北朝鮮指導部、というか「部」と呼べるものがあるのかどうか、「首領様」がいるだけかもしれないけど、一体何を考えてアメリカに対する挑発的言動を繰り広げているのだろうか。世界の多くの人々は、軍事力では間違いなく世界最強である米軍をいたずらに挑発する「北」が理解できない。
そのあたりの問題は、僕は以下のように考えている。北朝鮮としては、「敵」に対し宥和的に出た時に獲得できたものよりも、「敵」に対し挑発的に行動した時に獲得できたものの方が大きい。そういう風に世界を認識しているんじゃないか。もちろんその際の「世界を見る目」は、朝鮮労働党の独裁、もっと言えば「金王朝」の永続という観点から考えたものである。
中国指導部は北朝鮮に経済の「改革開放」を求めてきたとされる。経済状態の改善という観点、あるいは「民生向上」という意味では、むろんいずれの時点下でもっと「開放」が避けられないだろう。中国は自国の「成功体験」から「改革開放」を勧めてくる。でも「分断国家」である北朝鮮としては、南の韓国と同じような経済体制を取り、同じように世界との自由な往来を認めてしまえば、そもそも「北朝鮮の存在意味」がなくなってしまうではないか。
もちろんそれで良くて、北が経済改革を進めて行って、やがてそれが緩やかな連携から「統一」へと進んで行ければ一番いい。世界の大部分の人はそれでいいと思うけど、北朝鮮指導部だけはそれを認められないだろう。韓国主導の「統一」を認めないならば、改革開放にも限度があるのは当然だと思っているだろう。何とか生き延びるためには、むしろ「鎖国」「軍事大国化」の方が効果的と思っているだろう。それが歴史的に確認されていると認識しているんじゃないか。
初代の金日成主席の時代には、フィクションではあれ「建国の父」としての正当性を有していた(と思われていた)。(金日成の抗日戦争は、現実にパルチザン活動はあったけれど、それが「祖国を解放した」わけではない。現実は「満州国」からソ連に逃れ、ソ連軍とともに北朝鮮に乗り込んでいったわけで、祖国解放神話のほとんどは後の時代に作られたフィクションである。)
だが、金正日(キム・ジョンイル)、金正恩(キム・ジョンウン)の時代には、「革命の血」を受け継ぐというだけではダメで、やはり「実績」がいるんだと思う。そして、金正日時代には、金大中を受け入れて初の南北首脳会談が開かれた。限定的ではあれ、開城工業団地や金剛山への韓国からの観光事業などが行われたのだから、北朝鮮も韓国からの資金が欲しいことは欲しかったんだろう。でもそれらの事業は限定的に過ぎ、北朝鮮に大きなインパクトを与えなかった。
2002年には日本の小泉首相を受け入れ、過去の拉致問題を「盲動主義」があったと認め、被害者の日本訪問を認めた。大量破壊兵器の開発を中止する「日朝ピョンヤン宣言」も出された。それに対して日本は経済援助を与えることになったはずだが、実際にはそうならなかった。拉致事件被害者の死亡報告が異常に多いことに日本中が衝撃を受け、北朝鮮への非難が沸騰した。それは理解できるけれど、北側からすれば、「譲歩したのに制裁された」非常に苦い教訓になってるんじゃないか。
一方、1994年にIAEA(国際原子力機関)の査察受け入れをめぐって「朝鮮半島危機」が起こり、クリントン政権による空爆が計画された時点では、最終的に「米朝枠組み合意」が結ばれた。北側はNPT条約に留まり、プルトニウムが生産できる黒鉛炉などは軽水炉に置き換え、その間は重油を提供する。使用済み核燃料は廃棄するというもので、KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)が作られた。だがその後も北朝鮮の核開発は止まず、結局KEDOは2005年末に清算された。
これは国際社会から見ると「失敗体験」以外の何物でもない。「瀬戸際外交」の結果、口先で核兵器開発断念を約束し、NPT(核不拡散条約)にも留まることになった。だけど、現実には「重油」だけタダ取りされたようなものである。でもそれを逆に見れば、「瀬戸際外交」こそが自分では失うものなく得るものだけがあったという「成功体験」をもたらした。
この過去20年ほどの経過を見てみれば、自分の側から譲歩して行っても、かえって非難され、さらなる譲歩を求められるだけである。一方、北側の大量破壊兵器開発が本気であることを示せば示すほど、一番の「敵」であるアメリカも本気で対応せざるを得ない。アメリカ国民は外国への関心などたいして持ってないし、ヨーロッパや中東情勢の方が遥かに重大な関心があるだろう。でもこの間の「挑発」の繰り返しによって、米国民の関心も急速に高まっているらしい。
やはり今の挑発路線こそが効果的だ、成果を挙げているとキム・ジョンウン政権は見ているだろう。そして、その挑発路線によって、例えば日本の自衛隊はアメリカの地上配備型イージスシステム「イージスアショア」ってのを導入する方針だという。このような「対北朝鮮ミサイルビジネス」はぼう大な利権を産む。今さらミサイル開発をやめられては困る人々がたくさんいるということである。こうやって、事実上の相互依存関係が出来ていき、それぞれ挑発を繰り返すことにより、世界的な注目を浴びる。北朝鮮も米国トランプ大統領も、今回の事態で「得点」を得ている。
