〇東京黎明アートルーム 『西アジアの土器と鍾馗&天神の絵画』(2021年6月8日~7月20日)
2015年に開館した新しい美術館である。最近、書画や陶芸など、私の関心に近い展覧会の情報が流れてくるので、探して訪ねてみた。私にはあまり土地勘のない、東中野の住宅街の中にあった。エントランスには、平安時代の木造の持国天・多聞天立像が並んでいて見惚れた。常設なのだろうか。
展示室は全体の照明を落として、展示物が暗闇に浮かび上がるようなしつらえだった。最初の部屋は西アジア(伝イラン)出土の土器で、紀元前3200年頃の『山羊幾何学彩文台付鉢』がいちばん古い。紀元前3200年頃のイランと言われても、知識がないので全く想像がつかない(調べたら、イラン最古の文明、原エラム期にあたる?)。このほか、紀元前1500年頃までの土器は、かたちも文様も簡素だった。三足土器が多くて、古代中国の青銅器を思わせた。
紀元前900~800年頃(エラム文化の末期?)の土器になると、人や動物の姿を模した洗練された造形が目立つようになる。『把手付太鼓形土器』は、四足の太鼓(俵みたい)の上に、把手付きのカップのようなものが載っている。夜にちょこちょこ歩き出しそうで可愛かった。また、山羊形やコブ牛形の土器は、なめらかなヒップラインが魅力的である。赤みがかったオレンジ色の土器が多かった。
次の部屋は仏像特集。平安時代の不動明王坐像は、憤怒と言っても穏やかなお顔。パキスタンの如来立像、アフガニスタンの如来頭部(テラコッタ)など。いちばん印象的だったのは、中国・唐時代(9世紀)の兜跋毘沙門天立像。高い筒型の宝冠、胸の前で交差する瓔珞、ひきしまった腰など、東寺の兜跋毘沙門天立像と瓜二つのように似ている。赤い石(砂岩)から彫り出されていた。
さらに奥の部屋は絵画で、鍾馗と天神の特集。柴田是真の『束帯天神図』や『円窓鍾馗図』が展示されていた。
2階にも西アジアの土器、絵画などが少しあり、1室を使って、岡田茂吉という人の書が展示されていた。あとで調べたら、世界救世教の教祖で、美術収集家であり、書家、画家、歌人でもあるとのこと。MOA美術館の創設者として知られ、この東京黎明アートルームは、世界救世教の分派である東京黎明教会の収集品と、岡田本人の書や絵画を展示するためにつくられた施設であるそうだ。しかし言われなければ特に宗教色は感じないのと、岡田の書跡は嫌味がなくて好きなタイプだと思った。また時々来てみたい。