あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

西暦2022年霜月蝶人映画劇場その2

2022-11-15 10:00:19 | Weblog

西暦2022年霜月蝶人映画劇場その2

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3067~71

 

1)レズリー・アーリス監督の「灰色の男」

ジェームズ・メイスン主演の桁糞悪い1943年英国製の男女憂鬱関係映画ずら。

 

2)フィリップ・アラクティンジ監督の「ボスタ! 踊る幸福の赤いバス」

タブケというレバノンの伝統的な踊りをテーマにした戦争とダンスと恋の物語。

それは1982年のレバノン内戦の傷を修復するロードムービーでもある。

 

3)ローレンス・オリヴィエ主演・監督の「ハムレット」

1948年にオリヴィエが主演、製作、監督したいかにも本家本元らしい秀作。

ジーン・シモンズのオフィーリアが溺死するところなどは、ミレイの絵のように美しい。

さりながら、ラストのノルウエイ王フォーティンブラスの登場は省略されている。

 

4)イライジャ・バイナム監督の「ホット・サマー・ナイツ」

2018年のアメリカ映画だが、どうしようもなく酷い出来ずら。

 

マジッド・マジディ監督の「運動靴と赤い金魚」

1997年のイラン映画。

妹と1足の運動靴を共用する兄との感動的な物語だが、むしろその暮らしの貧しさに胸が痛くなる。

 

5)ルイス・ブニュエル「黄金時代」

ブニュエルが、キリスト教に身を寄せるふりをしながら、おちょくる1929年の問題作なり。

 

   満月の月蝕終わり世の人に見捨てられたる十六夜の月 蝶人

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スヴァンテ・ペーポ著・野中香方子訳「ネアンデルタール人は私たちと交配した」を読んで

2022-11-14 09:13:11 | Weblog

 

照る日曇る日第1815回

 

30年以上の奮闘努力の結果、「現生人類とネアンデルタール人は主に中東で出会って性交し、その結果ネアンデルタール人のDNAの何パーセントかは、我々のDNAに内蔵されている」ことを、科学的に証明した男の、嘘のような、ほんとの物語である。

 

だから、あの荒くれ男のような、西洋なまはげのようなネアンデルタール人は、おらっちの中にもしたたかに生きていることになるのだが、そんな実感は、あんまりないなあ。

 

それよりも生々しい実感があったのは、悪戦苦闘の苦労話のなかに、バイセクシュアルの著者が、突然女性と結婚式を挙げて、ハワイ島の秘密の隠れ家で「愛の8日間」を過ごした、なーんて私事を漏らしたりしているところ。

 

かつてこんなノーベル賞受賞者が、おったかいな?

 

  三白眼のお多福男が俯いて世界苦について考えながら歩いていくよ 蝶人

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藤井悦子編訳「シェフチェンコ詩集」を読んで

2022-11-13 09:43:06 | Weblog

照る日曇る日第1814回

 

ウクライナの詩人シェフチェンコ(1814-61)の代表作を読めるという、時宜を得た詩集である。

同時代の同国生まれのゴーゴリは、ロシアの地にあってロシアへのアンビバレンツをロシア語で書いたが、シェフチェンコはロシアと愚かな母国人へのうらみつらみを母語で縷々書き綴った。

 

「こうして父たちは モスクワやワルシャワと戦い、

  おのれの血を流したのだ!

  そしてきみたち、息子たちに、おのれの鎖と

  おのれの栄光を引き渡したのだ!」

(「死者と生者とまだ生まれざる同郷人たちへ」より)

 

最晩年1845年の「3年」や「遺言」、「カフカーズ」、「死者と生者とまだ生まれざる同郷人たちへ」などは、いずれも巨大な隣国との血塗れの相関関係を歌って現在のウクライナ戦争を現前させるが、愛する息子のために万難を偲んで耐えたある女の生涯を歌いつくした壮絶な愛の長編詩「ナイミチカ」こそは、彼が真価を発揮した不朽の傑作だろう。

 

  自瀆型の脹脛に似た大根がバルトリン腺音頭を唄い始める 蝶人

 

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エーリッヒ・ケストナー著・池内紀訳「飛ぶ教室」を読んで

2022-11-12 12:59:46 | Weblog

エーリッヒ・ケストナー著・池内紀訳「飛ぶ教室」を読んで

 

