あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

柳美里著「JR上野駅公園口」を読んで

2020-12-16 14:29:10 | Weblog

照る日曇る日第1517回

1933年、天皇と同じ日に福島県南相馬市に生まれ上野公園のホームレスとなった男の人世を、昭和、平成のこの国の歩み、時代の犠牲となって消えた名も無い民草の喜怒哀楽と交通させながら重層的、多声部交響的に描き出す。

今でも皇族が上野の美術館や文化会館などを鑑賞目的で訪れるときに、公園内のホームレスを強制的に追い出す「山狩り」が行われているとはまったく知らなかった。

臣民のものの数にも入らない家無き人々は、この国を規矩する天皇制秩序の稠密な網、ロイヤル・セーフティネット、からさえ切り捨てられているのである。

   中核に暗黒物質を秘めながら岡井星消ゆ文月の空に 蝶人
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