見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2024年9-10月展覧会拾遺

2024-11-01 22:53:37 | 行ったもの(美術館・見仏)

書いていない展覧会がだいぶ溜まってしまったので、思い出せるだけ。

山種美術館 特別展・没後25年記念『東山魁夷と日本の夏』(2024年7月20日~9月23日)

 名作『満ち来る潮』『京洛四季』をはじめ、同館が所蔵する魁夷作品を全点公開するとともに、夏をテーマにした名品を紹介する。海を描いた日本画の名作は数々あるけど、土牛『海』(1981年)はいい。セザンヌの山みたいに確固とした写生の海である。92歳にして「これ程思い出楽しく描いた絵はない」と言える境地がすばらしくいい。

松濤美術館 『111年目の中原淳一』(2024年6月29日~9月1日)

 イラストレーション、雑誌編集、ファッションデザイン、インテリアデザインなどマルチクリエイターと呼ぶべき多彩な活動で知られる中原淳一(1913-1983)の全貌に迫る。私は、明治や大正の少女画に比べると、中原は時代が近い分だけ逆に「古さ」を感じて好きになれないところがある。もっと若い世代は違う感じ方をするかもしれない。

文化服飾博物館 『世界のビーズ』(2024年7月19日~11月4日)

 ヨーロッパのきらびやかなビーズ刺繍のドレス、象徴的な意味を持つアジアやアフリカの各民族の衣服や装身具など、約40か国のビーズを紹介する。江戸時代の珊瑚のかんざしが出ていたが、日本で珊瑚が採取できるようになるのは明治以降で、それまではほとんどが地中海産のベニサンゴを輸入したものだというのに驚く。いろいろ調べて、日本珊瑚商工協同組合のサイトを探し当ててしまった。

サントリー美術館 没後300年記念『英一蝶-風流才子、浮き世を写す-』(2024年9月18日~11月10日)

 英一蝶(1652-1724)の没後300年を記念する過去最大規模の回顧展。私は一蝶の絵、たとえば名品として名高い『布晒舞図』もそんなに好きではなかったのだが、落ち着いて眺めると、細かく描き分けられた人物の表情に、じわじわと愛着が湧いてくる。一蝶は罪人として三宅島で12年過ごした末に赦免されるのだが、本展には、三宅島および新島、御蔵島などに伝わる一蝶の作品が多数出陳されていた。流罪になる一蝶を見送ったのは宝井其角で、この二人の友情は面白い、と思ったら小説にもなっているのだな。一蝶が江戸に帰還後、一時寄寓した宜雲寺は清澄白河にあるらしい。今度、行ってみよう。

大倉集古館 企画展『寄贈品展』(2024年9月14日~10月20日)

 近年の寄贈品を紹介。王一亭(王震)の書画、保坂なみの刺繍、森陶岳の備前焼など。大倉喜八郎の嗣子・喜七郎が収集した近代日本画がよかった。酒井三良『豊穣』が好き。

三井記念美術館 特別展『文明の十字路 バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰-ガンダーラから日本へ-』(2024年9月14日~11月12日)

 バーミヤン遺跡の石窟に造営された、東西2体の大仏を原点とする「未来仏」である弥勒信仰の流れを、インド・ガンダーラの彫刻と日本の古寺に伝わる仏像、仏画等の名品でたどる。5月に京都の龍谷ミュージアムで見た展示の巡回展。京都では、日本の調査隊による調査資料が印象的だったが、今回は、日本の弥勒信仰を示す仏像・仏画が見どころで、よくこれだけ集めたと感心した。野中寺の弥勒菩薩半跏像(白鳳時代)や四天王寺の如意輪観音半跏像(平安時代)、個人的に「末法」の弥勒菩薩立像と認識している像(鎌倉時代)も出ていた。

日本民藝館 生誕130年『芹沢銈介の世界』(2024年9月5日~11月20日)

 来年生誕130年を迎える染色家・芹沢銈介(1895-1984)の作品と蒐集品を展示し、芹沢の手と眼の世界を紹介する。芹沢の作品は、民藝のようで、やっぱり土着の民藝品にはないシャープなセンスを持っているところが好き。のれん『御滝図』(一目で那智の滝だと分かる)に見とれた。あと型染め(?)の物語絵シリーズが好き。屏風に仕立てられていた『極楽から来た』は法然上人の一代記で佐藤春夫の新聞小説なのだな。今回、静岡市芹沢銈介美術館の所蔵品がたくさん来ていて、珍しかった。


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