見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2014年11月@東京:存星(五島美術館)、カンタと刺子(日本民藝館)ほか

2014-11-11 21:11:12 | 行ったもの(美術館・見仏)
神奈川県立歴史博物館 特別展『白絵(しろえ)-祈りと寿(ことほ)ぎのかたち-』(2014年10月11日~11月16日)

 11/2(日)は鎌倉のあと、この展覧会に寄った。平安時代、出産の場には白い綾絹を貼った「白綾屏風」を立て回し、妊婦や介添えの女性たちは白い装束に身を包んで、生命の誕生を迎えた。やがて白綾屏風は、白地に白の絵の具で松竹鶴亀を描く白絵屏風へと変化した。この珍しい「白絵屏風」を、私は2007年、サントリー美術館の『BIOMBO/屏風 日本の美』で見た記憶があった(伝・原在中筆、京都府立総合資料館所蔵)。ほかにも類例があるのかと思ったが、日常的な調度品と違って、屏風はこの1例しかないらしい。しかし、撒米を入れる押桶(おしおけ)、守箱、犬筥など、出産にかかわる道具類は素木に白絵で飾られたものが多かった。天児、這子などの白い人形たちもあって、あやしい展覧会だった。

五島美術館 『存星-漆芸の彩り』(2014年10月25日~12月7日)

 11/3(月)は、まず五島美術館へ。「存星(ぞんせい)」という名前は何度か聞いたことがある。最近だと、根津美術館のコレクション展『カラフル-中国・明清工芸の精華-』に、そう呼ばれる漆工芸品が出ていた。しかし、五島美術館の解説によると、実のところ何が「存星」と呼ばれていたのかは明らかではないそうで、逆に「存星」と呼ばれた名品約70点を通じて、「存星」とは何かを考える展覧会。倒錯しているようだが、古美術ではよくあること。細かい、ななこ(魚子)地文がポイントのひとつみたいだった。

日本民藝館 特別展『カンタと刺し子-ベンガル地方と東北地方の針仕事』(2014年9月9日~11月24日)

 『芸術新潮』か何かで、展示会場の写真を見て、行く気になってしまった。インド・ベンガル地方の「カンタ」は、白い布に花や動物や人物を色糸で刺繍したもの。色は少なくとも赤と青の二色、多くの色を惜しげもなく使った作品もある。畳大くらいの大きな布を、びっしりと様々なモチーフで埋め尽くす。一部には幾何学的な繰り返し文様も使われているが、子どもの絵画帳のように、自由で晴れやかなデザインが多い。よく見ると、汽車が走っていたり、時計があったり、19~20世紀の社会を写している。会場には詳しい解説がないので、展示室の外においてある雑誌『民藝』の「カンタ特集」の記事を読むと、いろいろ作品の背景が分かって、理解が深まる。中には、母から娘へ、三代かかって作られた作品もあるそうだ。

出光美術館 『仁清・乾山と京の工芸-風雅のうつわ』(2014年10月25日~12月21日)

 出光美術館の「陶磁器」展というと、スクリーン等を多様して、華やかな会場を立ち上げるイメージがあったが、今回は、非常に簡素。でも内容は悪くなかった。第2章で、仁清の白釉や銹絵など、簡素なモノクロームのうつわを取り上げ、「仁清らしからぬ」と何度も言ってきている気がする(大意)と。自分で自分にツッコミを入れているのが面白かった。『色絵芥子文茶壺』の背景に『麦・芥子図屏風』を取り合わせたところもよかった。

■羽田空港ディスカバリーミュージアム 第15回企画展『永青文庫コレクション 平家物語と太平記の世界』(2014年9月13日~12月14日/後期:10月28日~12月14日)

 引き続き、江戸時代の絵入り本の「平家物語」と「太平記」の展示。少なくとも「平家物語」に関しては、後期(後半)のほうが、よく知られた名場面、合戦場面が続くので面白かった。

この秋の東京の旅、以上。
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