あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

2つのボックス・セットを聴いて

2020-12-17 13:52:28 | Weblog

音楽千夜一夜第460回

足元には湿気で腐りかけのCDがあるのだが、それは死ぬまでにはぜんぶ鑑賞するとして、エラート・レーベルの格安盤を耳にしてみました。

一つはイ・ソリステ・ヴェネッティのヴィヴァルディ16枚組のセットで、ヴェテラン指揮者クラウディオ・シモーネに率いられた練達の楽員たちが、懐かしいヴェネチアの音楽を奏でます。

それは水都ヴェネチアの華やかな装いの影に潜んだ死の予感を色濃く滲ませるような音楽。面白うてやがて悲しき鵜飼のような悲哀を奏でる、世界で唯一の楽団であり指揮者であります。

もうひとつは、これと対照的な能天気なラッパの哄笑。トランペットの名人モーリス・アンドレが奏でる生命の輝きの歌の数々です。

ここに収められたヴィヴァルディの協奏曲は、同じヴィヴァルディでも前者とは大違い。イ・ソリステ・ヴェネッティの死と孤独の世界を粉砕し、能天気な明るさと楽しさをまき散らし、世界を覆いつくすコロナの憂鬱をこっぱみじんに雲散霧消させる音楽力を誇示しているようです。


コレラ禍のさらなる猛威を知らずして幸いなるかな疾く逝きしひと 蝶人
コメント
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