最近はフィルムセンターで増村保造作品をいっぱい見ているが、それはもうすぐ別にまとめたい。他にも興味深い映画は新旧問わずいっぱいあるけど、もうすぐ終わるので「革命の子どもたち」を見てきた。テアトル新宿で昼間と夜に上映、25日まで。

これはアイルランドの記録映画監督、ジェーン・オサリバンが撮ったフィルムで、ドイツと日本でかつて「テロリスト」と呼ばれた「極左」グループのリーダーを母親として生きてきた二人の女性の姿を追った映画である。一人は「日本赤軍」の重信房子の娘、重信メイ、もうひとりはバーダー=マインホフ・グループのウルリケ・マインホフの娘、ベティーナ・ロールである。ウルリケ・マインホフは1976年に獄中で自殺しているので、当然のこととして映像でしか出てこない。重信房子は2000年に日本で逮捕され、日本赤軍の関与したハーグ事件等で起訴された。無罪を主張したが、2010年に懲役20年の判決が確定しているので、こちらも当然本人は過去の映像でしか出てこない。
ということで、二人の娘と過去の映像のモンタージュで構成された映画だけど、非常に興味深い現代史の証言になっている。当時の西ドイツの「過激派」に関しては、「バーダー・マインホフ」という映画になって日本公開されている。僕も見たけど、マインホフに娘がいたことは描写されていたのかもしれないけど、ほとんど記憶がない。一方、重信メイはパレスティナの闘士との間の子で、国籍自体がないままに育った。重信房子逮捕後に、初めて存在が公表され日本国籍を取り、その後は日本で生活し、今はジャーナリストとして活躍している。話を聞いたこともあるけど、いろいろな意味で非常に賢く魅力的な女性だと思う。
その二人の過酷な人生が初めて世界に発信されたと言えるのが、この映画だろう。革命家の親を持った子どもの生き方は様々だが、重信メイは過酷な運命を引き受け自らの人生を切り開いてきた。母親と父親の特殊性、つまり「普通の家庭」のように親に庇護された幼年時代を送れなかったということだけでなく、イスラエルのレバノン侵攻と虐殺のような恐るべき惨状を幼い目で見なければならなかった。しかし、日本とアラブの「二重性」を自分のアインデンティティとして誇りを持って生きている。そういう重信メイの姿は、今の日本で多くの人に勇気を与えるのではないかと思う。
今では若くして「世界革命」を語るなど信じられないような社会だけど、わずか40年ほど前には激しい抵抗の時代があった。若い世代にも見ておいて欲しい現代史の貴重なドキュメントである。ガザ地区へのイスラエル侵攻などを考える前提としても、是非見ておきたい映画。


これはアイルランドの記録映画監督、ジェーン・オサリバンが撮ったフィルムで、ドイツと日本でかつて「テロリスト」と呼ばれた「極左」グループのリーダーを母親として生きてきた二人の女性の姿を追った映画である。一人は「日本赤軍」の重信房子の娘、重信メイ、もうひとりはバーダー=マインホフ・グループのウルリケ・マインホフの娘、ベティーナ・ロールである。ウルリケ・マインホフは1976年に獄中で自殺しているので、当然のこととして映像でしか出てこない。重信房子は2000年に日本で逮捕され、日本赤軍の関与したハーグ事件等で起訴された。無罪を主張したが、2010年に懲役20年の判決が確定しているので、こちらも当然本人は過去の映像でしか出てこない。
ということで、二人の娘と過去の映像のモンタージュで構成された映画だけど、非常に興味深い現代史の証言になっている。当時の西ドイツの「過激派」に関しては、「バーダー・マインホフ」という映画になって日本公開されている。僕も見たけど、マインホフに娘がいたことは描写されていたのかもしれないけど、ほとんど記憶がない。一方、重信メイはパレスティナの闘士との間の子で、国籍自体がないままに育った。重信房子逮捕後に、初めて存在が公表され日本国籍を取り、その後は日本で生活し、今はジャーナリストとして活躍している。話を聞いたこともあるけど、いろいろな意味で非常に賢く魅力的な女性だと思う。
その二人の過酷な人生が初めて世界に発信されたと言えるのが、この映画だろう。革命家の親を持った子どもの生き方は様々だが、重信メイは過酷な運命を引き受け自らの人生を切り開いてきた。母親と父親の特殊性、つまり「普通の家庭」のように親に庇護された幼年時代を送れなかったということだけでなく、イスラエルのレバノン侵攻と虐殺のような恐るべき惨状を幼い目で見なければならなかった。しかし、日本とアラブの「二重性」を自分のアインデンティティとして誇りを持って生きている。そういう重信メイの姿は、今の日本で多くの人に勇気を与えるのではないかと思う。
今では若くして「世界革命」を語るなど信じられないような社会だけど、わずか40年ほど前には激しい抵抗の時代があった。若い世代にも見ておいて欲しい現代史の貴重なドキュメントである。ガザ地区へのイスラエル侵攻などを考える前提としても、是非見ておきたい映画。