描かれた人物像が、あんまり下手くそなので、やっぱり模倣は駄目だなあと思ったが、実は、民窯系の人物像を手本にしていたのかもしれない、と気づいた。
いちばんのお気に入りは『古赤絵刀馬人文鉢』である。見込の中央には杖をついた仙人と蟹(!?)、鉢の周囲には馬を駆る3人の武将。「刀馬人」とは、物語や歴史上の有名な戦闘場面を描いたものをいう。見れば見るほど、空想がふくらんで楽しい。しかし、考えてみると、この手の名品は清朝官窯の作には少ないと思う。殺伐とした主題は、華やかな宮廷では好まれなかったのか。
本展の一押しは、ポスターにもなっている『金襴手六角瓢形花入』だろう。赤と金の華やかさを、最大限に活かした美しい名品である。しかし、実物を見ると、意外と塗りむらが目立つし、直線や曲線もフリーハンドで歪んでいる。『金襴手丸文小壺』は、ベタ塗りの赤い丸がアクセントになっているのだが、やはり塗りむらが気になる。この赤丸模様は、伊万里の金襴手でもよく使われる。たとえば、直前に戸栗美術館で見た『琴高仙人文鉢』が頭に浮かぶ(→画像はこちら。鯉釣り専門サイトで発見)。しかし、塗りむらとも歪みとも無縁の伊万里金襴手の完成度は、清朝官窯に比すべきかもしれない。
そうか、伊万里ってすごかったんだなあ、と、この畠山記念館に来て、あらためて実感した。ただし、伊万里の金襴手は、中国の赤絵金襴手から1世紀以上の隔たりがあることは付け加えておこう。また、中国の赤絵の素朴な愛らしさには、茶人好みの独特の魅力があることも。南京赤絵の『人物文汁次』(急須?)は、片面に文人が茶を楽しむ図を描きながら、裏面には、裸の童子が行水する図を描く。いかにも庶民を喜ばせそうなユーモアである。
先日、NHK新日曜美術館で取り上げられた鈴木其一の『向日葵図』が季節感を盛り上げる。展示室内には、狭い露地がしつらえてあって、ときどき、係の方がつくばいの水をひしゃくで撒いてくれるの、いいなあ。土佐光起の『鶉図』も良かった。
http://www.ebara.co.jp/socialactivity/hatakeyama/
中国明時代後半(16世紀~17世紀前半)、主に景徳鎮の民窯で生産された、赤を主体とする色絵の焼きもの、金襴手、古赤絵、万暦赤絵を集めた展覧会である。
最初に目に留まったのは『古赤絵人物文壺』。官女(仙女?)と唐子たちの戯れるさまをのどかに描く。古赤絵とは、万暦以前に製作された焼きもので、赤・黄・緑のみを用い、染付を併用しない(※ほほう、なるほど、と思ったら、以前、同じことを戸栗美術館でも学んでいた)。はっきり言うと、絵はあまり上手くない。美人であるべき官女たちも、くしゃくしゃした丸顔をしていて、柿右衛門の洗練とは、大人と子供ほどの隔たりがある。オランダで、古いデルフト陶器のコレクションを見たとき、東洋風に描かれた人物像が、あんまり下手くそなので、やっぱり模倣は駄目だなあと思ったが、実は、民窯系の人物像を手本にしていたのかもしれない、と気づいた。
いちばんのお気に入りは『古赤絵刀馬人文鉢』である。見込の中央には杖をついた仙人と蟹(!?)、鉢の周囲には馬を駆る3人の武将。「刀馬人」とは、物語や歴史上の有名な戦闘場面を描いたものをいう。見れば見るほど、空想がふくらんで楽しい。しかし、考えてみると、この手の名品は清朝官窯の作には少ないと思う。殺伐とした主題は、華やかな宮廷では好まれなかったのか。
本展の一押しは、ポスターにもなっている『金襴手六角瓢形花入』だろう。赤と金の華やかさを、最大限に活かした美しい名品である。しかし、実物を見ると、意外と塗りむらが目立つし、直線や曲線もフリーハンドで歪んでいる。『金襴手丸文小壺』は、ベタ塗りの赤い丸がアクセントになっているのだが、やはり塗りむらが気になる。この赤丸模様は、伊万里の金襴手でもよく使われる。たとえば、直前に戸栗美術館で見た『琴高仙人文鉢』が頭に浮かぶ(→画像はこちら。鯉釣り専門サイトで発見)。しかし、塗りむらとも歪みとも無縁の伊万里金襴手の完成度は、清朝官窯に比すべきかもしれない。
そうか、伊万里ってすごかったんだなあ、と、この畠山記念館に来て、あらためて実感した。ただし、伊万里の金襴手は、中国の赤絵金襴手から1世紀以上の隔たりがあることは付け加えておこう。また、中国の赤絵の素朴な愛らしさには、茶人好みの独特の魅力があることも。南京赤絵の『人物文汁次』(急須?)は、片面に文人が茶を楽しむ図を描きながら、裏面には、裸の童子が行水する図を描く。いかにも庶民を喜ばせそうなユーモアである。
先日、NHK新日曜美術館で取り上げられた鈴木其一の『向日葵図』が季節感を盛り上げる。展示室内には、狭い露地がしつらえてあって、ときどき、係の方がつくばいの水をひしゃくで撒いてくれるの、いいなあ。土佐光起の『鶉図』も良かった。