■東京国立博物館 『日本国宝展』(2014年10月15日~12月7日)
11/1(土)に見た展示から書いておこう。開館と同時に門内に入ったが平成館の前で15分ほど待ち。まあ先週の鳥獣戯画展(120分待ち)に比べれば、なんということはない。正倉院宝物だけは、きちんと見たいと思っていたので、先に見に来た友人に展示構成を確かめると「基本的に時代順なので、正倉院宝物は入ってすぐ。仏像だけ最後」と教えてくれた。ずいぶんオーソドックスで、拍子抜けする感じだった。
第1室にはいると、どーんと法隆寺の『玉虫厨子』(飛鳥時代)。その先に、特別出陳の正倉院宝物。使いこまれ、角のすり減った『紅牙撥鏤撥(こうげばちるのばち)』は人の頭越しだと少し見にくいが、『鳥毛立女屏風』(第1扇 第3扇)は大きいので、後列からでも見やすいのがありがたい。これを見ると、アスターナ出土の『樹下人物図』を思い出して、西域に行きたくなる…。『楓蘇芳染螺鈿槽琵琶(かえですおうぞめらでんそうのびわ)』は、私が正倉院展で初めて見た琵琶ではないかと思う。大きな白象の背中で楽を奏する胡人たちという、お伽噺のような、不思議な図様が描かれている。
土偶、銅鐸、藤ノ木古墳出土品、沖ノ島祭祀遺跡出土品などもこれに続くあたり。絵画(平安仏画)では『孔雀明王像』と『普賢菩薩像』が見どころなのだろうが、どちらも東博の所蔵品で、これまで目にした機会がないわけではないので、あまり感慨が起こらない。むしろ後半の『普賢延命菩薩像』(広島・持光寺、11/11~24)や『普賢菩薩像』(鳥取・豊乗寺、11/26~)が見たかった。久しぶりで嬉しかったのは、大和文華館の『寝覚物語絵巻』。小さな人物図がかわいい。
「多様化する信仰と美」では、慶長遣欧使節関係資料や琉球国王尚家関係資料と、日本国外で作られた国宝=いわゆる「唐物」を紹介し、国宝の多様性を示す。最後は仏像だが、あまり珍しいものはなかった。むしろ神像で、薬師寺の八幡三神像のうち、僧形八幡神坐像と神功皇后坐像が来ていらしたのが嬉しかった。それから、元興寺極楽坊の五重小塔。小塔と言っても、5.5メートルだから堂々としたもので、日本の塔の美しさが分かって、とてもよかった。
■平成館・企画画展示室 『国宝再現-田中親美と模写の世界-』(2014年10月15日~12月7日)
横山大観や菱田春草による平安仏画の模写等もあるが、見ものは田中親美による平家納経模本(レプリカ)が第一。私が行ったときは「平清盛願文」が全面がばっと開いていて、思わず端から端まで写真を撮ってきてしまった。
■本館・特別2室 『唐物ってなに?』(2014年9月30日~11月24日)
『日本国宝展』に1セクションが設けられている「日本国外(中国・朝鮮)でつくられた国宝」や、三井記念美術館で開催中の『東山御物の美』を見るための基礎知識解説になっている。『君台観左右帳記』に始まり、「唐物」への憧れが生み出した「和製唐物」まで。面白い。
■東洋館・8室 『中国書画精華-護り伝えられてきた名品たち-』(2014年9月30日~12月7日)
いきなり、岐阜・永保寺の『千手観音図『(南宋時代・13世紀)があってびっくりした。こういう常設展示で、普段見られない作品が見られると嬉しい。伝陳容筆『五龍図巻』は修復が終わって、ずいぶんきれいになった。
■天理ギャラリー 第153回展『古代東アジアの漆芸』(2014年10月3日~11月29日)
あまりお客がいなかったせいか、受付にいたお兄さんが、ずいぶん熱心に説明をしてくれた。中国の漆工芸に興味を持ったのは、たぶん湖北省博物館を参観したときだと思う。玉や青銅のように本国では珍重されていないけれど、日本人には親しみやすい中国文化の一面だと思う。展示品は、ほとんどが春秋戦国から漢代のものだが、「今できたばかり」のような質感を持つものもある。漆の恒久不変性ってすごいなあと感心した。
■松涛美術館 『御法(みのり)に守られし醍醐寺展』(2014年10月7日~11月24日)
点数は少ないが、国宝『過去現在絵因果経』の全場面展示が見どころ。主人公の太子(ブッダ)が妃をおいて出家し、修行の末、悟りを得るまでを絵と文で描いているが、太子の容貌が少しずつ変化していく(肌の白い美青年→髭を生やした壮年の修行者へ)など、芸が細かくて面白い。仏像は不動明王像(五大明王像の内)1体。奈良博の醍醐寺展でも見たような仏画の名品がかなり多数。俵屋宗達の『扇面貼付屏風』は、同種の中でも出色の作品で、大好きなもの。奈良博では見られなかったので、ラッキーだった(~11/3まで)。
