ある土曜の夜に岐阜県多治見市へ。夜に多治見で呑んだことは無いのだが、チャンスが出来たので機会逃すまじとJR太多線に乗って多治見駅へ。目当ては広小路通りから入った路地、銀座センターにあるバー「リメンバー」。昼間は何度となく通ったことがあるこの銀座センター。閑散としているかと思いきや、夜はちゃんと明かりが点いている店が多いのにびっくり(10軒中8軒営業中だとのこと)。
中が見えない初めてのバーのドアを開けるのはいつだって緊張するものだが、開けると白髪の主人が優しく迎えてくれた。台風直撃予報(←外れた)の夜だけあって口開けの客だった模様。カウンターは9席程。バックカウンターには数えきれないほどのボトル。それにも増して圧巻なのは所狭しとびっしり書き綴られたメニュー。各種の酒、カクテルの数は数えきれず、主人の創作したというカクテルも多い。凄いなァ。こちら創業は昭和52年(1977)。昭和64年に移転し、令和元年にここへと元号毎に移転しているのだそう(笑)。
まずは「ジントニック」をお願いする。「普通にお作りしていいですか?」と仰ったのでジントニックだけでも様々な作り方があるのだろう。まだまだ暑い頃だったので喉を通るジントニックが堪らない。チャームはナッツ、コーン、ドライフルーツ、チョコ、カルパス、ビーフジャーキー、チーズと豪華なひと揃え。酒の時には何かを口に入れたい自分には有難い。次は何にしようと迷っていたら主人が「せっかくこんな台風の時に遠くから来てくださったので。」と台風にちなんで「ハリケーン」(ウイスキー+ジン)をサービスしてくれた。台風の時にはこれを出したくて手ぐすね引いて待っていたのだとか(笑)。楽しい。次は「オリンピック」(ブランデー+オレンジ)。これまたパリ・オリンピック期間中だったこともあってよく出したのだそう。主人の引き出しが多いのでどんな季節に訪れても楽しめそうだ。
こちら、かつて”特級”の表示があった頃のウイスキー「オールドボトル」を揃えているのが特徴。色々教えていただいたが、やはり40年以上前のウイスキーは生産量も多くなく造りが丁寧で、しかも当時大してプレミアが付いていなかったウイスキーも瓶内熟成が進んでいて香りが全く違うとのこと。実際にいくつか呑ませてもらうことに(写真下※絶対に覚えられないのでお願いして写真を撮らせていただきました)。テイスティング・グラスに注いだオールドウイスキーをスワリングして鼻を近づけるとぶわっと官能的な香りが。確かに凄い。口に含むと滑らかで、香りがアルコール感と共に鼻に抜けていく。旨いなァ。スポイトで水を垂らすとまた増幅されたような香りが沸き上がったりと、どんどん違う表情になっていく。
色々勧めて下さる主人は70歳代だとのこと。決して押しつけがましくなく、軟らかい物腰なので居心地がいい。興味深い話も色々聞かせて下さる。こんな小さなバーにもインバウンドの波がやって来ていて、某大陸からの客が金に物を言わせて高い酒をポンポン開けていくのだとか。えらい世の中になったものだ。最後、「そろそろ…」と言うと「せっかく遠くから…。」と、次は秘蔵のアブサン「MONDE 68」を呑ませて下さった(写真下)。
ニガヨモギから作られていてアルコール度数は68度(現在は製造中止)。ほんの少し舌に乗せただけなのに口中と鼻腔で香りが爆発!すンごいな、こりゃ。と、いつまでもこんなことしてたら帰りそびれてしまう。後ろ髪引かれながら勘定してもらい、お暇した。多治見の人達が羨ましい。店の支払いよりもここまでの交通費(主にタクシー代)の方が高くなってしまったが(苦笑)また是非立ち寄りたいナ。(勘定は¥8,900)
CAFE & BAR REMEMBER
岐阜県多治見市金山町28 銀座センター内
( 多治見 たじみ バー・リメンバー オーセンティック・バー オールドウイスキー ウイスキー特級 カクテル 創作カクテル モンデ酒造 モロゾフ酒造 absinthe )