11月8日(金)に封切りの映画「本心」を観てきました。
石井裕也監督・脚本で、主演は池松壮亮さん。
映画の宣伝では、「2040年の日本を舞台にした平野啓一郎さんの同名の小説を原作に、母の本心を知るためAI技術で仮想空間に母を蘇らせた男の姿を描くヒューマンミステリー」と書かれています。
「大事な話がある」と母に言われた息子(池松)だったが、母が豪雨の中、目の前で川に落ちる。
それを助けようと川に飛び込むが、助けられたものの自分自身が意識不明になり1年後に目を覚ましたところ、母は亡くなっていた。
母が最期に言いたかったことを知りたいと、この時代が可能にした仮想空間に母のバーチャルフィギュアを作り、あの時の本心を聞こうとする。
自分の知らない母の情報を、母の知り合いである三好彩花(三吉彩花:同名で出演)の力を借りて精度を高めようとするが、行きがかり上同居するようになり、そこからまた様々な展開が起きる…という物語。
結局、死んでしまった母からの思いを知りたい、という主人公の思いを中心にしていながら、実は生きている周りの人間の本心すら聞けないでいるのではないか、という皮肉とも取れました。
相手が機械ならば「本心を、思っていることを言え」と言えば、プログラム通りになにかもっともらしいことを生成してくれるのかもしれませんが、こと人間となると、思っていることはあってもその場の雰囲気とか、(これを言うとどうなるだろう)といった思いによって結局本心は言えないのが現実なのじゃないか。
映画の中では、田中裕子が演じる主人公の母親が「あのとき言いたかったことは…」としてある言葉を口にするのですが、それは本当に母親の本心なのかな。
それは2040年レベルの技術によってデータを駆使した、母親の思考回路が生成した答えなのかもしれない、とも思えます。
そんなもやもやがここを掻き立てるとすれば、監督の狙いは当たったのかもしれません。
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2024年レベルの生成AIは「生成AIは間違った答えを出すことがあります」という注釈が必ずついています。
そういう保険をかけられたら、何を出されても正しい答えとは思えなくなってしまいますよね。
でも、「らしい答え」までは導き出せそうで、生成AIへの立ち向かい方はこれからの時代の常識・必要スキルになりそうです。
ある人によると、生成AIを使いこなすためのスキルとは、「何をしてほしいのか、の明確化」、「背景情報の提供」、「サンプルデータの与え方」、「求めるアウトプットの提示」ということだそうで、それを「筋トレのように、日々繰り返して自らの能力を鍛え上げるしかない」とのこと。
「本心を言ってくれ」だけでは正しいアウトプットにならないのかもしれませんね。
本心を言わせるなんて、生身の人間相手では相当に困難な技術ですから。