照る日曇る日第1813回

 

以前読んだ本書の訳者が、かつてのヒトラー礼賛者で、悪名高き大日本翼賛会宣伝部長のファシストだったと知って、俄かに吐き気を催したので焼き捨て、池内選手の2014年の新訳で読み直したが、とても爽やかな気持ちで俗了されました。

 

真夏に真冬の物語を書く物語作家のプロローグも面白いし、「飛ぶ教室」という小説に「飛ぶ教室」というお芝居が出てくるのも、ジェーン・オースティンの「マンスフィールド・パーク」の趣があってなかなか興味深い。

 

読む度に思い出されるのは、巨匠アベル・ガンスの1927年の超大作映画「ナポレオン」の有名な雪合戦のシーンだが、いちばん印象的なくだりは、かの「道理さん」と「禁煙さん」2人のオールドボーイの少年時代の友情で、何回読んでも涙が出るのはなんでやろうね。

 

   家じゅうの時計がそれぞれに好きな時間を指すも楽しや 蝶人

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家族の肖像~親子の対話その89

2022-11-11 10:38:03 | Weblog

ある晴れた日に 第704

 

ぼく、ひとりでトウキュウいきましたお。

え、東急。いつ行ったの?

今日行きましたお。

そう、偉かったね。

 

お母さん、こんどユカリさんに会いたいですお。

そう、会おうね。

 

おじさん、エモトアキラ好き?

好きだよ。

おばさん、エモトアキラ好き?

好きだよ。

おねえさん、エモトアキラ好き?

好きですよ。

コウ君、エオトアキラ好き?

好きですお。

 

ミワさん、いなくなったね。

亡くなっちゃったね。

 

「千の風に乗って」、亡くなったときでしょう?

そうだね。

 

お父さん、お母さんは?

当てててごらん。

おばあちゃんチ。

ピンポーン。

 

  部屋毎に別の時間を指し示す100円ショップで求めし時計が 蝶人

 

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堀越謙三述・高橋俊夫構成「インディペンデントの栄光」を読んで

2022-11-10 09:52:39 | Weblog

照る日曇る日第1812回

 

澁谷桜が丘に「ユーロスペース」を開館し、世界のインディーズ映画の秀作、名作、問題作を次々に公開。レオス・カラックス、アッバス・キアロスタミ、アキ・カウリスマキ、サミュエル・フラーなど名だたる映画監督、プロデュサーとの熱い交友を通じて、本邦の映画史に大きな功績を残し、映画美学校、東京藝大大学院映像研究科の創成を通じて数多くの若手映像関係者を育成しつづけている堀越選手のこれまでを、高橋選手のロング・インタビューを通じていっきに振り返る興味深い1冊である。

 

独文に堀越選手ありとは北嶋選手から知らされてはいたが、革マル支配の悪夢のキャンパスを逃れた堀越選手が、なりゆきからとはいえ70年代の安気な奔流に流されつつ、既成の映画界と鋭く一線を画した独自の新乾坤を打ち樹てた功績については、改めて拍手喝采を贈りたいと思うのです。

 

余事ながら今は亡きNHKの伊藤孝子女史のインディーズ映画への多大な功績への言及、フランス映画社の倒産について、「柴田社長は不渡り手形を落とそうとすれば出来たろうに、あえてそうしなかったのではないか」という推察も、なんとなく頷けるものがあった。

 

それにしても、なにを語らせても微に入り細に亘って、さながら芋蔓の如く引きずりだされる該博な知識と精確な記憶力には、脱帽の他はない。

 

 すぎちょびのころころコロナにめをつぶりぱっとひらけば八っぱくるくる 蝶人

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澁澤龍彦著「澁澤龍彦全集第22巻」を読んで

2022-11-09 09:43:35 | Weblog

澁澤龍彦著「澁澤龍彦全集第22巻」を読んで

 

照る日曇る日第1811回

 

澁澤龍彦(1928-1987)の代表作で、遺作でもある歴史冒険ファンタジー長編小説「高丘親王航海記」を中軸に、著者晩年のエッセイ、松山俊太郎、巌谷國士による解題などを収めた充実の1冊である。

 

