■山種美術館 特別展『琳派-俵屋宗達から田中一光へ-』(2018年5月12日~7月8日)
2018年は、江戸へ琳派を根付かせた酒井抱一(1761-1828)の没後190年、およびその弟子である鈴木其一(1796-1858)の没後160年にあたることを記念し、琳派の伝統をたどる特別展。館蔵作品が主だったが、光琳の『白楽天図』(根津美術館でよく見るもの)が出ていて驚いた。目を惹いたのは「20世紀の琳派」グラフィックデザイナー田中一光(1930-2002)の作品。宗達の鹿に着想を得たり、古筆の仮名を切り取ったようなポスターが面白かった(国立近代美術館所蔵)。速水御舟の『翠苔緑芝』はなるほど琳派だと思って見ればいいのか。福田平八郎もそうか。つくづく琳派の命脈は長いなあと思った。
■太田記念美術館 特別展『江戸の悪 PART II』(2018年6月2日~7月29日)
2015年の『江戸の悪』展のパート2。実在した悪人から物語に登場する架空の人物まで、江戸の「悪い人」たちが「人数も倍増して、ふたたび大集合」という触れ込みに笑ってしまった。前回は展示図録も展示リストもなくてガッカリしたのだが、今回は展示作品220点を完全収録した図録もあって、大変うれしい。けっこうグロい血みどろ絵も出ていて、場所柄、外国人のお客さんも多いけど、大丈夫なのかなと心配。個人的には月岡芳年の『岩倉の宗玄』が久しぶりに見られて嬉しかった。前後期で全点展示替えなので、また後期(6/30-)も行きたいと思っている。
■鎌倉国宝館 特別展『常盤山文庫名品展』(2018年6月9日~7月16日)
常盤山文庫(1943年創始)の設立75周年を記念する特別展。禅僧の墨蹟・頂相、天神像コレクションなどに国宝館所蔵の青磁や漆工・鎌倉彫などを合わせる。清拙正澄の遺偈(棺割の墨蹟)はいつ見ても大好き。大休正念は、常盤山文庫所蔵の墨蹟とともに木像の頭部が出ていた。鎌倉彫刻らしいリアルさ。円覚寺塔頭・蔵六庵に伝わっている。天神像の中に、武田信廉(信玄や信繁の同母弟。出家して逍遙軒)筆の『束帯天神像』があったのも面白かった(あまり巧くない)。調べたら、信廉とは別人の逍遥軒作とする説もあるそうだ。
■神奈川県立金沢文庫 特別展『御仏のおわす国~国宝 称名寺聖教がつむぐ浄土の物語~』(2018年5月11日~7月8日)
様々な浄土の物語を国宝・称名寺聖教からひもとき、信仰の現れを伝えた称名寺の絵画や彫刻にて紹介する特別展。仏像は1階の展示ケースに釈迦如来立像と十大弟子像。2階には脇息にもたれて片足を投げ出したような維摩居士像がいた(鎌倉時代)。あまり記憶になかったが、称名寺の仏像である。
絵画は展示ケースに収まらない(開き切れない)巨大な仏画が2点。まず『三千仏図(甲本)』(鎌倉時代)は中央の長方形の3つの窓に釈迦・阿弥陀・弥勒の三仏を描き(温和な童顔)、そのまわりをオレンジ色の衣を着た三千仏がびっしり取り囲む。次に『仏涅槃図』(鎌倉時代)は、入滅する釈迦の上空右寄りから天女を連れた摩耶夫人が下りてくるところ。上空左寄りには、迦陵頻伽が翼を広げ、鳥の足を揃え、合掌して浮かんでいる。摩耶夫人と迦陵頻伽を同一空間に描く涅槃図は珍しいのだそうだ。釈迦の寝台のもとに集まった動物たちは、画幅が広げ切らないため、よく見えなかった。しかし、サルや孔雀に混じって、ワニかアルマジロのような変な動物が2匹(?)描かれていて、すごく気になった。全貌が知りたい。
仏典は南宋時代の摺りものがずいぶんあった。しかし、やっぱり面白いのは、聞書や覚え書のノート類である。