そのあたりの問題は、僕は以下のように考えている。北朝鮮としては、「敵」に対し宥和的に出た時に獲得できたものよりも、「敵」に対し挑発的に行動した時に獲得できたものの方が大きい。そういう風に世界を認識しているんじゃないか。もちろんその際の「世界を見る目」は、朝鮮労働党の独裁、もっと言えば「金王朝」の永続という観点から考えたものである。
中国指導部は北朝鮮に経済の「改革開放」を求めてきたとされる。経済状態の改善という観点、あるいは「民生向上」という意味では、むろんいずれの時点下でもっと「開放」が避けられないだろう。中国は自国の「成功体験」から「改革開放」を勧めてくる。でも「分断国家」である北朝鮮としては、南の韓国と同じような経済体制を取り、同じように世界との自由な往来を認めてしまえば、そもそも「北朝鮮の存在意味」がなくなってしまうではないか。
もちろんそれで良くて、北が経済改革を進めて行って、やがてそれが緩やかな連携から「統一」へと進んで行ければ一番いい。世界の大部分の人はそれでいいと思うけど、北朝鮮指導部だけはそれを認められないだろう。韓国主導の「統一」を認めないならば、改革開放にも限度があるのは当然だと思っているだろう。何とか生き延びるためには、むしろ「鎖国」「軍事大国化」の方が効果的と思っているだろう。それが歴史的に確認されていると認識しているんじゃないか。
初代の金日成主席の時代には、フィクションではあれ「建国の父」としての正当性を有していた(と思われていた)。(金日成の抗日戦争は、現実にパルチザン活動はあったけれど、それが「祖国を解放した」わけではない。現実は「満州国」からソ連に逃れ、ソ連軍とともに北朝鮮に乗り込んでいったわけで、祖国解放神話のほとんどは後の時代に作られたフィクションである。)
だが、金正日(キム・ジョンイル)、金正恩(キム・ジョンウン)の時代には、「革命の血」を受け継ぐというだけではダメで、やはり「実績」がいるんだと思う。そして、金正日時代には、金大中を受け入れて初の南北首脳会談が開かれた。限定的ではあれ、開城工業団地や金剛山への韓国からの観光事業などが行われたのだから、北朝鮮も韓国からの資金が欲しいことは欲しかったんだろう。でもそれらの事業は限定的に過ぎ、北朝鮮に大きなインパクトを与えなかった。
2002年には日本の小泉首相を受け入れ、過去の拉致問題を「盲動主義」があったと認め、被害者の日本訪問を認めた。大量破壊兵器の開発を中止する「日朝ピョンヤン宣言」も出された。それに対して日本は経済援助を与えることになったはずだが、実際にはそうならなかった。拉致事件被害者の死亡報告が異常に多いことに日本中が衝撃を受け、北朝鮮への非難が沸騰した。それは理解できるけれど、北側からすれば、「譲歩したのに制裁された」非常に苦い教訓になってるんじゃないか。
一方、1994年にIAEA(国際原子力機関)の査察受け入れをめぐって「朝鮮半島危機」が起こり、クリントン政権による空爆が計画された時点では、最終的に「米朝枠組み合意」が結ばれた。北側はNPT条約に留まり、プルトニウムが生産できる黒鉛炉などは軽水炉に置き換え、その間は重油を提供する。使用済み核燃料は廃棄するというもので、KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)が作られた。だがその後も北朝鮮の核開発は止まず、結局KEDOは2005年末に清算された。
これは国際社会から見ると「失敗体験」以外の何物でもない。「瀬戸際外交」の結果、口先で核兵器開発断念を約束し、NPT(核不拡散条約)にも留まることになった。だけど、現実には「重油」だけタダ取りされたようなものである。でもそれを逆に見れば、「瀬戸際外交」こそが自分では失うものなく得るものだけがあったという「成功体験」をもたらした。
この過去20年ほどの経過を見てみれば、自分の側から譲歩して行っても、かえって非難され、さらなる譲歩を求められるだけである。一方、北側の大量破壊兵器開発が本気であることを示せば示すほど、一番の「敵」であるアメリカも本気で対応せざるを得ない。アメリカ国民は外国への関心などたいして持ってないし、ヨーロッパや中東情勢の方が遥かに重大な関心があるだろう。でもこの間の「挑発」の繰り返しによって、米国民の関心も急速に高まっているらしい。
やはり今の挑発路線こそが効果的だ、成果を挙げているとキム・ジョンウン政権は見ているだろう。そして、その挑発路線によって、例えば日本の自衛隊はアメリカの地上配備型イージスシステム「イージスアショア」ってのを導入する方針だという。このような「対北朝鮮ミサイルビジネス」はぼう大な利権を産む。今さらミサイル開発をやめられては困る人々がたくさんいるということである。こうやって、事実上の相互依存関係が出来ていき、それぞれ挑発を繰り返すことにより、世界的な注目を浴びる。北朝鮮も米国トランプ大統領も、今回の事態で「得点」を得ている。