実家の94歳になる高齢の父の話。
年明け頃から「膝が痛くて立てない」と言い出しました。
病院へ行ってレントゲンを撮ったりしましたが骨に異常があるわけではなく、傷めたのは間接なのか筋なのかよくわかりません。
父はこの歳になるまでどこかが痛いということがなく、認知症の進行を除けば、肩こりもないと不思議なほどに肉体が健康でした。
母は「歳を取ったんだからどこか一つくらい痛くなるものだよ」と笑いますが、痛みを感じている父にするとちょっとショックだったようで、「歩けない、歩きたくない」とかなりしょげていました。
そのため、どうしても歩かなくてはならない時には杖を使うようになりました。
それでも痛いというので、やがて「外に出たくない」と言い出して、週に一度の町内のマージャン大会や月に二度のカラオケ大会にも行き渋るようになったとか。
さすがに母も笑っていられなくなったのか、関節痛や痛みに効くという薬を飲ませたり湿布を貼ったりし、またマージャン大会などには知り合いに車に乗せてもらって送迎をしてなんとか外出させていました。
それが一月の状態で、最近も実家に行くと居間には杖が置いてあって、「お父さんてば家の中でトイレに行くのでも杖を突いていくんだ、っていうんだよ」と母。
「だけどさ…」
母によると、杖がどこに行ったか分からなくなってしばしば杖を探し回るのに今では杖なしで歩いているのだそう。
「トイレなんて近いんだから、杖を探して歩く間にパッと行けばいいのにね。杖があると安心なんだかねえ」
聞けば、町内のカラオケ大会にも最近は杖をついて歩いてゆくようになり、ステージに上がるときには杖を突いて上がるものの、一曲歌ってステージを降りるときには杖を忘れて歩いて席に戻るのだそう。
そのたびに係の若い女性が苦笑いしながら杖を持ってきてくれるのだそうで、「なんもさ、杖なんか忘れていれば歩けるんだよ(笑)」
かなり認知症が進んできた父ですが、まだ私のことは覚えていて会話もまともです。
膝が痛いことも忘れてくれれば良いのですがね。