エーリッヒ・ケストナー著・池内紀訳「飛ぶ教室」を読んで
照る日曇る日第1813回
以前読んだ本書の訳者が、かつてのヒトラー礼賛者で、悪名高き大日本翼賛会宣伝部長のファシストだったと知って、俄かに吐き気を催したので焼き捨て、池内選手の2014年の新訳で読み直したが、とても爽やかな気持ちで俗了されました。
真夏に真冬の物語を書く物語作家のプロローグも面白いし、「飛ぶ教室」という小説に「飛ぶ教室」というお芝居が出てくるのも、ジェーン・オースティンの「マンスフィールド・パーク」の趣があってなかなか興味深い。
読む度に思い出されるのは、巨匠アベル・ガンスの1927年の超大作映画「ナポレオン」の有名な雪合戦のシーンだが、いちばん印象的なくだりは、かの「道理さん」と「禁煙さん」2人のオールドボーイの少年時代の友情で、何回読んでも涙が出るのはなんでやろうね。
家じゅうの時計がそれぞれに好きな時間を指すも楽しや 蝶人