地方選挙に関してはあまり書かないようにしているんだけど、9月30日に行われた沖縄県知事選は今年最重要の選挙に違いないから、少しデータを見ておきたい。データを調べずにあれこれ憶測する人もいるものだから。沖縄県知事選は元々任期満了選挙が11月ごろに予定されていたが、翁長雄志前知事が8月8日に死去したため早まった。その選挙では、衆議院議員だった玉城デニー氏が39万6541票で当選した。これは沖縄選挙史上の最多得票だった。
(当選後の玉城氏)
政権側が推した前宜野湾市長の佐喜眞淳氏の得票は31万6321票だった。どっちが勝つにせよ、もう少し僅差になるかと思っていたので、8万票差は予想以上だった。玉城氏の得票率は55.07%。今回の知事選の投票率は63.24%だった。2014年は64.13%で、2006年以来6割を超えている。前回の翁長氏の得票は36万0820票、得票率は51.7%だった。
佐喜眞氏が辞任した宜野湾市では市長選も行われた。そっちは佐喜眞氏の後継、松川正則氏が2万6214票で当選した。玉城陣営の推した仲西春雅氏の得票は2万975票。一方、宜野湾での知事選の得票を見てみると、佐喜眞氏が2万6644票、玉城氏が2万2373票で、宜野湾では佐喜眞氏が優勢だった。しかし、得票をよく見ると「佐喜眞」「松川」票はほぼ同数である。一方、「玉城」「仲西」票は玉城票が2千票多い。投票率を見ると、知事選が65.69%、市長選が64.26%で、同じ日に同じ場所で選挙したのに1%違う。市長選は無効票も千票ほど多い。つまり、普天間基地の地元である宜野湾市でも、知事選で玉城と書くためだけに2千人近くが投票に行ったのである。
ここで有権者数を調べてみたい。当日の有権者数は、115万8602人である。前回の2014年は、109万8337人。6万人ほど増えているが、その理由は「18歳選挙権」である。18歳に選挙権が引き下げられた初めての選挙は、2016年の参議院選挙だった。その時の有権者数は、115万5811人だった。2017年の衆院選時は、115万8940人。これは選管のホームページにある数字で、在外者も含めたもの。これを見ると、ここ2年間ほぼ同じ。時々「選挙目当てに住民票を移す不正」があると言い立てる人がどっち側にいる。でも、そんなことはないわけである。
辺野古の地元、名護市も見ておこう。9月20日現在の名護市の有権者は、4万9445人である。得票は、玉城氏が1万6796、佐喜眞氏が1万5013票。1783票で玉城氏が優勢である。一方、2月4日に行われた市長選では、政権側が擁立した渡具知武豊氏が2万389票、翁長氏支持の現職稲嶺進氏が1万6931票で、反翁長知事派が勝利した。玉城票と稲嶺票はほぼ同じと見ていい。一方、渡具知票は佐喜眞票より5千票も多い。これはなぜだろうか。
有権者数を見ると、2018年市長選時は、4万9372人。さらにさかのぼって、2017年の衆院選時は、4万9199人。2016年の参院選時は、4万9022人。全部ほぼ同じである。今時「不正流入」を計画する陣営があるとは思えないが、実際に不審な変動はない。4万9千人は同じで、100人単位の動きはあるが自然な変動と考えられる。一方、大きく違うのは投票率である。知事選の投票率は、65.04%。市長選は76.92%である。17年衆院、16年参院はともに55%前後だった。
2014年の前回市長選は、有権者数は4万6582人、投票率76.71%。市長選は4人に3人は選挙に行くのである。選挙権が20歳だった時代なので、有権者は3千人近く少ない。前回の市長選結果は、稲嶺進1万6971票、末松文信1万5684票。稲嶺票は14年、18年でほとんど変わらない。有権者が増えているので、得票率は減っている。一方、反稲嶺(親政権)票は4700票も増えている。新しく増えた10代だって全部が政権支持ではないだろう。投票率はほぼ同じなので、2~3千人の有権者が前回と支持を変えたのである。投票率が知事選より10ポイント多いことで判るように、市長選では相当激しい働きかけがあったのだろう。
18歳選挙権後に行われた全県選挙は、2016年の参院選しかない。その時は「オール沖縄」勢力の推す伊波洋一が35万6355票を得た。投票率は54.46%だった。2014年知事選で翁長氏が獲得したのは、36万0820票。「オール沖縄」勢力は、このように35万前後の得票力がある。しかし、名護市長選で見られたように、今年に入ってほころびも見えていた。病身の翁長氏が候補として知事選に臨んでいた場合は、政権側に切り崩されていた可能性もあるのではないか。2017年の衆院選の比例区票を見てみると、自民=16万0169、公明=8万6896、維新=4万4101で、計29万票ほどが佐喜眞氏の基礎票と考えられる。31万6千を獲得したので、それなりに基礎票は獲得した。
こうしてみると、得票数が多いのは、一つには「18歳選挙権」で有権者数が増加したことであり、投票率が6割を超えて前回並みだったこと。台風で直前の運動ができなくなり、政権側の物量作戦でひっくり返すことができなかった。翁長氏の「弔い合戦」ということで、県民の心に訴えるものがあった。玉城氏の知名度は宜野湾市長の佐喜眞氏よりも高かったと思われる。佐喜眞氏陣営が菅官房長官を先頭に「携帯電話の料金を4割下げる」などと、知事の権限に関係ない宣伝をしたこと。これらの様々な要因が集まって、39万もの票が集まったと考えられる。
