照る日曇る日第1812回
澁谷桜が丘に「ユーロスペース」を開館し、世界のインディーズ映画の秀作、名作、問題作を次々に公開。レオス・カラックス、アッバス・キアロスタミ、アキ・カウリスマキ、サミュエル・フラーなど名だたる映画監督、プロデュサーとの熱い交友を通じて、本邦の映画史に大きな功績を残し、映画美学校、東京藝大大学院映像研究科の創成を通じて数多くの若手映像関係者を育成しつづけている堀越選手のこれまでを、高橋選手のロング・インタビューを通じていっきに振り返る興味深い1冊である。
独文に堀越選手ありとは北嶋選手から知らされてはいたが、革マル支配の悪夢のキャンパスを逃れた堀越選手が、なりゆきからとはいえ70年代の安気な奔流に流されつつ、既成の映画界と鋭く一線を画した独自の新乾坤を打ち樹てた功績については、改めて拍手喝采を贈りたいと思うのです。
余事ながら今は亡きNHKの伊藤孝子女史のインディーズ映画への多大な功績への言及、フランス映画社の倒産について、「柴田社長は不渡り手形を落とそうとすれば出来たろうに、あえてそうしなかったのではないか」という推察も、なんとなく頷けるものがあった。
それにしても、なにを語らせても微に入り細に亘って、さながら芋蔓の如く引きずりだされる該博な知識と精確な記憶力には、脱帽の他はない。
すぎちょびのころころコロナにめをつぶりぱっとひらけば八っぱくるくる 蝶人