死病と戦いつつ作者は、平城天皇の第3皇子でありながら「薬子の変」で皇太子から降下して親王となったわれらが主人公をば、唐天竺どころか広大無辺の陸海空、いな浪漫的な作家の大脳前頭葉の遥か彼方に放浪させ、ついにマルコポーロの東方見聞録、イブンバトゥータの世界大旅行記に匹敵する地歴&精神世界漫遊記をモノしたのである。

 

じっさいの高丘親王に関する史実は、わずか十数行で尽きてしまうにもかかわらず、汗牛充棟只ならぬ古今東西の文献を博捜し、空想幻想妄想の限りを尽くして創造された本作は、現代浪漫小説の頂点に輝く名作というても過言ではないだろう。

 

さりながら、その後に書かれたエッセイの中にも、逸すべからざる佳作があって、かつて作者が20年近く住んでいた、鎌倉の東勝寺付近の滑川の美しい景勝や、その8畳間の寓居を訪れた三島由紀夫、横尾忠則、池田満寿夫、唐十郎などの思い出を軽くなぞった「東勝寺橋」の味わいなどは、かえって心に深くしみるものがある。

 

  信長が天守閣から眺めたる血の色滲む満月を妻と並びて暫く眺む 蝶人

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中川李枝子さく・山脇百合子え「なぞなぞえほん3のまき」を読んで

2022-11-08 10:36:37 | Weblog

 

照る日曇る日第1810回

 

「なぞなぞえほん」シリーズの1冊です。

 

例えば「うえから したまで まっくろけ のびたり ちぢんだりしながら わたしのとおりに まえんをする」のは、なーに?

 

と書いてある右ページを子供に見せて、いろいろ考えていると、

 

「影でーす」という答えが返ってくる。

 

でも最後のページには、「ふしぎ ふしぎ あかちゃんが ねむくなる おかあさんの おまじない」と書いてあって、右には、うさぎのお母さんが赤ちゃんをだっこしている絵が。

 

そんな風で、なぞなぞの構成ばかりでもありません。

 

   脳味噌が目が歯が耳がチンポコがグチャグチャになり黄泉路に向かう 蝶人

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西暦2022年霜月蝶人映画劇場その1

2022-11-07 09:12:55 | Weblog

西暦2022年霜月蝶人映画劇場その1

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3062~66

 

1)リチャード・ブルックス監督の「冷血」

カポーティの原作を1967年に映画化されたが、原作同様どうということもない。

スティーヴン・ギャガン監督の「シリアナ」

中東を舞台にアメリカやCIAや石油会社や国際的ブローカーが暗躍する2005年のスパイ大作戦。ひげずらのジュージ・クルーニーやマット・デイモン等が出ているが詰まらない。

 

2)ウィリアム・ワイラー監督の「黒蘭の女」

1938年製作の激烈な恋の物語。「毒婦」にして「不滅の恋人」に扮したベティ・デイビスが黄熱病に冒されたヘンリー・フォンダを見守りながら馬車で去っていくラストシーンは、これが女の花道、これぞ映画なり!と叫びたくなる物凄さ。いちばん凄いのは全盛時代のワイラーずら。

 

3)ウィリアム・ワイラー監督の「偽りの花園」

強い女、ベティ・デイビスが弱い夫、ハーバート・マーシャルを追いめ、いたぶるすんごい1941年の名画。ベティ・デイビスが真に迫って怖ろしい。

 

4)ウィリアム・ワイラー監督の「女相続人」

ヘンリー・ジェイムズの原作を名匠が1949年に映画化。さすがオリヴィア・デ・ハヴィランド、さすがモンティ、さすがワイラー。

 

5)コンプトン・ベネット監督の「第七のヴェール」

1945年の英国の恋愛映画。親代わりのジェーイムズ・メイソンが、庇護し続けたピアニストの愛を得るまでを延々と描くが、プロットに無理がある。

 

  妻が居て子が居てわれも傍に居るそんな暮らしよいつまで続くか 蝶人

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神沢利娘作・山脇百合子絵「あひるのバーバちゃん」を読んで

2022-11-06 13:00:12 | Weblog

照る日曇る日第1809回

 

あひるのバーバちゃんが、スーパーでお買い物をしました。

 

帰り道で、お母さんとはぐれたひよこたちを、買い物を入れたリュックサックに乗せて歩いていると、あらまあ、ひよこたちは、イチゴやクッキーを食べてしまいました。

 

でも、さいわいなことに、あひるのバーバとまいごのひよこさんは、めんどりさんとぱったり鉢合わせ。

 

みんなは、めんどりさんが焼いた、クッキーやバーバちゃんのお菓子で、時ならぬピクニックを楽しんだのでしたあ。

 

  上弦の月が2重に見えたので眼科に行けば白内障だと 蝶人

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家族の肖像~親子の対話その88

2022-11-05 12:53:54 | Weblog

家族の肖像~親子の対話その88

 

ある晴れた日に第703回

 

お父さん、神社、テンプルでしょ?

