今晩は、才村です。
オフィスのコスト低減策としてトイレ節水装置導入がありますが、今回はもっと話を発展させて、上手なオフィス賃貸経営を探る目的で、典型的な不動産賃貸業であるオフィス系の3リート(不動産投資法人)の経営を分析しました。
企業の分析では、安全性、収益性、成長性がよく取り上げられますが、今回は収益性を取り上げました。
総資本経常利益率 総資本回転率 営業収益経常利益率
森トラスト(11年9月期) 1.58% 3.0回 51.8%
日本ビル(11年6月期) 1.09% 3.4回 31.9%
ケネディクス(11年10月期)1.11% 3.3回 33.6%
稼働率 NOI利回り
森トラスト(11年9月期) 99.5% 5.1%
日本ビル(11年6月期) 97.1% 4.5%
ケネディクス(11年10月期) 94.7% 4.7%
(注)NOI(減価償却費控除前事業利益)、NOI利回り=NOI/取得価格
⇒総資本経常利益率は森トラストが他より高いことが分かります。総資本経常利益率を分解すると、総資本回転率は3リートとも3回台ですが、営業収益経常利益率は森トラストが50%台で一番高くなっています。
稼働率、NOI利回りも森トラストが高いので、収益性は森トラストが最良です。
次に、営業収益(100%)に対し、どの費用科目の比率が高いかを調べました。
公租公課 水道光熱費 建物管理委託費 減価償却費 利息
森トラスト(11年9月期)10.0% 2.4% 3.1% 15.2% 10.7%
日本ビル(11年6月期) 9.5% 6.3% 10.0% 19.7% 10.2%
ケネディクス(11年10月期)7.8% 6.8% 9.2% 15.9% 11.4%
⇒森トラストは、水道光熱費、建物管理委託費が少なく、ローコスト経営です。
ケネディクスは支払利息+投資法人債利息の11.4%に加えて、信用力が低いことに起因する融資関連費用(他の2銘柄はほとんど0)3.3%を加えると、14.7%になるので、金融費用が重くなっています。
ちなみに、日本ビルの省エネ化・コスト削減策は、最新設備へのトイレリニューアル(人感センサー、LED電球、自動水洗の採用)とあります(節水装置導入への言及はありませんでした)。ケネディクスは、エネルギー使用量の約80%を占める空調及び照明設備を中心に省エネ対応していると報告しています。(例)LED化やトイレ・給湯室・階段室への人感センサー設置。森トラストは、テナント満足度向上に留意した運営を行うと記載しています。
以上から、以下のようなリートの収益性が高く、上手な経営をしているといえます。
1.信用力をバックに金利の安い資金(借入金・投資法人債)を元手に、不動産市況が低迷している時期に多くの高額NOIを稼げるビル(例:駅近の築浅の高耐震性のビル)を安く取得した(大手の不動産グループに属していると有利。日本ビルは三井系。一方、ケネディクスは独立系)。
2.顧客満足に努めて、稼働率を維持しながら賃料低下を防ぎ、変動費(例:空調・照明費用)と固定費(例:建物管理委託費)を抑えて資産を運用している。