主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚葬祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.136」
西暦2022年神無月蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第423回
○退職社員送別会/社長の感謝のスピーチ
山田恒夫さん、三十年の長きにわたる木下食品株式会社での勤務をまっとうされましたこと、本当にご苦労さまでした。*①
振り返りますと、山田さんにはわが社の商品企画の長として、実に大きな貢献をしていただきました。若い社員の皆さんはご存知ないかも知れませんが、*②山田さんの奮闘努力のお陰で、今日の木下食品があるのだと申しても決して過言ではありません。
例えば現在わが社の主力商品となっておりますインスタントラーメンですが、先行する大手の製品に追いつき、追い越すために他社とはひと味違う新製品を完成させようと、*③当時山田さんをヘッドとするラーメン企画部は不眠不休で何度も何度も試作品作りに取組んだものでした。
キャラメルやチョコレート、菓子パン、クッキー類の製品開発に賭ける山田さんの情熱は素晴らしく、深夜になってもひとり研究に打ち込む山田さんの姿は社員の鑑として非常な尊敬を集めたものでした。
私がゴルフにうつつをぬかしている時にも、山田さんは休日返上で出社していたと月曜の朝、守衛さんがよく言っていました。*④
このように山田さんの敢闘精神は敬服に値するものでしたが、山田さんは単なる仕事の鬼ではありませんでした。彼ほど部下を可愛がり、親身になって面倒を見る管理職は、わが社広しといえどもそうざらにはいません。
プロジェクトを打ち上げるたびにスタッフ全員を自宅に招いて朝まで飲み明かす有名な山田パーティは私も何度かお相伴にあずかったことがありますが、山田さんの豪放磊落な性格そのままに底抜けに明るく、楽しいものでした。
あの伝説の山田パ―ティにもう参加できないと思うと、いちまつの寂しさを覚えます。しかし私たちは、山田さんから素晴らしいプレゼントを頂いたことを生涯忘れることはないでしょう。*⑤
山田さんは腕に覚えのある若く優秀な技術者をどっさり育ててくれました。そして、たとえ前途にどんな苦難が待っていようとも、山田さんが手塩にかけた後継者たちがこれからのわが社をしっかりと支えてくれることでしょう。
過去から現在、そして未来に向かって伸びるわが社の繁栄を築いてくれた山田さんの大恩に改めて心から感謝いたします。*⑥
そして、まもなく第二の人生への第一歩を踏み出される山田さんのご活躍とご健勝を心よりお祈り申しあげる次第です。山田さん、お元気で。そしてたまにはあなたの後輩の活躍をのぞきに来てください。お待ちしております。
- スピーチのポイント
- 超ベテラン社員の定年退職を心からねぎらう会社トップのスピーチ。まず社員の長い経歴を振り返ることから始めてみましょう。
- 多少オ―バーになっても、退職者をしっかり誉めます。
- 出席メンバーの知らない情報を公開することで、あいさつにインパクトを与えることができます。
- 仕事以外の側面にも留意して、退職者の豊かな人間性を浮き彫りにすると共感を呼ぶことでしょう。
- 会社への具体的な貢献をしっかり指摘することが退職者を満足させてくれるのです。
- スピーチを単なる美辞麗句に終わらせず、退職後もぜひ会社を訪問してほしいと呼びかけてみてはどうでしょうか。
あれくらいマスクをつけろと叫んだ奴がマスクなんか取れとほざいている 蝶人