そ、そうだよ。よく知ってたね。

 

ミエコさーん、ハスはジュンサイによく似てるよねえ?

 似てますねえ。

 

シンキンコウソクって、なに?

心臓から酸素が無くなってしまうのよ。

 

ボク、ハス好きですお。

好きだよね、コウ君は。

 

お母さん、平和って、なに?

みんながしあわせに暮せることよ。

 

お母さん、むかしふきのとう舎だけだったよね?

そうね。あとからコウセイシャなんかが出来たのよね。

 

お母さん、どこ行ったの?

さてどこへ行ったでしょう?当ててごらん。

セイユー?

ブ、ブー。

なにがつくもの?

キだよ。

キシモト歯科!

あったりーー!

 

「ボク、サトイモ好きですお」

そうなんだ。

サ、ト、イ、モ、サ、ト、イ、モ

 

海水は海みたいですね。

そうですね。

 

オサナナジミって、なに?

小さい頃からのおともだちよ。

 

車体構造って、なに?

車の中の様子よ。

 

お父さん、「ドクターヘリ」、録画してね。

分かりましたあ!

 

お父さん、「ドクターヘリ」見ますお。

分かりましたあ!

 

ぼく、アオさん好きですよ。

そう、良かったね。

 

お母さんね、ここで躓いて斃れてね、血がいっぱい出ちゃったの。

そうお。良くなって下さいね。

 

お母さん、すぐにお父さんと病院行ってね、ここんとこ縫ってもらったの。

早く良くなって下さいね。

 

お母さん、良くなってください。

分かりました。

早く良くなってください。

だんだん良くなります。

 

お母さん、良くなってね。良くなれ、良くなれ。

分かったよ、

明日お医者さんにみてもらう?

見てもらうよ。

 

 いつまでも続いてほしい耕クンが金土日と家にいる日々 蝶人

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矢作俊作著「引擎 engine」読んで

2022-11-04 09:41:39 | Weblog

 

照る日曇る日第1808回

 

鈴木正文選手の編集長時代に自動車雑誌の「engine」に連載されていたハードボイルドアクションなり。

 

2011年現在の日中露の国際環境を背景に、主人公の刑事と一匹女狼のスーパー美女が激烈に戦い、愛し合う御噺だが、いま話題になっている「汚い爆弾」や「敵基地攻撃」などの挿話も登場して、まあ興味深い。

 

ラストでは刑事が、自分よりの百倍も強いスーパーウーマンが油断した隙に、卑劣にも射殺してしまい、「自分の中の何かがすっかり失われたことに気づいた」と独白するのだが、それはないよね。

 

   建国のケも思わずに過ぎにけり22年2月11日  蝶人

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「夢は第2の人世である」あるいは「夢は五臓六腑の疲れである」第118回 

2022-11-03 10:57:27 | Weblog

西暦2022年水無月蝶人酔生夢死幾百夜

 

生まれて初めて仲間とゲーセンに行ったら、意外にも超満員で、見知らぬ連中のチームに混ぜられてしまった。茶髪の少女がめちゃくちゃに上手いので、大人はしらけて画面を眺めているばかり。6/1

 

田舎の寄席に登場した下手糞な芸人だったが、たまたまどこかのテレビ局が全国に紹介したら、あっという間に有名人になって、暫くの間は超人気者になってちやほやされた。6/2

 

寺の上で戻れなくなって、眠りながらコマを数えていたら、ヌンとスウが刺されたので、嗚呼おらっちは、やっぱアケミ、ミワヒデだったんだ、と思ったずら。6/3

 

我々の小舟は、かつて兵士たちが流した血の海の上を、白い帆を左右に揺らせながら疾走していた。6/3

 

