あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

「現代詩手帖」12月号を読んで

2020-12-26 15:32:34 | Weblog

照る日曇る日第1522回


思潮社というところから出ている「現代詩手帖」を裏駅のたらば書房で買うてパラパラ眼を通してみました。「現代詩年鑑2021」という副題が付いた増頁特大号でなんと2860円!もするのは痛いけど、自分へのご褒美?と無理やり言い聞かせて、エイヤと買うてしもうたずら。
巻頭は私が名前も聞いたことのないお三方が「危機をくぐり抜ける力」というタイトルで、私にはさっぱり分からないある種の状況を縷々語っているようでしたが、テーマを深堀りするより、いろんな詩集の品評会みたいな成り行きで、面白くもおかしくもありませんでした。
その次は「2020年総展望」というくくりで大勢の論客?がテンボウしていましたが、詩の世界には疎い小生にはほとんどトンプンカンプンで、唯一明快に頭に入ったのは、短歌界きっての論客大辻隆弘選手の「磁場の喪失」という表題の岡井隆論でした。
写実から前衛、左翼から右翼、口語と文語の混交まで、ありとあらゆる潮流をそれこそ清濁併せのんだこの唯一無二の斯界の大御所を喪った短歌界は、それこそ磁場を失った有象無象の作り手の氾濫状態で、「展望」どころの騒ぎではないという趣旨でしたが、それは短歌だけではなく、詩の世界も同様なのかもしれません。
その次に「書評集」「今年度の収穫」、なぜか「詩人住所録」を挟んでから本命の「2020年代表詩選」に突入して、本邦を代表する詩人たちの最近最新の代表作が延々と列挙されているわけですが、正直いうて長田典子選手の「ブラックダイアモンド」を除いて心に残った詩句はほとんどありませんでした。
新型コロナ禍真っただ中の現在、テレビをつければ毎日のように流れてくるのは元横浜市議の瓦斯男、西村キツネ男や緑のタヌキ女なぞいかがわしい政治家共の無意味で無内容な饒舌ですが、政治と文学のジャンルこそ異なれ、この詩選コーナーちう名の蛸壺から聞こえてくるWHATも HOWも定かならざる言説の垂れ流しに耐えられず、わいらあとうとう道半ばで放り出してしまった次第です。
まあ老若男女の天下の才人たちが、脳髄を振り絞って各人各様の芸を見せてはくれるのですが、なんの己が桜かな。その大半がうらなりのとうへんぼくの半死に酸欠の詩ばかりで、偶には生きてる人間の生きてるところを取り出して臓腑の奥からぐしゃーと叩きつけろよ。と言いたくなります。
本書の表4には今年思潮社が刊行した詩集のリストが掲げてありますが、それらのすべてが「2020年代表詩選」に取り上げられているのも不可解な話で、この本屋から本を出せば編集で取り上げてくれる?という仕掛けになっているのでしょうか?
どうにもケタクソ悪いのでゴミ箱に放り投げ、ベームのモザールをおんぼろ我が家も壊れよという大音量で聴き続けてようやっと気分転換したことでした。

 118回の嘘をなきものにするために119、120回目の嘘をつく男 蝶人
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