北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

旧島松駅逓を巡る三人の物語

2013-05-19 23:45:27 | Weblog

 恵庭の管理釣り場へリベンジに行き、帰りに島松の国指定史跡「旧島松駅逓所」を見てきました。

 島松駅逓は、北海道開拓を進める中で、北海道各地に設置された駅逓の一つです。

 明治の初期にはまだ海岸沿いを船で移動するのがやっとだったのが、札幌まで行くのには苫小牧から陸路をたどる必要があり、そのために交通不便の道の途中、宿泊と人馬継立・逓送等の便を図るために置かれたこの駅逓という施設です。

 今道内には三か所の駅舎が復元されて残っているのだそうですが、そのなかでも最も古く、明治初期の姿を残す貴重なもので、国の史跡に指定されています。
 
 北海道における駅逓制度は、古くは松前藩時代に遡りますが、明治に入ってからは開拓使が駅逓業務を受け継ぎました。

 島松駅逓は、明治6年に設置されましたが、ここを歴史的に有名にした人物は三名います。

 一人目は、ここを明治10年から請人として、また17年からは正式な駅逓取扱人としても業務を運営した中山久蔵という人。


 【中山久蔵氏の写真】

 この人は今の大阪府太子町で1828年に生まれ、43歳の時にここ島松沢に移住し開墾を始めました。
 
 この時代は当時のお雇い外国人ホーレス・ケプロンなどの提言で、「北海道では寒くて稲が育たないから麦を栽培せよ」という方針が出されていました。

 しかし、中山久蔵はその中にあって「農業は米だ」として、函館から寒さに強い「赤毛種」を取り寄せ、栽培にあたっては、田んぼの水温を上げるために風呂を沸かしてお湯を田に注ぐなど、必死に取り組んでとうとうこの地で、米を実らせることに成功しました。

 さらには石狩川周辺でのコメ作りのために惜しげもなく種もみを提供し、また農業指導にも当たり、北海道の米作りの父と呼んでも過言ではないほど高い志を持った人でした。

 駅逓の中には中山久蔵に関する様々な資料が展示されていましたが、その中に明治十年の内閣勧業博覧会において、この地で栽培したコメを出品して報奨を受けた記録がありました。

「新開の地に於いて、このような良いコメを出品できるような労力をよくかけられたものだ」として、内務卿大久保利通の褒状です。立派ですね。


 【大久保利通からの褒状】


   ◆   ◆   ◆


 二人目は、北大の教頭を務めたクラーク博士。かれが任期を終えて札幌を去る際に、別れがたい教え子たちがいつまでもついてきて、最後の別れの場所がこの地だということ。

 記録によると、クラーク先生は、日本から来国を求められた時に一度大学側がこれを断り、クラーク先生に一年間の休暇を与えたうえで、来日を果たしたのだそう。

 なので実際に北大にいたのはわずか9ヶ月程度だったとのことで、案外知らなくて驚きました。

 敷地の中には、クラーク先生の碑と中山久蔵氏の記念碑が並んで建てられています。


 【右がクラーク先生の碑で、左が中山久蔵氏の碑】


   ◆   ◆   ◆


 そして三人目は明治天皇です。明治14年に明治天皇は北海道視察のために行幸されていますが、その際の大きな目的の一つが、寒冷地でのコメの栽培を成功させた中山久蔵に声をかけたかったことだったのではないか、とのこと。

 ここ島松駅逓は、ご行幸にあたって中山久蔵が私財を用いて増築をさせたお休みどころが残されています。

 畳のヘリの文様一つでも、簡単に使用の許されないものが使われているそうですよ。

 建物の裏には、「駐蹕處(ちゅうひつしょ)」という石碑が建てられていました。


 【駐蹕處の石碑】

 神事の際に神さまが下りてきたりまた昇っていただく降神の儀・昇神の儀の際に神官が「ウ~~~」とサイレンの様な声を発しますが、あれを「警蹕(けいひつ)」と言って、貴人がお通りになる合図、とされていますが、それ以外では初めて見る文字使い。。

 「駐蹕」の「蹕」には「貴人が通ること」と併せて「天皇陛下の行幸」という意味もありました。


   ◆   ◆   ◆


 入場料は大人一名200円で、ガイドの方はシルバー人材センターからの派遣とのことでしたが、ご立派な説明で充実した見学となりました。 

 ちゃんとガイドは受けるべきですね。

 釣りは今日もダメダメでしたが、歴史の良い勉強になりました。


 【展示コーナーとガイドの方】
 

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