人事課長は、何度も面接を繰り返したのだが、誰が有能であるか分からなくなったので、ともかく体矩が頑丈で、上司の命令に無批判に従う、体育会系の男子学生ばかりを採用し続けたのよ。6/4

 

ここは東京のど真ん中ながら、戦災に遭わなかった地域なので、森が鬱蒼と茂り、江戸時代の武家屋敷や寺社仏閣、はっさんくまさんが住んだ長屋や井戸がそのまま残されている、まるで夢のような一郭なのだった。6/4

 

その男は、婦人服用の薄地のウールを超安価で大量に買い付け、これで仕立てた紳士服を「世界一軽いスーツ」と名付けて、大大的に売りだしたら、爆発的なヒットになったという。6/5

 

おらっちは、満員電車の中で、吊革を下げる横棒に、6つのペーパーバッグを吊るしていたんだが、いざ駅で降りようとしたら、そのうちの5つは、影も形もなかったずら。6/6

 

家で窓を開け放してくつろいでいたら、見知らぬ6人の成人男女が、その窓からではなく、分厚い壁をスッと通り抜けて居間に入り込んできたので、いたく驚いた。こいつらは一体何者なのだ?6/7

 

ふと思い立って、新幹線で静岡に行き、文化会館へ行くと、ハロルド・ピンター展をやっていたので、ぶらぶら見物していると、イケダノブオの奥さんとスタッフの姿が見えた。6/8

 

その夕べ、カンダ、ハセガワ、ウエガキ、サガワ、ウエノ、ミヤネという、ヤクザよりもヤクザちっくなやさぐれ業者が、ひとつ船中のヒトとなって、♪アラエッサッサアと道頓堀川に乗り入れたので、宗右衛門町は大騒ぎになったずら。6/9

 

おれたち朝鮮人は、日本人の家主の大きな2階建てに借家していたんだけど、夜になると銅鑼が鳴らされ、それを合図に全員が大広間に集まって、映画鑑賞とその後の大宴会を楽しんでいたのさ。6/10

 

わいらあ防空壕の中で、オラッチが死んだら、世界でたった一人のアナルコ・サンジカリストが居なくなってしまう、と心に念じつつ、敵軍の猛烈な空襲に堪えていたんや。6/11

 

防空壕の中で、「生き生きてなお生き生きて死ぬ死ぬ死ぬ」てふ俳句が出来たので、初句、2句と口の中で唱えて、3句にかかったところで、ミサイルの直撃を受けたおらっちは、即死してもうた。6/12

 

久し振りに田舎に旅行したのだが、林の中で寛いでいたら、まず東の方から大集団がやって来て、しばらくすると、今度は西から別の大集団がやってきたので、おちおち休憩するわけにもいかず、怱々に立ち去ったのよ。6/13

 

近く会社の大機構改革があり、そこで犬派社員か、猫派社員か、の振り分けが行われると知ったので、鵺派のおらっちは、急いで退社したのよ。6/14

 

鈴木財閥の御曹司は、大泥棒のおらっちが、とってつけたような襤褸スーツを一着に及んで、廊下で寝そべっている姿を見て、「お前はきっとわが社で一番の阿呆に違いない」と喝破したので、さすがはバカ社長でも人を見る目があるなあ、と驚いた。6/15

 

満員鮨詰めの線路際を歩いていると、石ゐサキとかいう、作家より優秀なゴーストライターが死んだ、という話を、周りの人間が話しているのを、耳にしながら町に入る。120段に及ぶ石段があった。今は11時。だ。6/16

 

隣にヨモギ蕎麦の店があったので、喰って行こうかと思ったが、12時に面接予定のビルが、どこにあるかも分からないのに、食事なんかしていてはヤバイと思ったので、大通りを直進していくと、町があった。ああここは、いつも夢に出て来る町だ、とすぐに分かった。6/17

 

久し振りに愛犬ムクと会ったので、両手で頭や首を撫でながら「お前は善い子だねえ」というと、その意味は分からずとも、その心が伝わったので、嬉しそうに、ウットリ目を閉じている。この心から心への通じい合いが、あの死刑囚には出来なかったのだ。6/18

 

ボビーのおじさんが、私の為に、意味の分からない不思議な文字を、毎日1字づつ届けてくれる。6/19

 

