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「家族を想う時」 ケン ローチ監督 英仏ベルギー合作 ○ ☆☆☆
イギリスの労働者を描いたら右に出るものはいないケン ローチ監督が今作でも厳しく辛く救いのない労働者の姿を描き「これでいいのか?」と問うています。
ターナー一家の大黒柱リッキー(クリス ヒッチェン)は自分の家を持つために、借金をし、妻の車も売ってフランチャイズの宅配業を始めます。「自営業」とは名ばかりでノルマ以上のきつい仕事で一日の大半を宅配に当てていました。妻アビー(デビー ハニーウッド)はパートの介護士でこちらも時間に追われる仕事で終日追い立てられています。そんな折高校生の息子セブが補導され父親はキレてしまい、家族がばらばらになります。小学生の娘ライザは心配のあまりおねしょをするようになってしまいます。この家族に希望はあるのでしょうか。
家族版「ジョーカー」です。父親は一生懸命仕事をしていても嫌な目にばかりあい、母親も心を込めてクライアントを大切に仕事をしているにも関わらず評価されない、踏んだり蹴ったりです。観客も見ていて心に突き刺さる物が多くすっかり疲れ果ててしまいます。ただ、ラストでアビーが完全にキレますが、その暴力は暴言だけですんだということです。全く孤独だった「ジョーカー」との違いはやはり家族がいたということが抑止になったのではないでしょうか。
日本でも労働者には同じことが起きているのでしょう。どうしてこのような社会になってしまったのか・・・。「痛い」作品です。でも観てこんな現実にも目を向けなければ・・・。
タバコは、なし。無煙です。(○)