〇出光美術館 『やきもの入門-色彩・文様・造形を楽しむ』(2019年11月23日~2020年2月2日)
出光美術館の「やきもの」企画展には何度も行っているので、あまり新味はないかな、と思いながら出かけた。そうしたら、やっぱり面白かった。
会場に入ってすぐは縄文土器と埴輪のコーナー(中国の彩陶もあり)。予想もしていなかったが、確かに日本のやきものの始まりはここからだ。これらが全て館蔵品であることも驚き。展示No.1の縄文土器は、比較的シンプルなつくりだが、口縁の左右の飾りの片方が大きく、片方が小さい。破損したのかと思ったら、最初からアンシンメトリーな造形だった。
古墳時代から室町時代までは、須恵器、灰釉陶器など、色味の少ない簡素なやきものがつくられた。猿投窯、丹波窯など。灰色もしくは黒、赤茶など、ほぼ土そのものの地肌に、苔のような抹茶のような、沈んだ緑色の釉がひと流し、掛けられていて、その自然さが尊い。
同じ頃、中国からは多彩な色と形のやきものが流入する。三彩や青磁のほか、「長沙窯」という種類を初めて認識した。『黄釉褐緑彩鳳凰文皿』は、その名称の華麗さには程遠く、庶民の普段使いみたいなお皿だった。『青磁貼花鉄彩水注』はヨーロッパのスリップウェアを思い出す色味で、西域ふうのパルメット文を貼り付ける。長沙窯はイランなど西アジアに輸出されており、輸出先の好みに合わせたと考えられるそうだ。磁州窯『白地黒花龍文壺』は、ギャグマンガみたいに両目の寄った龍の顔がかわいい。
鎌倉から桃山の茶陶は、唐物と和物に分けて並べられていた。唐物『禾目天目』(健窯)は、内側に虹が見えた。和物は鼠志野の草花文がおしゃれで好き。黄瀬戸は油揚肌というのだな。「黄瀬戸は歪みを持たない」という解説に、あらためて納得する。
桃山から江戸への転換期、展示室3の始まりに、初めて見る『盆栽図屏風』が展示されていた。六曲一双だが展示は一隻ずつで、私が見たのは左隻。遠山と金の雲を背景に11個の盆栽(盆山)がぱらぱらと並んでいる。そのうつわは、青磁らしきものもあれば、七宝らしきもの、色絵や青花のやきものもあった。
桃山のやきもの、絵唐津も好きなので、たくさん出ていて嬉しかった、ぐりぐり文も丸十も松文もよいが、陶片『絵唐津兎文大皿片』のウサギがとてもよい。小山富士夫氏は「野武士のような」と言ったそうだが、私にはカブトムシみたいに見える。初期伊万里も好き。
古九谷は、私の好きな青手の大皿がなかったことが残念。それと「古九谷」の産地に関する説明がなかったのはなぜなんだろう。九谷(石川県)と有田(佐賀県)の両説があることは承知しているが「入門」をうたう展覧会なのだから、そこは解説が欲しかった。ちなみに会場内には、さまざまな「コラム」のパネル(マンガで解説も)が掲示してあり、見て楽しく、読んでためになる展示だった。
古伊万里、鍋島、柿右衛門、京焼の百花繚乱。どれも好きだ。柿右衛門(磁器)の肌は吸水性がないので、絵筆で鋭く繊細な描線を表現しやすく、京焼(陶器)は吸水性があり、絵筆や金銀で輪郭線を引き、色面で構成する手法が選ばれたという解説がとても腑に落ちた。
最後は近代のやきもの。ポスターにも掲載されている、超絶技巧の『白磁松竹梅文遊環付方瓶』は出石焼・盈進社の作品。ちょっと中国の徳化窯っぽいと思った。