西暦2022年神無月蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第422回
○仕事始め~旅行会社社長の新年のスピーチ(コロナ禍以前の幸福な時代の)
皆さん、明けましておめでとうございます。新年早々皆さんの元気な顔を見ることができてうれしく思います。
*①さて、昨年来、わが国の経済は一段と混乱低迷の度を深め、売上利益と株価は下がり、販売経費と失業率は上がる、ということできわめて前途多難な様相を呈しています。目を海外に転じれば、アメリカの景気後退と同時多発テロ、炭疽菌事件、アフガニスタンへの軍事介入、世界の航空機メーカーの赤字転落や統合合併劇など、暗い材料ばかりでして、*②さすがにふだん強気のわたしも、今年に限ってはそれゆけドンドンと太鼓を打ち鳴らすわけにもいかないようです。
*③昨年の売上を分析しますと、前半は海外旅行が伸びていましたが、後半は海外が急減し、逆に国内が微増し、トータルでは前年比1割のダウンという形でともかく商売の格好をつけたような1年でした。飛行機に乗って海外に出かけること自体が危険だという異常な事態がいつまでも続くとは思いませんが、海外での修学旅行やビジネス出張を控える傾向は、今年も依然として続くでしょう。
*④さて、それでは本年度の傾向と対策ですが、お客さまの視線はますます「外」から「内」に向かい、海外から国内、戸外から室内、物質的消費から精神的な満足へと急速に転換するものと予測されます。
かつて『コクーン』というアメリカ映画がありました。コクーンとはカイコの繭のことですが、米国のある社会学者が「コクーニング消費」ということを語っております。21世紀の消費者は繭に包まれて、限りなきやすらぎ、コクーニングを感じたいと望んでいる。来年はこの「コクーニング消費」が世界のビジネスのキーワードになるだろう、と予言していますが、わたしも同感であります。
*⑤旅行業界における「コクーニング消費」の端的な例としては国内温泉旅行や巨木探訪ツアーがあり、昨年も売上を伸ばしておりますが、この方向をもっともっと拡大延長すると、従来なかった斬新な旅行プランが生まれるのではないでしょうか。
旅に出て、失われた自己を再発見し、やすらぎと生きる力を取り戻しすこと。これこそがわが業界の最高最大の使命であり、新年度の大テーマであります。*⑥皆さん、今年は売上増に一喜一憂せず、自分自身が一消費者としてどんな「コクーンツアー」をしてみたいかをじっくり考えてみてください。そこから一緒に今年の仕事をスタートさせましょう。
- スピーチのポイント
まずは前年の一般市況や業界動向について触れますが、あくまでも最後の希望と活力にみちたフィナーレに導くための前提として考えてください。
- 緊張のなかにもユーモアを盛り込みましょう。
- 前年度の成績を簡単に述べます。
- ここからが本論。新年度のいわば施政方針演説に当る部分。その年、その企業ごとに内容は異なるはずですので、最新の情報と価値判断に基づいたメッセージを発信してください。
- トップが提案した課題に対して、社員がどう対応するべきかを具体的に示します。
- 不景気を吹き飛ばそうとする経営者の熱意と創意工夫を盛り込みましょう。
1時間半かけて作った夕飯をたった5分で食べてしまうの? 蝶人