巨大台風が近づき、期日前投票にズラッと並ぶ異例の知事選だった。その中で、ここで政権側の思う通りにしてはいけないという有権者が多かった。翁長氏が投げかけたものが、亡くなったことで改めて県民の心に響いた。そういうことかなと思うが、宮古島、石垣島など先島諸島では佐喜眞氏が勝っている。そのことの意味は別に考えて行かないといけない。
(当選後の玉城氏)
政権側が推した前宜野湾市長の佐喜眞淳氏の得票は31万6321票だった。どっちが勝つにせよ、もう少し僅差になるかと思っていたので、8万票差は予想以上だった。玉城氏の得票率は55.07%。今回の知事選の投票率は63.24%だった。2014年は64.13%で、2006年以来6割を超えている。前回の翁長氏の得票は36万0820票、得票率は51.7%だった。
佐喜眞氏が辞任した宜野湾市では市長選も行われた。そっちは佐喜眞氏の後継、松川正則氏が2万6214票で当選した。玉城陣営の推した仲西春雅氏の得票は2万975票。一方、宜野湾での知事選の得票を見てみると、佐喜眞氏が2万6644票、玉城氏が2万2373票で、宜野湾では佐喜眞氏が優勢だった。しかし、得票をよく見ると「佐喜眞」「松川」票はほぼ同数である。一方、「玉城」「仲西」票は玉城票が2千票多い。投票率を見ると、知事選が65.69%、市長選が64.26%で、同じ日に同じ場所で選挙したのに1%違う。市長選は無効票も千票ほど多い。つまり、普天間基地の地元である宜野湾市でも、知事選で玉城と書くためだけに2千人近くが投票に行ったのである。
ここで有権者数を調べてみたい。当日の有権者数は、115万8602人である。前回の2014年は、109万8337人。6万人ほど増えているが、その理由は「18歳選挙権」である。18歳に選挙権が引き下げられた初めての選挙は、2016年の参議院選挙だった。その時の有権者数は、115万5811人だった。2017年の衆院選時は、115万8940人。これは選管のホームページにある数字で、在外者も含めたもの。これを見ると、ここ2年間ほぼ同じ。時々「選挙目当てに住民票を移す不正」があると言い立てる人がどっち側にいる。でも、そんなことはないわけである。
辺野古の地元、名護市も見ておこう。9月20日現在の名護市の有権者は、4万9445人である。得票は、玉城氏が1万6796、佐喜眞氏が1万5013票。1783票で玉城氏が優勢である。一方、2月4日に行われた市長選では、政権側が擁立した渡具知武豊氏が2万389票、翁長氏支持の現職稲嶺進氏が1万6931票で、反翁長知事派が勝利した。玉城票と稲嶺票はほぼ同じと見ていい。一方、渡具知票は佐喜眞票より5千票も多い。これはなぜだろうか。
有権者数を見ると、2018年市長選時は、4万9372人。さらにさかのぼって、2017年の衆院選時は、4万9199人。2016年の参院選時は、4万9022人。全部ほぼ同じである。今時「不正流入」を計画する陣営があるとは思えないが、実際に不審な変動はない。4万9千人は同じで、100人単位の動きはあるが自然な変動と考えられる。一方、大きく違うのは投票率である。知事選の投票率は、65.04%。市長選は76.92%である。17年衆院、16年参院はともに55%前後だった。
2014年の前回市長選は、有権者数は4万6582人、投票率76.71%。市長選は4人に3人は選挙に行くのである。選挙権が20歳だった時代なので、有権者は3千人近く少ない。前回の市長選結果は、稲嶺進1万6971票、末松文信1万5684票。稲嶺票は14年、18年でほとんど変わらない。有権者が増えているので、得票率は減っている。一方、反稲嶺(親政権)票は4700票も増えている。新しく増えた10代だって全部が政権支持ではないだろう。投票率はほぼ同じなので、2~3千人の有権者が前回と支持を変えたのである。投票率が知事選より10ポイント多いことで判るように、市長選では相当激しい働きかけがあったのだろう。
18歳選挙権後に行われた全県選挙は、2016年の参院選しかない。その時は「オール沖縄」勢力の推す伊波洋一が35万6355票を得た。投票率は54.46%だった。2014年知事選で翁長氏が獲得したのは、36万0820票。「オール沖縄」勢力は、このように35万前後の得票力がある。しかし、名護市長選で見られたように、今年に入ってほころびも見えていた。病身の翁長氏が候補として知事選に臨んでいた場合は、政権側に切り崩されていた可能性もあるのではないか。2017年の衆院選の比例区票を見てみると、自民=16万0169、公明=8万6896、維新=4万4101で、計29万票ほどが佐喜眞氏の基礎票と考えられる。31万6千を獲得したので、それなりに基礎票は獲得した。
こうしてみると、得票数が多いのは、一つには「18歳選挙権」で有権者数が増加したことであり、投票率が6割を超えて前回並みだったこと。台風で直前の運動ができなくなり、政権側の物量作戦でひっくり返すことができなかった。翁長氏の「弔い合戦」ということで、県民の心に訴えるものがあった。玉城氏の知名度は宜野湾市長の佐喜眞氏よりも高かったと思われる。佐喜眞氏陣営が菅官房長官を先頭に「携帯電話の料金を4割下げる」などと、知事の権限に関係ない宣伝をしたこと。これらの様々な要因が集まって、39万もの票が集まったと考えられる。
巨大台風が近づき、期日前投票にズラッと並ぶ異例の知事選だった。その中で、ここで政権側の思う通りにしてはいけないという有権者が多かった。翁長氏が投げかけたものが、亡くなったことで改めて県民の心に響いた。そういうことかなと思うが、宮古島、石垣島など先島諸島では佐喜眞氏が勝っている。そのことの意味は別に考えて行かないといけない。