あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

岩波文庫版「源氏物語八早蕨-浮舟」を読んで

2020-12-10 14:43:49 | Weblog

照る日曇る日第1514回

第8分冊では宇治10帖の半分を占める早蕨-浮舟を収めている。せっかくの大君の配慮に従わず、妹の中君を恋敵の匂宮に譲ってしまった薫は、おのれのドジさ加減を呪いながら大君への思慕を、逃がした魚の中君で癒そうと不毛な努力を続けている。

そこへ登場したのが大君に瓜二つの異母妹の浮舟。草食人間の薫に似合わずファイト一発でモノにしたのは良かったが、安心のあまり放置していたところに源氏譲りの肉食派の匂宮が現れ、あっという間に征服してしまう。

可哀そうなのは宿命のライバル2人の餌食となった浮舟。アドバンテージは薫にあったはずが、事後の感想戦ではきれいな薫よりきららの匂宮が忘れられなくなっちまい、心も体も真っ二つに切断されて自裁を考えるようになる。

まるで近現代の男女の三角関係を地でいくどろどろのメロドラマは、ある意味では光源氏を主人公とする女色物よりはるかに血沸き肉躍る面白さではないだろうか。

プルーストの「失われた時を求めて」もそうだったが、世界文学史に名を残すほどの大河小説は、終わりに近づくほど面白くなるのである。


 7億円の宝籤は外れたが自閉症児てふ宝物には大当たり 蝶人
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