1時間後にそのホールのオープニング・イベントで歌うことになっている私は、さっきから喉を潤しているのだが、隣の席に座ったおかっぱが気になる。こやつはサンケイという赤新聞に、欧米人は2点和音だが、邦人は3点和音がよく響くと、訳のわからぬエッセイを発表した紅毛人なのだ。6/20

 

新車のデザイン開発で、新人の私がいきなりお手柄を立てたので、7人のベテラン揃いのチーム内では、私がもしかしてチーフに任命されるのではないか、と恐れているようだが、戦々恐々としているのは、こっちのほうだった。6/21

 

狙撃兵は、本編が終わっても、頭注の第1列を狙撃、粉砕していた。6/22

 

突然、見たことのない青年が、03部室に入って来て、「14時までに中山に来るように」と、言うた。6/23

 

「人新世について10首作ってくれよ」といわれたのだが、それが新生代についてなのか、人世代だか、新人世、だか新人代のことだか、さっぱり分からなくなったおらっちは、ジンジンジンと唄うばかりだった。6/24

 

空襲から逃れるために、おらっちは洞穴に身を潜めたのだが、そこは集計用紙の空欄だったので、しばらく進むと、行き止まりになってしまったのよ。6/25

 

中也みたいに詩集の校正刷を持ってアオヤマのところへ遊びに行ったら、「ちょっと貸してみな」と言うので貸してやったら、「ちょいとここらへんが弱いがな。鍛えなきゃ」とほざいて、すりこぎでゴシゴシ擦り始めたので、すりこぎを取り上げてどたまをぶッ叩いてやったのよ。6/26

 

立ち読みしていた週刊誌のグラビアの文字が、赤字に赤なので、てんで読めない。側にいた店の親父に「これは酷いね。社長に言うてやらねば」というたら、「お客さん、立ち読みは止めてください」と、ハタキをかけられたずら。6/27

 

父は、私を社長の後継ぎにするために、恩義ある大幹部の首を切り、忠犬子分だけを周りに配置したのだが、まともな人材が、一人もいなくなったために、会社は、すぐに潰れてしまった。6/28

 

来季の商品企画構想会で、ナベショウの提案が次々に東西営業部員から総スカンを喰らって却下されていくのを、おらっちは「ザマミヤガレ!」と思いながら、高見の見物を決め込んでいた。6/29

 

ウクライナの激戦地に突如として現れたトロイの木馬。ウクライナの兵士たちは、あれは古代ギリシアの神話の噺だと馬鹿にして、そのまま放置していたが、案の定木馬の中には最新式の武器を装備したロシア兵が潜んでいて、呑気なウクライナ兵は、みな虐殺されたのだった。6/30

 

      突きだせる胸柔らかし秋の鳩  蝶人

 

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なにゆえに第104回~西暦2022年神無月蝶人花鳥風月狂歌三昧

2022-11-02 11:15:01 | Weblog

なにゆえに第104回~西暦2022年神無月蝶人花鳥風月狂歌三昧

 

ある晴れた日に 第702回

なにゆえに物価が上がる実入りはどんどん減っていくのに

 

なにゆえに次々他国をわがものにするプーチンはロシアのイトレル

 

なにゆえに今頃になって国会を開くお前らみんな税金泥棒だ

 

なにゆえに突然全局がミサイル警報になるお陰で村上の号砲がぶっ飛んじまった

 

なにゆえに人はこの世に別れを告げるなーんもかんもがどうでもよくなる

 

なにゆえに夏から急に初冬に変わるおらっちやっぱりサムイのは嫌

 

なにゆえにトマス・ピンチョンに授与しないノーベルはんの文学賞を

 

なにゆえに細田は逃げ回る国民に面と向かって弁明するべし

 

なにゆえに心はじらうこころは紅白の酔芙蓉の花

 

なにゆえにカトリックなのに焼香をするあれは仏教だけじゃないの?