2018年は、江戸へ琳派を根付かせた酒井抱一(1761-1828)の没後190年、およびその弟子である鈴木其一(1796-1858)の没後160年にあたることを記念し、琳派の伝統をたどる特別展。館蔵作品が主だったが、光琳の『白楽天図』(根津美術館でよく見るもの)が出ていて驚いた。目を惹いたのは「20世紀の琳派」グラフィックデザイナー田中一光(1930-2002)の作品。宗達の鹿に着想を得たり、古筆の仮名を切り取ったようなポスターが面白かった(国立近代美術館所蔵)。速水御舟の『翠苔緑芝』はなるほど琳派だと思って見ればいいのか。福田平八郎もそうか。つくづく琳派の命脈は長いなあと思った。
■太田記念美術館 特別展『江戸の悪 PART II』(2018年6月2日~7月29日)
2015年の『江戸の悪』展のパート2。実在した悪人から物語に登場する架空の人物まで、江戸の「悪い人」たちが「人数も倍増して、ふたたび大集合」という触れ込みに笑ってしまった。前回は展示図録も展示リストもなくてガッカリしたのだが、今回は展示作品220点を完全収録した図録もあって、大変うれしい。けっこうグロい血みどろ絵も出ていて、場所柄、外国人のお客さんも多いけど、大丈夫なのかなと心配。個人的には月岡芳年の『岩倉の宗玄』が久しぶりに見られて嬉しかった。前後期で全点展示替えなので、また後期(6/30-)も行きたいと思っている。
■鎌倉国宝館 特別展『常盤山文庫名品展』(2018年6月9日~7月16日)
常盤山文庫(1943年創始)の設立75周年を記念する特別展。禅僧の墨蹟・頂相、天神像コレクションなどに国宝館所蔵の青磁や漆工・鎌倉彫などを合わせる。清拙正澄の遺偈(棺割の墨蹟)はいつ見ても大好き。大休正念は、常盤山文庫所蔵の墨蹟とともに木像の頭部が出ていた。鎌倉彫刻らしいリアルさ。円覚寺塔頭・蔵六庵に伝わっている。天神像の中に、武田信廉(信玄や信繁の同母弟。出家して逍遙軒)筆の『束帯天神像』があったのも面白かった(あまり巧くない)。調べたら、信廉とは別人の逍遥軒作とする説もあるそうだ。
■神奈川県立金沢文庫 特別展『御仏のおわす国~国宝 称名寺聖教がつむぐ浄土の物語~』(2018年5月11日~7月8日)
様々な浄土の物語を国宝・称名寺聖教からひもとき、信仰の現れを伝えた称名寺の絵画や彫刻にて紹介する特別展。仏像は1階の展示ケースに釈迦如来立像と十大弟子像。2階には脇息にもたれて片足を投げ出したような維摩居士像がいた(鎌倉時代)。あまり記憶になかったが、称名寺の仏像である。
絵画は展示ケースに収まらない(開き切れない)巨大な仏画が2点。まず『三千仏図(甲本)』(鎌倉時代)は中央の長方形の3つの窓に釈迦・阿弥陀・弥勒の三仏を描き(温和な童顔)、そのまわりをオレンジ色の衣を着た三千仏がびっしり取り囲む。次に『仏涅槃図』(鎌倉時代)は、入滅する釈迦の上空右寄りから天女を連れた摩耶夫人が下りてくるところ。上空左寄りには、迦陵頻伽が翼を広げ、鳥の足を揃え、合掌して浮かんでいる。摩耶夫人と迦陵頻伽を同一空間に描く涅槃図は珍しいのだそうだ。釈迦の寝台のもとに集まった動物たちは、画幅が広げ切らないため、よく見えなかった。しかし、サルや孔雀に混じって、ワニかアルマジロのような変な動物が2匹(?)描かれていて、すごく気になった。全貌が知りたい。
仏典は南宋時代の摺りものがずいぶんあった。しかし、やっぱり面白いのは、聞書や覚え書のノート類である。