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「ひろしま 石内都・遺されたものたち」 リンダ ホーグランド監督 日米 ○
写真家の石内都が広島の原爆資料館に遺族から寄贈された原爆被害者の着ていた衣服や形見の品などの遺品を写真に撮りました。石内は母親を亡くした時に、「マザーズ」という母親の遺品を写真に撮り写真集を出していました。その写真集を見た人から広島の遺品を撮ってみないかと要請されたのでした。この作品では写真を撮る石内やカナダのバンクーバーの博物館での写真展のようす、を中心に学芸員や展覧会でのトークイベント参加者、在カナダ被爆者などへのインタビューを織り込みながら、「広島、長崎を語り継ぐために芸術は何ができるのか」を問いかけています。日本映画の字幕翻訳家でもある監督のドキュメンタリーです。
撮影されている衣服が原爆の影響で傷んではいますが、おしゃれで色も鮮やかで、縫製も丁寧です。私たちが持っている戦時中のイメージとは違いますが、当時は表には地味なモンペなどを穿いていたものの中にそっとおしゃれなものを身に着けていたそうです。国民のすべてが戦争に協力していたように刷り込まれていますが本当はそうでもなかったのでしょう。今、生きていたのに一瞬にして亡くなってしまった被害者たちの悔しさや切なさが鮮やかによみがえりました。
また、原爆に使用されたウランはカナダの先住民族デミの人々が採掘しました。彼らは原爆の被害を知り、心を痛め1990年代に広島と長崎を訪れ謝罪したそうです。
タバコはなし。無煙です。