尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

映画「愛と法」-弁護士「夫夫」の日々

2018年10月20日 21時02分33秒 | 映画 (新作日本映画)
 ドキュメンタリー映画「愛と法」が公開されている。大阪で活動する同性婚弁護士「夫夫」南和行吉田昌史の二人の日々を描いた快作映画だ。もちろん現在の日本に「同性婚」制度はないけれど、この二人は「結婚式」を挙げて「夫夫」と名乗っている。性的マイノリティである彼らは、やはり何らかの意味でマイノリティの抱える裁判を担当することが多い。彼らを通して見えてくる日本は、多くの問題を抱えている。でも、この映画を見るとなんだか希望も感じられてくる。

 カズ(南和行)は歌を作って自ら歌いYouTubeに投稿している。フミ(吉田昌史)は料理が得意で短い時間で上手に作っている。二人は性的マイノリティの啓発や憲法講座の講師も務めている。少年事件もよく担当して夜に電話が掛かってきたりする。この映画で描かれる裁判は「ろくでなし子裁判」「大阪君が代不起立裁判」「無戸籍者問題」など。さまざまな問題を抱える人々が出てきて、その描写は興味深いけど裁判をめぐるドキュメンタリーという感じ。

 ところが途中である出来事が起こる。未成年後見人に指定されていた青年「カズマ」が、突然の施設閉鎖で行き場を失い同居することになるのである。家族の様子などインタビューを積み重ね、マイノリティの生きる姿を生き生きと浮かび上がらせる。やがて彼らは「里親講座」に通い始める。この映画が描く日本はマイノリティに厳しいが、同時に彼らが活動できるような変化もある。物おじせずに世の中を変えてきた彼らの生き方は、なんだかさわやかな風が吹いてくる感じがする。

 2017年の東京国際映画祭・日本映画スプラッシュ部門で、唯一のドキュメンタリー映画として上映され作品賞を受けた。選出理由は「大胆かつ軽いタッチで、多様性、個性、勇気、愛について、力強いメッセージを届けた」あるが、もうその通りの映画。監督は、欧州で長年活動していた戸田ひかる。主にロンドンで活動していて、撮影はジェイソン・ブルックス、プロデューサーはエルハム・シャケリファーなどイギリス人スタッフが支えている。英語字幕も付いているので、見ていると面白かった。ラストの字幕で「ろくでなし子」さんが今はアイルランドで育児中と知った。
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