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ドン・キホーテの「主権在現」とは?

2025-02-06 12:00:00 | 24期のブログリレー

みなさん、こんにちは。24期の森谷です。

年末に八重洲地下街を歩いていたら、通路の両脇に色鮮やかな商品がところ狭しと並び、ミラーボールが回っているお店を見つけました。お店の暖簾には「お酒ドンキ」「お菓子ドンキ」とあります。そこは、「驚安の殿堂ドン・キホーテ」(以下「ドンキ」)のお酒やお菓子に特化した店舗でした。たくさんある商品とPOPに記載された宣伝文句に楽しくなり、思わずお菓子を買ってしまいました。

また、年始早々の日経新聞の記事で『西友、KKRが売却』『イオンやドンキ名乗り』を見つけました。米投資ファンドKKRが投資先である西友の売却を検討していて、イオンやドンキが買収の応札手続きを行っている、との記事です。あのドンキが西友買収に手を挙げるとは・・・今のドンキは本当に元気があるなと思いました。そこで今回のブログではその強さの源泉である「主権在現」について書いてみることにしました。

そもそもドンキの小売業界での立ち位置ですが、『【2024年版】日本の小売業売上高ランキングTOP50』によると、以下のとおり第4位であり、売上高2兆円に迫る勢いです。

【1位】セブン&アイ・ホールディングス:11.5兆円

【2位】イオン:9.6兆円

【3位】ファーストリテイリング:2.8兆円

【4位】PPIH(ドンキ):1.9兆円

また、同社ホームページによると、現在の従業員は約1万7千人、店舗数は751店(アメリカ67店、シンガポール17店などの海外115店を含む)、まさに大企業であり、グローバル企業になっていますね。1号店の開店は1989年ですので、そこから35年間の成長力には非常に目を見張ります。

この強さはどこにあるのかに興味を持ち、書籍『進撃のドンキ(著者:酒井大輔氏)』、『運(著者:安田隆夫氏)』(※安田隆夫氏はドンキの創業者です)を読んでみました。

これらの書籍から分かるのは、現場における徹底的な権限委譲である「主権在現」です。「主権在現」とは、主権は現場にあるという意味であり、「主権在民」をもじった言葉でドンキによる造語となります。

ドンキでは、「商品の仕入れから陳列、棚割り、値付け、ホップの作成や店の演出全般まで、現場の社員はもちろん、「メイト」と呼ぶアルバイトに全てを委ねている」、「担当者全員に、それぞれ専用の預金通帳を持たせて商売をさせる徹底ぶり」とのこと。

そのため、現場では「仕入れすぎ」、「思ったほど売れない」といった失敗・誤算が頻繁に起こるそうです。こういった商品在庫への対応は、本部や支店長からの指示ではなく、現場の仕入担当者自身がその権限と責任により、陳列方法や棚割の変更、値下げなどの試行錯誤を繰り返します。

こういった仕入の「しくじり」に対して上司は怒りません。それは「現場の担当者が狭くて深い(森谷の理解:自分の担当領域を持ち、仕入から売上まで一貫した)権限を行使し、売れたかどうかの責任を負うからこそ、時流に合った、常に鮮度が高い店が出来上がる」、「失敗の原因を真剣に考えること、これが無料の授業料になる」との考えがあるためです。

このように仕事の権限・責任を現場に全て任せてしまうという徹底した権限委譲は、安田隆夫氏による創業期の経験によるもののようです。

ドンキでよく見られる「圧縮陳列」や「POP洪水」などの独自の店づくりですが、創業当初は社員に指示しても、懇切丁寧に教えてもできない状況が続き、絶望的な気持ちになったそうです。最後には開き直り、「そもそも教えるという行為自体が無意味だと結論づけ」、「“教える”のではなく、それと正反対のことをした。“自分でやらせた”のだ。それも一部ではなく、全部任せた。」のだそうです。山本五十六の有名な名言である「やってみせ、言って聞かせて」の部分が抜けている状況ですね。

最近読んだ書籍『現場力を鍛える』(著者:遠藤功氏)の中で、「オペレーションの優劣が企業の業績を大きく左右している」、「企業のオペレーションには、戦略を軌道修正しながら遂行する"組織能力"が内包されて」おり、「現場で起きるさまざまな問題点を能動的に発見し、解決する。この力こそが"現場力"である」との記載がありました。

以上から、ドンキの強さの源泉は、現場に対して圧倒的な権限委譲をする「主権在現」を実践し、現場で起こる失敗や間違いを許容する懐の深さを持ち、リスクをとって積極的に挑戦をさせることで、オペレーションに優れた「現場力」の高い組織を作っていること、と理解しました。

さて、冒頭の新聞記事に戻りますが、米KKRは西友をどの会社に売却していくことになるのでしょうか。今年はドンキの動きに注目していきましょう。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

コメント (1)
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