■臨済宗・円覚寺派本山 円覚寺(鎌倉市山ノ内)
先週の洪鐘祭りと二週連続の鎌倉詣でになるが、久しぶりに宝物風入れ(曝涼)を見に行った。天気にもめぐまれ、西洋人の観光客の姿が多かった。仏殿の軒下には、先日のパレードで使われた洪鐘のレプリカが置いてあったり、特別拝観の国宝・舎利殿に向かう人もいたが、私は宝物風入れの会場である方丈を目指す。
靴を脱いで中に建物の中に入ってから、宝物風入れの拝観料を払っていなかったことに気づく。あれ?脇から入ってしまったのがいけなかったのかな?と思って、慌てて、いったん外へ。しかし正面にも特に受付はない。あれれ?とキツネにつままれた気持ちで中へ。
すると玄関を入ってすぐ左手の部屋に絵画等が飾ってあるのが見えた。目立っていたのは彩色の羅漢図。比較的小さな画面に羅漢1人とさまざまなタイプの従者1人を配したものが16幅。室町時代、伝・兆殿司筆の『十六羅漢図』である。また、大きめの画面に10人の羅漢を描く『五百羅漢図』も2幅出ていた。1幅は、元代、伝・張想恭筆とあり、もう1幅は、室町時代に補作されたものだという。補作の羅漢のほうが、やや濃い顔をしてるように思った。江戸時代の『無学祖元図』は着彩で、左右に墨画の龍虎図を従える。無学祖元の椅子の肘掛と足元に鳩を見つけて、以前にも見たことがあるのを思い出した。
廊下を先に進むと、3室ぶち抜きのお座敷があって、中央に低い台(卓)を置き、左右にぐるりと絵地図や文書(書状・太政官符・御教書など)を掛け並べている。台上には『円覚寺洪鐘祭絵巻』がちょっとだけ開けてあった。奥の床の間には、洪鐘祭行列の板絵や善光寺式三尊像、工芸品もあった。
そして廊下に出ると、これ以上、巡路の表示がない。座っていらした若いお坊さんに「これで終わりですか?」と聞くと、にっこり笑って「はい」という答えが返ってきた。え?マジか。私は、2011年、2014年、2018年に来たときの会場の地図を記録に残しているが、これまでは、方丈全体が展示会場だったのである。それが今年は、小書院と大書院のみに大幅に縮小されている。まあ文化財の安全などを考えるとこの程度の公開が妥当で、昔の展示方式が狂気の沙汰だったのかもしれない…。今回は、解説プレートも整備されていて「展示」としては分かりやすかった。あと、以前は風入拝観料が設定されていたが、入山料のみでこれらの宝物を見せてくれるのは大変良心的だと思う。60年に一度だという「洪鐘」のご朱印をいただいて帰った。
■臨済宗・建長寺派大本山 建長寺(鎌倉市山ノ内)
続いて建長寺へ。庭園・方丈の拝観入口を入るとお坊さんに「宝物風入れはこちらの2階で~す」と声をかけられ、客殿(得月楼)の2階へ誘導される。
広いお座敷を2部屋、見たと思う。緋毛氈の上に載せられた北条時頼像は小さなおじいちゃんみたいで可愛かった。見覚えのある伽藍神、地蔵菩薩(心平寺地蔵)なども。小さな銅造羅漢像は山門(三門)に安置されているものだと分かったが、実はこの群像には、羅漢以外も含まれている。大きな奪衣婆が二匹の小鬼を従える姿や、広い床(しょう)でくつろぐ文殊居士像が出ていて面白かった。
建長寺の開山・蘭渓道隆ゆかりの品と伝わる横笛・払子・数珠・直綴(じきとつ)・袈裟なども並んでいた。「開山箪笥」に収められており、年1回、多くの僧侶が見守る中で開けられるのだそうだ。真偽はともかく尊い伝承である。絵画では、伝・顔輝筆『十六羅漢図』が印象に残った。いかつい風貌だが妖怪的ではなく、人間味を感じさせ、肉体の描き方が西洋絵画並みにリアルに感じられた。なお、建長寺も以前より規模は小さめで、風入拝観の追加料金はなかった。
■鎌倉国宝館 特別展『国府津山 宝金剛寺-密教美術の宝庫-』(2023年10月21日~12月3日)
ついでに国宝館を参観。小田原市国府津の真言宗寺院・宝金剛寺の寺宝を紹介している。全く忘れていたのだが、ブログを検索したら、私は2005年に宝金剛寺を訪ねて、寺宝は拝見できなかったが、ご住職にお茶とケーキをご馳走になっていた(!)。18年ぶりにお会いする(いや、前回はお会いしていないのか?)金泥塗の薬師如来さまをしみじみ眺めてしまった。平安・鎌倉の古仏のほか、雰囲気のゆるい大威徳明王や、マッチョな誕生仏、初期西洋画の童子像(白い衿、赤い服)など、バラエティに富んだ寺宝が出ていた。