11/1(土)に見た展示から書いておこう。開館と同時に門内に入ったが平成館の前で15分ほど待ち。まあ先週の鳥獣戯画展(120分待ち)に比べれば、なんということはない。正倉院宝物だけは、きちんと見たいと思っていたので、先に見に来た友人に展示構成を確かめると「基本的に時代順なので、正倉院宝物は入ってすぐ。仏像だけ最後」と教えてくれた。ずいぶんオーソドックスで、拍子抜けする感じだった。
第1室にはいると、どーんと法隆寺の『玉虫厨子』(飛鳥時代)。その先に、特別出陳の正倉院宝物。使いこまれ、角のすり減った『紅牙撥鏤撥(こうげばちるのばち)』は人の頭越しだと少し見にくいが、『鳥毛立女屏風』(第1扇 第3扇)は大きいので、後列からでも見やすいのがありがたい。これを見ると、アスターナ出土の『樹下人物図』を思い出して、西域に行きたくなる…。『楓蘇芳染螺鈿槽琵琶(かえですおうぞめらでんそうのびわ)』は、私が正倉院展で初めて見た琵琶ではないかと思う。大きな白象の背中で楽を奏する胡人たちという、お伽噺のような、不思議な図様が描かれている。
土偶、銅鐸、藤ノ木古墳出土品、沖ノ島祭祀遺跡出土品などもこれに続くあたり。絵画(平安仏画)では『孔雀明王像』と『普賢菩薩像』が見どころなのだろうが、どちらも東博の所蔵品で、これまで目にした機会がないわけではないので、あまり感慨が起こらない。むしろ後半の『普賢延命菩薩像』(広島・持光寺、11/11~24)や『普賢菩薩像』(鳥取・豊乗寺、11/26~)が見たかった。久しぶりで嬉しかったのは、大和文華館の『寝覚物語絵巻』。小さな人物図がかわいい。
「多様化する信仰と美」では、慶長遣欧使節関係資料や琉球国王尚家関係資料と、日本国外で作られた国宝=いわゆる「唐物」を紹介し、国宝の多様性を示す。最後は仏像だが、あまり珍しいものはなかった。むしろ神像で、薬師寺の八幡三神像のうち、僧形八幡神坐像と神功皇后坐像が来ていらしたのが嬉しかった。それから、元興寺極楽坊の五重小塔。小塔と言っても、5.5メートルだから堂々としたもので、日本の塔の美しさが分かって、とてもよかった。
■平成館・企画画展示室 『国宝再現-田中親美と模写の世界-』(2014年10月15日~12月7日)
横山大観や菱田春草による平安仏画の模写等もあるが、見ものは田中親美による平家納経模本(レプリカ)が第一。私が行ったときは「平清盛願文」が全面がばっと開いていて、思わず端から端まで写真を撮ってきてしまった。
■本館・特別2室 『唐物ってなに?』(2014年9月30日~11月24日)
『日本国宝展』に1セクションが設けられている「日本国外(中国・朝鮮)でつくられた国宝」や、三井記念美術館で開催中の『東山御物の美』を見るための基礎知識解説になっている。『君台観左右帳記』に始まり、「唐物」への憧れが生み出した「和製唐物」まで。面白い。
■東洋館・8室 『中国書画精華-護り伝えられてきた名品たち-』(2014年9月30日~12月7日)
いきなり、岐阜・永保寺の『千手観音図『(南宋時代・13世紀)があってびっくりした。こういう常設展示で、普段見られない作品が見られると嬉しい。伝陳容筆『五龍図巻』は修復が終わって、ずいぶんきれいになった。
■天理ギャラリー 第153回展『古代東アジアの漆芸』(2014年10月3日~11月29日)
あまりお客がいなかったせいか、受付にいたお兄さんが、ずいぶん熱心に説明をしてくれた。中国の漆工芸に興味を持ったのは、たぶん湖北省博物館を参観したときだと思う。玉や青銅のように本国では珍重されていないけれど、日本人には親しみやすい中国文化の一面だと思う。展示品は、ほとんどが春秋戦国から漢代のものだが、「今できたばかり」のような質感を持つものもある。漆の恒久不変性ってすごいなあと感心した。
■松涛美術館 『御法(みのり)に守られし醍醐寺展』(2014年10月7日~11月24日)
点数は少ないが、国宝『過去現在絵因果経』の全場面展示が見どころ。主人公の太子(ブッダ)が妃をおいて出家し、修行の末、悟りを得るまでを絵と文で描いているが、太子の容貌が少しずつ変化していく(肌の白い美青年→髭を生やした壮年の修行者へ)など、芸が細かくて面白い。仏像は不動明王像(五大明王像の内)1体。奈良博の醍醐寺展でも見たような仏画の名品がかなり多数。俵屋宗達の『扇面貼付屏風』は、同種の中でも出色の作品で、大好きなもの。奈良博では見られなかったので、ラッキーだった(~11/3まで)。