東中野の映画館、ポレポレ東中野で「あまねき旋律(しらべ)」と「僕の帰る場所」という2本の映画を見た。上映は今後も続くが、20日からは夜の上映になる。新聞で「僕の帰る場所」を「途方もない才能が誕生した」と激賞していた(朝日、10.12夕刊、暉峻創三)ので見ておこうかと思った。ポレポレはドキュメンタリー映画の上映が多いので、「僕が帰る場所」も何となくドキュメンタリーだと思い込んでいたが、これは劇映画だった。かなりドキュメンタリー的な作りだけど。
「僕の帰る場所」は、新人の藤元明緒(ふじもと・あきお、1988~)が脚本・監督・編集を担当した2017年の日本・ミャンマー映画。2017年の東京国際映画祭の「アジアの未来部門」で作品賞、国際交流基金アジアセンター特別賞を受賞した。公開規模が小さくて見過ごすところだったが、二つの文化の狭間に生きる子どもの姿を生き生きととらえた作品だった。前半は39歳のミャンマー人男性アイセが妻と二人の男の子を抱えて、日本で難民認定を求めて暮らしている姿を描く。難民認定の厳しさやミャンマーの人権問題を描く社会派かなと思うと、後半でガラッと変わる。

日本での先行きに悩む妻のケインは次第に不眠になり、ミャンマーに帰りたい、あなたに付いて日本に来たのは間違いだったと夫に詰め寄る。この映画は2014年に撮影されたが、夫はミャンマーの民主化を信じられず、日本で難民認定を目指すという。結局、妻は子ども二人を連れてミャンマーに帰ってしまう。この母子3人は実際の家族で、父親は別人だという。現実のケースをもとにしたフィクションだが、この家族の描写はドキュメンタリーだと言われたら信じてしまうだろう。
長男のカウンは日本の暮らしになじんでいたので、ミャンマーに行っても汚いと感じている。母の実家に住むが、居場所がない感じで「日本に帰りたい」といつも訴えている。ある日、日本に一人で帰ろうと全然知らない町に出て行く。飛行場まで行けば何とかなるだろうと思うが、どう行けばいいか判らない。おもちゃの銃を手に持ち、ヤンゴンの町を彷徨うカウン。車が行き交い危なっかしい街のようす、屋台や人力車など東南アジアの雑踏の中で、一体どうなるか目が離せない。カウンを演じるカウン・ミャッ・トゥが素晴らしい存在感で心を奪われる。
全く映画製作の経験のない若い監督によってつくられた作品で、前半の日本編はちょっと弱い感じもある。でも撮影終了から時間をかけて編集し、ようやく公開までこぎつけた。監督はミャンマー人女性と結婚してヤンゴンで働いているということだった。日本の外国人行政が大きく変わろうとしているとき、「難民認定」の少なさという問題を描くのは大事な指摘だと思う。諸外国には難民を扱う映画がいくつもあるのに、日本映画では思いつかない。近年は外国で映画を作る若い日本人も多いけど、この映画も注目すべき達成だと思う。
最初に見た「あまねき旋律」は簡単に。これはなんとインドの最東部、ナガランド州の民衆の歌を取り上げたドキュメンタリーだった。山形国際ドキュメンタリー映画祭で受賞している。二人のインド人監督による作品で、チョークリ語という言語の映画だと書かれている。風景が素晴らしく、人々は山の中の「千枚田」で稲作を行っている。その時に皆で歌っている歌と人々を取材した映画。ナガランド独立運動でインド軍を戦争した話。山奥にそびえるキリスト教会など興味深い描写が続く。ここまで自分が行くことはないだろうなあと思いながら、貴重な風景を楽しんだ。
「僕の帰る場所」は、新人の藤元明緒(ふじもと・あきお、1988~)が脚本・監督・編集を担当した2017年の日本・ミャンマー映画。2017年の東京国際映画祭の「アジアの未来部門」で作品賞、国際交流基金アジアセンター特別賞を受賞した。公開規模が小さくて見過ごすところだったが、二つの文化の狭間に生きる子どもの姿を生き生きととらえた作品だった。前半は39歳のミャンマー人男性アイセが妻と二人の男の子を抱えて、日本で難民認定を求めて暮らしている姿を描く。難民認定の厳しさやミャンマーの人権問題を描く社会派かなと思うと、後半でガラッと変わる。

日本での先行きに悩む妻のケインは次第に不眠になり、ミャンマーに帰りたい、あなたに付いて日本に来たのは間違いだったと夫に詰め寄る。この映画は2014年に撮影されたが、夫はミャンマーの民主化を信じられず、日本で難民認定を目指すという。結局、妻は子ども二人を連れてミャンマーに帰ってしまう。この母子3人は実際の家族で、父親は別人だという。現実のケースをもとにしたフィクションだが、この家族の描写はドキュメンタリーだと言われたら信じてしまうだろう。
長男のカウンは日本の暮らしになじんでいたので、ミャンマーに行っても汚いと感じている。母の実家に住むが、居場所がない感じで「日本に帰りたい」といつも訴えている。ある日、日本に一人で帰ろうと全然知らない町に出て行く。飛行場まで行けば何とかなるだろうと思うが、どう行けばいいか判らない。おもちゃの銃を手に持ち、ヤンゴンの町を彷徨うカウン。車が行き交い危なっかしい街のようす、屋台や人力車など東南アジアの雑踏の中で、一体どうなるか目が離せない。カウンを演じるカウン・ミャッ・トゥが素晴らしい存在感で心を奪われる。
全く映画製作の経験のない若い監督によってつくられた作品で、前半の日本編はちょっと弱い感じもある。でも撮影終了から時間をかけて編集し、ようやく公開までこぎつけた。監督はミャンマー人女性と結婚してヤンゴンで働いているということだった。日本の外国人行政が大きく変わろうとしているとき、「難民認定」の少なさという問題を描くのは大事な指摘だと思う。諸外国には難民を扱う映画がいくつもあるのに、日本映画では思いつかない。近年は外国で映画を作る若い日本人も多いけど、この映画も注目すべき達成だと思う。
最初に見た「あまねき旋律」は簡単に。これはなんとインドの最東部、ナガランド州の民衆の歌を取り上げたドキュメンタリーだった。山形国際ドキュメンタリー映画祭で受賞している。二人のインド人監督による作品で、チョークリ語という言語の映画だと書かれている。風景が素晴らしく、人々は山の中の「千枚田」で稲作を行っている。その時に皆で歌っている歌と人々を取材した映画。ナガランド独立運動でインド軍を戦争した話。山奥にそびえるキリスト教会など興味深い描写が続く。ここまで自分が行くことはないだろうなあと思いながら、貴重な風景を楽しんだ。
