あまでうす日記

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1964年版新潮文庫・神西清編「北原白秋詩集」を読んで

2022-10-23 09:19:03 | Weblog

照る日曇る日第1803回

 

大昔に読んだ活版の活字で組まれた文庫本で白秋を読むのも乙なものである。ましてや神西清選手による熱のこもった浩瀚な解説も併読できるとあっては。

 

氏が説いているように白秋には、詩人、歌人、童謡作家の3つの領域での時期を違えた多彩な活躍があるので、詩集と言うても、他の詩人の詩集のように単純な要約は難しいが、この小冊子では三者三様の作品の中のエッセンスをバランスよく並べてあるので、読んで退屈する暇がない。

 

はじまりは処女作となった超力作の「邪宗門」、次が日本古来の歌謡の伝統にお仏蘭西趣味をスパイスした「思ひ出」、有名な「パンの會」最盛期の「東京景物詩及其他」。

 

それから例の姦通事件のあおりを受けた「眞珠抄」「白金ノ獨楽」、次は老荘思想の影響を反映した「水墨集」、短歌に情熱を燃やした時期の「海豹と雲」、最後に白秋をして国民的詩人に押し上げた「歌謡」の代表作という顔ぶれであるが、戦争協力のお先棒を担いだ時期の「海道東征」や「元寇」などが完全に抜け落ちているのは残念である。

 

これら傾向の異なる諸作のうち小生がいちばん好きなのは、中原中也に大きな影響を与えた「思ひ出」の「「青いソフトに」、「水墨集」の「あそび」、人口に膾炙した「からたちの花」、そして「邪宗門」に収められたこの小唄である。

 

空に眞赤な雲のいろ。

玻璃に眞赤な酒のいろ。

なんでこの身が悲しかろ。

空に眞赤な雲のいろ。

 

「なかなか良い挨拶だったじゃないか」と大沢のおじは誉めてくれたり父の葬儀で 蝶人

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