 

なにゆえにコロナなんかなかったことにする恐るべき第8波が迫っているのに

 

なにゆえに軍事費増額に賛成する暮らしはますます苦しくなるのに

 

なにゆえにダルはぱかぱか点を取られる味方はカーショーを打っているのに

 

なにゆえにベートーヴェンの「運命」流すロスアンジェルのドジャー・スタジアム

 

なにゆえにマイナカードがデジタル時代のパスポートんなもんおいらは要らんわい

 

なにゆえに独裁者の顔は悪人面彼奴等はみんな悪人だからな

 

なにゆえにいきなり車に轢き殺された一国一城の殿様バッタ

 

なにゆえにN響はいつも2流を好むデュトワ、ヤルヴィー、ファビオ・ルイージ

 

なにゆえに病院が患者を玄関払いするすべての病院でコロナ患者を診察せよ

 

なにゆえにコロナの前でパンツを脱ぎ棄てるこれから第8波がやってくるのに

 

なにゆえに円がどんどん安くなる安倍蚤糞が失敗したから

 

なにゆえに立憲維新がつるんでる所詮は自公の補完勢力

 

なにゆえにくまのプーサンに3期もやらせる中国共産党の前途は暗い

 

なにゆえにイチローはポストシーズンに出られンかったやっぱ運が無かったんよ

 

なにゆえに悪徳後見人を罷免できない「後見人制度」を即改めよ

 

なにゆえにヤクルトは勝った高津が山田を1番に据えた

 

なにゆえにヤクルトは負けた誰にもスクイズをさせなかった

 

なにゆえにヤクルトは負けた抑えのマクガフがひど過ぎた

 

なにゆえにヤクルトはまた負けたたった1安打で勝てるわきゃない

 

なにゆえに高津ヤクルトは負けちゃった新オーダーを元に戻した

 

なにゆえに玉川、金平が消えちまった権力側からパージされた

 

 

 なにゆえにマイナカードに反対しない門札に名字を出さないくせに 蝶人

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西暦2022年神無月蝶人花鳥風月狂歌三昧

2022-11-01 12:18:25 | Weblog

 

ある晴れた日に 第701回

 

回を追う毎に人殺しの顔になる大河ドラマの北条義時

 

エリートは紀ノ国屋にて中間層は東急、ユニオンわいらあ下層はセイユーで買う

 

ドルを売り円を買うのはシシュポスが大きな岩を運ぶに似たり

 

「ありがとう」「みんな仲良くしてね」と言うて左川ちかはみまかりき

 

若き日は左の人も歳取れば次第に右に傾くという

 

auのケータイなのでauの宣伝メールがじゃんじゃん入るが迷惑メールに指定できないauのケータイ

 

俺様がこの国を動かしているんだと誇大妄想する政治家多し

 

お隣のおにいちゃんが釣ってきたキハダマグロを1週間食べたの

 

このたびも私の反対意見を退けて夜郎自大に国葬を行う

 

熱烈な自公支持者に囲まれて無党派支持の我が家は孤立す

 

ブロンズの新社は知っているひともブロンズ社を知る人は少ない

 

1時間半かけて作った夕飯をたった5分で食べてしまうの?

 

この国に生まれて良かったかは分からない他の国に生まれたことがないので

 

納骨を終えたばかりの妹の白い墓標に雨降りしきる

 

NHKの天気予報はどうでも良いが近藤奈央ちゃんの笑顔が見たい

 

天高く交通情報センターの松井さんの眉ますます濃くなる

 

遥々とスペインからやって来て100g128円で売られる豚の肩肉

 

お父さんがえんえんえんと泣いている息子も自分も縄付きになった

 

ザアメンの匂いとどこが異なるかうまく言えずに栗の木過ぎる

 

地下鉄のたった一つの楽しみは地上の駅で日向ぼっこすること

 

「丁寧に説明します」はよく聞くがその説明は聞いたことなし

 

投げてよし打ってよしの大谷が笑うと突然赤ちゃんになる

 

この内閣この政党ではもう先がないこの国もまた私たちも

 

ドラ猫かカラスかヘビに食べられてただ一匹のメダカが残った

 

「なかなか良い挨拶だったじゃないか」と大沢のおじは誉めてくれたり父の葬儀で

 

なんぼ安うても中国の食料品だけは買うまいと妻と決意を新たにしたり

 

あれくらいマスクをつけろと叫んだ奴がマスクなんか取れとほざいている

 

「書評家」なる肩書仇名を貰いよそ様のふんどし締めて相撲を取ってる

 

そのかみの円の力が懐かしいエンパイアステートビルを買ったこともある

 

 

 玉川を海に流したモーニングショー淀むことなくサラサラ流れる 蝶人

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