照る日曇る日第1814回
ウクライナの詩人シェフチェンコ(1814-61)の代表作を読めるという、時宜を得た詩集である。
同時代の同国生まれのゴーゴリは、ロシアの地にあってロシアへのアンビバレンツをロシア語で書いたが、シェフチェンコはロシアと愚かな母国人へのうらみつらみを母語で縷々書き綴った。
「こうして父たちは モスクワやワルシャワと戦い、
おのれの血を流したのだ!
そしてきみたち、息子たちに、おのれの鎖と
おのれの栄光を引き渡したのだ!」
(「死者と生者とまだ生まれざる同郷人たちへ」より)
最晩年1845年の「3年」や「遺言」、「カフカーズ」、「死者と生者とまだ生まれざる同郷人たちへ」などは、いずれも巨大な隣国との血塗れの相関関係を歌って現在のウクライナ戦争を現前させるが、愛する息子のために万難を偲んで耐えたある女の生涯を歌いつくした壮絶な愛の長編詩「ナイミチカ」こそは、彼が真価を発揮した不朽の傑作だろう。
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