孫たちと一緒に地元札幌での墓参りや、知床旅行のお土産を両親と義父母に届けるなど、いろいろな用事をこなした一日。
夕方になって、「外でジンギスカンでもやるか」ということになり、庭のウッドデッキにテーブルとキャンプ用の椅子を出し、熱源も「炭じゃなくてもカセットコンロでいいよな」という簡単ジンギスカン。
もやしを買いそびれてしまったけれど、まあこういうのもお気楽でいいよね。
…で、妻とジンギスカンを取り巻く思い出を話しているうちに、妻が「子供のころに、真ん中に穴が開いていて焼く面が平らなジンギスカン鍋があったのよ」と言い出しました。
「おう、なんとなく覚えてるわ」 私も昔どこかで見たことがある気がしました。
「あれは、焼く面が平らで焼きやすくて、周囲の溝も深かったので、野菜を煮るのにも重宝したのよね。うちの家では、昔からそれでジンギスカンをしていたので、後の時代になって、今風の溝がついていて兜のようなジンギスカン鍋が出回っているのを見て、逆に(これがジンギスカン鍋なの?)と驚いた記憶があるのよ」
「ふーん、今ならネットで買えるのかな」
と、いくらくらいで売っているものかとスマホで調べてみましたが、全くヒットしません。
「えー、もう売っていないのかな…」とあきらめかけたころに妻が、「あった!『煙突 ジンギスカン鍋』で検索したら出てきた」とついにその鍋を見つけました。
出てきた映像は確かに思い出の中の煙突付きジンギスカン鍋。
それは旭川で大正年間に創業した鋳物メーカーの臼井鋳鉄工業の製品で「蒼き狼」という名前のついたジンギスカン鍋でした。
この鍋は、昭和30年代から旭川を中心に、6000個以上も売れた伝説的なジンギスカン鍋だったのだそう。
しかし臼井鋳鉄工業が販売不振で2016年1月に自己破産してしまったこと。
そしてそれを受け継ぐ形でウスイクリエイト合同会社が立ち上がって、一度『蒼き狼』を再生産したものの、すでに売り切れた状態であること、などを知りました。
しかもこの『蒼き狼』は、鋳物製品だとしても、普通のジンギスカン鍋なら2千円くらいで買えるところを、約8千円という値付けはかなりの自信作。
「これがいいんだ、これじゃなきゃいや」というお客さんが買い求め、しかも再塗装(リストア)サービスもウスイクリエイトが引き継いで再開したようです。
溝がたくさんある普通のジンギスカン鍋は、使った後の手入れが面倒くさいという思いがありましたが、これならば手入れが楽かもしれません。
ジンギスカン鍋は昔から今のスタイルだと思い込んでいた思い込みを捨てて、北海道遺産でもある北海道のジンギスカン文化を鍋から再考したいところです。
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ちなみに、『蒼き狼』というのは、モンゴル人の祖とされる伝説上の獣で、転じてチンギス・ハンのこと。
元朝秘史の「上天より命ありて生まれたる蒼き狼(ボルテ・チノ)ありき」という下りに由来するそうで、チンギス・ハーンを扱う小説などにはしばしば登場する言い方なんだそうです。
まさか妻の「昔、穴の開いたジンギスカン鍋があったよね」の一言から、チンギス・ハーンにまでつながるとは思いませんでした。
伝説の英雄譚から、今や伝説の鍋になってしまった『蒼き狼』。たかがジンギスカンの鍋にこういう名前を付けた人もセンスがあったんですねえ。
今日も勉強になりました。
今度はいつ売り出すんだろうなあ。
ちょっと変わったジンギスカン鍋ですが、焼くと煮るが同時に楽しめるというのが面白いところです。どうぞご愛用されて充実したジンギスカンライフをお楽しみください。