もう1年以上前ですが、まだ50代の現役の後輩を訪ねて世間話をしていると、「父親が認知症で大変なのです」と教えてくれました。
彼のお母さんはもう亡くなっていて、お父さんが一人暮らしなのですが、それでいてお父さんには認知症が進んでいるとのこと。
彼は「だんだん記憶が乏しくなって判断も覚束なくなっていて、私が『こうしたら』とか『こうしなさい』と言っても聞かなくて、訪ねるたびに喧嘩になるんです。だからもう頭にきて父のところを訪ねるのをやめようかと思っています」と言います。
一人暮らしの父とのコミュニケーションが取りにくくなっていて本人もどうして良いかわからない状態のようでした。
「それはお父さんが住んでいる自治体の地域包括センターに相談したの?」
「いいえ、それはなにか気が引けるというかそこまで考えていません」
「どうして?もう自分一人で世話ができなければ誰かほかの人か社会の制度に頼る方が良いでしょ?」
しかし彼は「私自身、そのときにどうしたらよいかを考えたことがありませんでした」と、父親の世話や、もう介護レベルでの対応をどうしたらよいかが分かっていなかったのです。
そうした高齢の両親・老人の世話のためにわが国では、介護保険制度を作って財源を確保し、介護施設などのシステムを作り、介護支援専門員(通称ケアマネ)などの人材育成をして、制度の周知を図っています。
しかしそれにも関わらず、大学も出て仕事はちゃんとできる大人が、いざそういう事態に直面すると全く情報をもっていないことに気が付いて愕然として身動きが取れなくなるのです。
彼には「とにかくお父さんの地元の地域包括センターに連絡をして介護認定してもらったうえで、必要なサービスを受けるように動いた方が良いよ」とアドバイスをしておいたところ、そのご連絡が来て「介護の担当者と連絡が取れて、なんとか良い方向に動き始めました」とのことでした。
それなりに社会的な地位のある人でも、両親の老化や介護の問題となると、普段全く考えたことがないために、頭が真っ白になってしまうのかもしれません。
彼の場合は独身ということもあって、相談できる人が身近にいなかったことで、事態の収拾が図れなかったということもあったのでしょう。
親を持つ子供としてはまず恥ずかしがらずに役場に相談するというのが第一歩です。
ただその先には、親御さん自身の問題として「施設利用なんて必要ない。恥ずかしいし、絶対に行かない」という拒否反応を示すこともあるでしょう。
本当は早いうちから、老いて在宅での日常暮らしがむずかしくなったときはどうするか、ということについて親とコミュニケーションを取っておくことが大切なのです。
90歳を超えるような我が家の場合には、もう「胃ろうも含めて延命措置はしない」というような意思の確認もしていますが、それもコミュニケーションの延長のなかで話せることです。
お年寄りの中には、「一度施設利用を始めると、その先には施設利用の頻度を高めて、最後は施設に入れられる」という恐怖と拒否感を持つ人もいると聞きます。
我が家は幸いにしてデイサービス利用をすんなりと始めてくれましたが、それも妹の死をきっかけにして、親自らが「そろそろそういうのを利用したほうが楽かね」という気分になってくれたからです。
まず大切なことは、普段から親とコミュニケーションが取れる関係性をちゃんと保っておくことで、その先には自分以外の介護のプロも含めて、親の様子を見守る体制を作ることです。
【created by copilot】
私も介護初任者研修を受講して改めてわかったことが数多くありました。
介護を取り巻く制度のこと、施設のこと、身体介護のやり方などは大いに参考になりましたが、一番感じたことは「老いる」ということに対する理解と心構えを持つことが大切だ、ということです。
そしてそれはやはり自分の人生において一度しっかりと勉強をしておくべき社会テーマだ、ということです。
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私たちは「社会人になって就職をして社会に貢献する」ために、小・中の義務教育と、高・大の高等教育という就学の時代を経て社会人になります。
社会人になるにはこれだけの素養と教養を身に着けておくように、という社会の合意がそこにあります。
しかし親が高齢者になるということ、そして自分も高齢者になるというに対しては、社会的合意としての学びの場はありません。
それは一人ひとりに任されていて、もしかしたらそんな勉強をしなくても困ることのない人生があるかもしれませんが、一方で、不勉強なために途方に暮れてしまう人の方が多くいるのではないかと思います。
老後についての勉強は「介護」について学ぶのが一番だと思います。
介護初任者研修を受講すると120時間の座学が必要となるので、そこまでするつもりはないと言う方でもせめて本の1冊や2冊は読んでおくのが良いのではないでしょうか。
老いは生涯学習のテーマの一つです。
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