見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2014年11月@関西:正倉院展(奈良国立博物館)

2014-11-12 21:19:47 | 行ったもの(美術館・見仏)
奈良国立博物館 特別展 天皇皇后両陛下傘寿記念『第66回正倉院展』(2014年10月24日~11月12日)

 前夜(11/7)新千歳空港を、ちょっと早めの19:40発の便で出る。関西空港に到着し、堺泊。翌朝、南海と近鉄を乗り継いで、8時半頃、奈良博に到着し、ピロティ下のいちばん外側の列(3折目)に入ることができた。今年の見もの『鳥毛立女屏風(とりげりつじょのびょうぶ)』(第2・4・5・6扇)は大きいので、最前列で展示ケースにへばりつく必要がない。それと、前の週に東博で展示図録を買って、予習をしてきたので、いつもより心理的に余裕がある。8:50頃、早くも開館。

 すでに最初の展示室は人でいっぱいだったので、どこから見始めるか、しばらく迷い、音に釣られて『桑木阮咸(くわのきのげんかん)』のところに行ってみる。四弦。撥の当たる部分「捍撥(かんばち)」には、囲碁に興じる三人の高士が描かれている。周囲には松の木と竹藪と太湖石? 中国伝統のモチーフだが、シイタケのような松の木など、異世界か異星の風景みたいだ。会場には、1952年に弦を張り直した際の演奏音も流されている(YOMIURI ONLINE記事)が、正直、聴き比べないと、琵琶の音とどう違うのか、よく分からない。

 会場冒頭に戻ってみる。伎楽面が3件。初出陳の『酔胡従』2件。1件は老人の肉色(グレー)。三日月型の目に丸い瞳が穿たれており、上の歯をむき出して、口も半ば開けている。もう1件は赤ら顔に墨で頭髪・眉・髭などを描く。眠たそうな垂れ目のかたちに細い穴を開け、厚い唇は閉じている。どちらも長く垂れた鼻が特徴的。『崑崙』は、尖った耳、くりくりした目。伎楽の役どころは、もう少し困りもののセクハラおやじのはずだが、この面は、子どもっぽくて、かわいい。関連して、伎楽などの楽劇で使われたらしい下着、くつした、太刀などもあり。

 第1室の後半にまわると『衲御礼履(のうのごらいり)』。大仏開眼会の際に、聖武天皇が履いたと伝えられる靴。素材はフェルトかと思ったら、赤く染めた牛革だという。色もデザインもかわいい。意外とサイズが大きいなあと感じたが、聖武天皇って大柄だったのだろうか? 聖武天皇ご遺愛の『漆塗鞘御杖刀(うるしぬりさやのごじょうとう)』すなわち仕込み杖というのも珍しかった。やっぱり、いざというときは自分で自分の身を守らなければならなかったのかなあ、古代の天皇って。

 そして『鳥毛立女屏風』(第2・4・5・6扇)。第6扇はほぼ後補であることが明らか。第4・5扇がいちばん状態がよい。私は、むかし鳥毛(羽毛)を張り付けた状態を復元するドキュメンタリー番組を見て、印象が一変することにびっくりした記憶があるのだが…あれって、学界に賛同されない「仮説」だったのかなあ。

 可愛かったのは『人勝残欠雑張(じんしょうざんけつざっちょう)』。刺繍のハンカチの断片みたいなものだが、童子、仔犬(の背中だけ)など、わずかな残片を愛おしみ、伝えて来た人々の気持ちに和む。

 第2会場へ。はじめに聖武天皇ご遺愛の『御床(ごしょう)』。ただのヒノキの板組みなので、これは寝られないだろうと思ったら、御床の畳(筵を厚く折り畳んで芯とし、そのまわりを1枚の藺筵で包む=マットレス)や褥(じょく)(=シーツ)も出ていて、なんとか寝られそうな気がしてきた。『紫檀木画挾軾(したんもくがのきょうしょく)』は体の前面に置くひじつきだというが、高さ33.5cmは、低すぎて使いにくくないかなあ。

 今年は、弓矢、鉾、太刀など、武器が多く見られた。実は武具の形態的変遷がよく分かっていないので、「反りのない偏刃(かたば)の直刀」(黄金荘太刀)などの説明を読みながら、興味深かった。あとは、正倉院宝物らしい美麗な箱や献物台。文書。正倉院「聖語蔵」に伝わる経巻というのも出ていて、今年2月の正倉院整備工事現場公開で遠望した聖語蔵の建物を思い出した。

 会場のほぼ最後に、ひっそり『白瑠璃瓶(はくるりのへい)』が出ていたことを付け加えておこう。宝庫に6つ伝わるガラス器の1つだそうで、目玉になりそうな品物なのに。あまりにも機能的・実用的な造形で、驚きがないのかしら。

 休館中の「なら仏像館」(2014年9月8日~2016年3月まで)を横目に、興福寺に立ち寄る。国宝館のミュージアムショップで、友人に頼まれた買いものをするだけのつもりだったが、通りかかった東金堂の背面が開いていたので、思わず立ち寄ってしまう。本尊・薬師如来像の背後に安置されている正了知大将立像(室町時代)を拝観。へえー後ろから入るのは初めてのことだ。それから国宝館で、頼まれものの「中金堂再建余材を使用した腕輪念珠」を購入。奈良滞在はこれだけで、京都に向かった。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする