日本政府は韓国に対して、半導体材料の輸出管理を強化する措置を決めている。8月2日に閣議決定を行い、8月28日から発効するということになる。これは、貿易管理上の優遇措置を受けられる「ホワイト国」のリストから、韓国を除外する政令改正だが、もともとは昨年来の「徴用工判決」への「対抗措置」である。そんなことは誰でも判っているのに、日本政府がそうじゃないと言い始めて、マスコミの中にも手のひらを返すように「対抗措置じゃないのに、韓国は間違って反発している」などと言う人がいる。どうなってるんだろうか。たった1,2ヶ月前のことなのに、もう忘れているのだろうか。
(7月1日読売新聞朝刊、1面左トップ)
この政府方針を最初に報じたのは、7月1日の読売新聞朝刊である。もう忘れている人が多いだろうが、この日付には意味がある。G20大阪サミットが、6月28日(金)、29日(土)だった。日本政府は韓国のムン・ジェイン政権に対して、「徴用工問題への具体的解決策」をG20サミットまでに出すように求めていた。それに対して、韓国側は答えずに、結局は首脳会談も開かれなかった。
参院選の公示は7月4日(木)である。G20サミットと参院選の間を狙って「対抗策」を出したのである。朝刊で報じているのは読売だけ。それまでの報道をチェックしてないけど、読売しか載せてないから特ダネなのかもしれない。本来なら一面トップなんだろうが、あいにく韓国を訪問したトランプが板門店でキム・ジョンウンと会うという大ニュースがトップになってしまった。それでも記事を見て貰えば判るけど、「徴用工問題に『対抗措置』」と大きく見出しを付けている。本文の中でも「韓国人元徴用工訴訟を巡る問題で解決に向けた対応を見せない韓国への事実上の対抗措置となる」とはっきりと書いている。
夕刊でも同様に「事実上の対抗措置となる」と書いている。他紙は夕刊で報じたが、同じように「対抗措置」としている。夕刊のない産経新聞は、2日朝刊で大きく「事実上の対抗措置」と報じ、社説でも「不当許さぬ国家の意思だ」といち早く安倍政権にエールを送っている。朝日はそれに対し、3日の社説で「『報復』を即時撤回せよ」と逆の立場から論じている。しかし、どっちにせよ、朝日も産経も「対抗措置」であることは自明の前提としている。なお、一番早く書いてもおかしくない読売は、6日になって「文政権は信頼に足る行動を取れ」という社説を載せている。
この規制強化に関しては、まあ今までよりは面倒くさいだろうけど、優遇措置をなくすだけで「韓国は騒ぎすぎ」みたいなことを言う人がいる。しかし、なぜ韓国が大きく反発するかは、読売新聞の最初の記事を見ると判る。一番大きい見出しは「韓国へ半導体材料禁輸」なのである。本文を見ると、「日本政府は基本的に輸出を許可しない方針で、事実上の禁輸措置となる」とまで書き飛ばしているのだ。この第一報が韓国に伝わったわけだから、他紙を読んでいると判らないけど、韓国側は「禁輸措置」と受け取ったのは間違いないだろう。他のマスコミはそんな報道はしていないと言うのに。
軍事製品でもないものを「自由貿易」を国家の方針とする日本が禁輸出来るはずがない。なぜこのような「出来ないこと」を読売は書いたんだろう。読売が安倍政権に近いことは周知のことだから、ここでは政権側が「ホントだったらやりたかったこと」をブラフ(脅し)として読売に書かせたのか。とにかく今後は「一件ごとに輸出許可を取る」わけだから、やる気になれば「できるだけ許可を引き延ばして嫌がらせをする」道が開かれた。韓国側がそう受け取っても当然ではないか。
このように誰もが「対抗措置」と判っていたことが、いつの間にか「対抗措置ではない」ということになっていった。そのプロセスはきちんと調べてないけれど、もともと輸出関連の政令改正だから、世耕経産相が表に出てきて「対抗措置ではない」と発言するようになってゆく。それ以前は菅官房長官も「G20首脳会談までに解決策を示さなかった」ことを政令改正の理由に挙げていたのだが。これは多分、貿易と関係ない問題でルールを変更することはWTO(世界貿易機関)で批判されると踏んだのではないか。
2019年に4月に、WTOで韓国の日本産水産物に対する禁輸措置が認められた。一審にあたる小委員会では日本側の主張が認められていたが、二審にあたる上級委員会では逆転したのである。日本政府では、この時の「敗訴」が「トラウマ」となっているらしい。その問題を検討した結果、自国の「安全保障」を理由にすれば、WTOで認められやすいと判断したのではないかと思う。そこで「対抗措置」と言わずに、「安全保障上の問題」と言うように統一したんだと僕は考えている。
その「安保上の問題」ということが「GSOMIA破棄」につながったわけである。しかし、僕が言いたいのはそのことではない。当時のニュースを録画しているわけではないけれど、新聞各紙が皆「対抗措置」と書いてるんだから、テレビニュースでも「事実上の対抗措置に当たるものです」などと解説していたはずだ。ところが、たった一ヶ月ほど前のことなのに、それを忘れたかのように、輸出規制強化は対抗措置なんかじゃないんですよなどと語る人がいるのである。(僕はちゃんとテレビで見た。)これはいくら何でもひどいんじゃないだろうか。自分で言ってたこと、書いてたことをこんな簡単に言い換えて平然としているとは。先月の新聞なんだから、地元の図書館に行けばすぐに確かめられることだ。
(7月1日読売新聞朝刊、1面左トップ)
この政府方針を最初に報じたのは、7月1日の読売新聞朝刊である。もう忘れている人が多いだろうが、この日付には意味がある。G20大阪サミットが、6月28日(金)、29日(土)だった。日本政府は韓国のムン・ジェイン政権に対して、「徴用工問題への具体的解決策」をG20サミットまでに出すように求めていた。それに対して、韓国側は答えずに、結局は首脳会談も開かれなかった。
参院選の公示は7月4日(木)である。G20サミットと参院選の間を狙って「対抗策」を出したのである。朝刊で報じているのは読売だけ。それまでの報道をチェックしてないけど、読売しか載せてないから特ダネなのかもしれない。本来なら一面トップなんだろうが、あいにく韓国を訪問したトランプが板門店でキム・ジョンウンと会うという大ニュースがトップになってしまった。それでも記事を見て貰えば判るけど、「徴用工問題に『対抗措置』」と大きく見出しを付けている。本文の中でも「韓国人元徴用工訴訟を巡る問題で解決に向けた対応を見せない韓国への事実上の対抗措置となる」とはっきりと書いている。
夕刊でも同様に「事実上の対抗措置となる」と書いている。他紙は夕刊で報じたが、同じように「対抗措置」としている。夕刊のない産経新聞は、2日朝刊で大きく「事実上の対抗措置」と報じ、社説でも「不当許さぬ国家の意思だ」といち早く安倍政権にエールを送っている。朝日はそれに対し、3日の社説で「『報復』を即時撤回せよ」と逆の立場から論じている。しかし、どっちにせよ、朝日も産経も「対抗措置」であることは自明の前提としている。なお、一番早く書いてもおかしくない読売は、6日になって「文政権は信頼に足る行動を取れ」という社説を載せている。
この規制強化に関しては、まあ今までよりは面倒くさいだろうけど、優遇措置をなくすだけで「韓国は騒ぎすぎ」みたいなことを言う人がいる。しかし、なぜ韓国が大きく反発するかは、読売新聞の最初の記事を見ると判る。一番大きい見出しは「韓国へ半導体材料禁輸」なのである。本文を見ると、「日本政府は基本的に輸出を許可しない方針で、事実上の禁輸措置となる」とまで書き飛ばしているのだ。この第一報が韓国に伝わったわけだから、他紙を読んでいると判らないけど、韓国側は「禁輸措置」と受け取ったのは間違いないだろう。他のマスコミはそんな報道はしていないと言うのに。
軍事製品でもないものを「自由貿易」を国家の方針とする日本が禁輸出来るはずがない。なぜこのような「出来ないこと」を読売は書いたんだろう。読売が安倍政権に近いことは周知のことだから、ここでは政権側が「ホントだったらやりたかったこと」をブラフ(脅し)として読売に書かせたのか。とにかく今後は「一件ごとに輸出許可を取る」わけだから、やる気になれば「できるだけ許可を引き延ばして嫌がらせをする」道が開かれた。韓国側がそう受け取っても当然ではないか。
このように誰もが「対抗措置」と判っていたことが、いつの間にか「対抗措置ではない」ということになっていった。そのプロセスはきちんと調べてないけれど、もともと輸出関連の政令改正だから、世耕経産相が表に出てきて「対抗措置ではない」と発言するようになってゆく。それ以前は菅官房長官も「G20首脳会談までに解決策を示さなかった」ことを政令改正の理由に挙げていたのだが。これは多分、貿易と関係ない問題でルールを変更することはWTO(世界貿易機関)で批判されると踏んだのではないか。
2019年に4月に、WTOで韓国の日本産水産物に対する禁輸措置が認められた。一審にあたる小委員会では日本側の主張が認められていたが、二審にあたる上級委員会では逆転したのである。日本政府では、この時の「敗訴」が「トラウマ」となっているらしい。その問題を検討した結果、自国の「安全保障」を理由にすれば、WTOで認められやすいと判断したのではないかと思う。そこで「対抗措置」と言わずに、「安全保障上の問題」と言うように統一したんだと僕は考えている。
その「安保上の問題」ということが「GSOMIA破棄」につながったわけである。しかし、僕が言いたいのはそのことではない。当時のニュースを録画しているわけではないけれど、新聞各紙が皆「対抗措置」と書いてるんだから、テレビニュースでも「事実上の対抗措置に当たるものです」などと解説していたはずだ。ところが、たった一ヶ月ほど前のことなのに、それを忘れたかのように、輸出規制強化は対抗措置なんかじゃないんですよなどと語る人がいるのである。(僕はちゃんとテレビで見た。)これはいくら何でもひどいんじゃないだろうか。自分で言ってたこと、書いてたことをこんな簡単に言い換えて平然としているとは。先月の新聞なんだから、地元の図書館に行けばすぐに確かめられることだ。