前回、自身のマーケティングとの出会いをご紹介させていただきました。
今回は、マーケティングの古典を参考に、目的と手段をお話しさせていただきます。
マーケティングの大家と言えば、ドラッカー、コトラー、アーカー、ポーターなど、他にもさまざまな方々を上げられます。これまでも、その多くの書籍、論文を読ませていただきました。その中で、最もシンプルであって、マーケティング思考の原点ともなる名著として、「マーケティング発想法(1971:ダイヤモンド社)」をご紹介します。残念ながら絶版書籍です。図書館などで見かけることがあったら、ご一読ください。
ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である。
マーケティングに関わる多くの方が、この言葉を耳にしたことがあると思います。人々は製品自体ではなく、製品から提供される価値を求めています。そして、その提供価値が顧客の目的と合致するのか、それが非常に重要です。
ドリルを求める顧客の目的が、家具の製作であるなら、そのために穴が必要となり、これを得る手段としてドリルが購入されます。では、より小さな穴があけられる高性能なドリルは、どうでしょう。当然ながら、より小さな穴があけられる機能自体に、その答えはありません。同じく顧客の目的が家具の製作だとして、必要とされる穴がより小さい方が望ましい場合、はじめて高性能なドリルは購入されるのです。
この目的と手段の大切さを教えてくれる書籍が、マーケティング発想法であり、これがマーケティングを初めとする、様々な思考の原型の一つだと考えます。
しかし、目的と手段、これは非常厄介です。なぜなら、常に確認し続けなければ、目的と手段は、入れ替わってしまいます。
業務においても、例えば定例で会議が開催されることがあります。本来は、テーマ(目的)があって、会議(手段)が開催されます。しかし、会議もしばらく続くと、開催自体が目的化してしまいます。これ、組織あるあるです。このあるあるは、組織内に様々見られ、組織を硬直化させていきます。
また、製品に関し、顧客の目的と企業の提供手段も危険です。特に成熟し、製品の継続的な改良が続くと、その製品がジャンルを代表する言葉になることがあります。例えばケイタイ。しかし、このような時ほど、製品自体が顧客の目的だと錯覚しやすくなります。
もっとも企業経営とは、この手段の販売であることが多く、事業計画は、手段から入ることも避けられません。この手段こそ、業界であり、市場だからです。だからこそなのか、経営層に近いほど目的と手段を混同した方をお見かけします。表現上、手段を意識したとしても、目的を見失うなかれ、です。
そのため、現場から経営まで、顧客の声に敏感であることが望まれます。常に心がけているのは、顧客設定と目的の確認、それを意識した軌道修正です。もちろん経営課題であれば、ビジョンに基づく、です。
とにかく、目的に戻って考え直す習慣を意識しています。
次回の棚卸では、とにかくシンプルで万能なフレームワークのお話を考えています。