あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

木村迪夫著「村への道」を読んで

2017-05-18 10:47:09 | Weblog


照る日曇る日第967回



世間では「農民詩人」と称されている方の詩集を、はじめて眼に入れました。するてえとこの老眼に浮かんできたのは、なんとロシアの作家トルストイ翁が、とぼとぼとヤースナヤ・ポリャーナへの道をたどる姿でした。

翁がロシアの寒村にわけいって背に薪を負い、「イワンの馬鹿」になりきって彼の「新しき村」運動を始めたように、82歳の木村迪夫さんは

おれは 現役の百姓なんだ
おれは まだまだ若いんだ
勇気は十分に残されている  (「吹く、春の風が」より引用)

とつぶやきながら、トラクターにまたがって故郷山形上山市牧野村の田圃を耕しておられます。

そこに浮かび上がってくるのは、わが国の少子老齢化、産業構造の激変と農業の国際化によって打倒されてゆく孤立無援の百姓の姿、それでも執拗に思索し、粘り強く権力にあらがう百姓の姿です。

性懲りもなく
わたしは
屹立つ (「夏の彼方へ」より引用)

この詩集は、この国の最後の百姓が働きながら歌う雑草の歌、背筋をピンと伸ばして歌う永遠の戦いの歌なのです。

わが死地は
この村落以外に無いと
心に決めて
久しい

すると
何故か、急に
わが村落が
美しく見えてくる (「我が死地」より引用)





「凶暴罪」などはこの世に無きがごとく「眞子眞子眞子」と大騒ぎする人 蝶人

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