あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

山上たつひこ著「追憶の夜」を読んで

2022-10-21 10:52:50 | Weblog

山上たつひこ著「追憶の夜」を読んで

 

照る日曇る日第1802回

 

漫画で有名な著者が突然小説を書きはじめた頃の超ド級謎解き探偵小説なり。

 

たまたま殺人犯と犠牲者の家族の双方から捜査を依頼された語り手の私立探偵が、この輻輳した複雑怪奇な殺人事件の真相に向かって異常な熱意をもってどんどん深入りしていくので、読者は、「この先にいったい何があるんだろう?」と、膨らむ期待と一抹の疑心暗鬼を懐きながら、黙ってついていくほかはない。

 

そして紆余曲折の400余ページを捲りに捲った挙句、とうとうある苦いフィナーレに到達したとき、この作家が、この労作のために費やした努力と労苦、そして果ても無き知的営為の持続に、驚嘆するしかない。

 

さりながら、その峠の頂上から、遥か下方にけぶる麓をのぞむとき、その基本的なプロットのある種の粗雑さと、描写されるディテールの数多い綻びに、深い溜息をつく読者も多いことだろう。

 

 「書評家」なる肩書を貰いよそ様のふんどし締めて相撲を取ってる 蝶人

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