尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

十勝平野のモール泉、黒湯と北の大地の魅力ー日本の温泉③

2021年03月25日 23時19分23秒 |  〃 (日本の山・日本の温泉)
 温泉の泉質と言えば、「単純温泉」「硫黄泉」「食塩泉」などという言葉が思い浮かぶが、今は名前が変わっている。「単純温泉」や「硫黄泉」は同じだが、「食塩泉」は「ナトリウム-塩化物泉」と書いてある。かつての分類では「重炭酸土類泉」だったものは「カルシウム(・マグネシウム)-炭酸水素塩泉」である。これらは源泉中に含まれる元素イオン量で分類するわけである。

 だがそれらと全く違う泉質をうたう温泉がある。それが北海道の「モール泉」だ。90年代の初め頃、北海道の山と温泉を夏休みにドライブしていた時期がある。その時に十勝地方にある十勝川温泉ホテル大平原という宿に泊まったら、そこは「モール泉」と称して真っ黒な湯だったのに驚いた。湯あたりは柔らかく、肌に優しいお湯だった。この「モール泉」とは植物由来の有機物が溶け込んだ湯で、世界でドイツのバーデン=バーデンと2箇所しかないとも書かれていた。
(ホテル大平原のモール泉)
 「モール」というのは、ドイツ語の泥炭のことだという。この「モール泉」というのは、温泉法上の分類ではないが、強烈なインパクトがあった。その後、他にも十勝地方の温泉には同じような泉質があることを知った。幕別温泉もそうらしいし、十勝地方の中心都市の帯広にあるホテルにも温泉があるところが多い。「帯広天然温泉」をうたう「ふく井ホテル」や「森のリゾートホテル」をうたう「北海道ホテル」に泊まったことがあるが、どっちもモール泉だった。
(北海道ホテルの風呂)
 これら十勝地方の「モール泉」は、今では「北海道遺産」に指定されて北海道の魅力として認められている。しかし、「モール泉」は世界に二つというものではなかった。東京によくある「黒湯」の銭湯なども、同じく「モール泉」らしい。ウィキペディアで「モール泉」を調べて貰えば、日本全国あちこちに同じ泉質の湯があることが判る。お湯に入った時の感触が似ているから、僕もそうだろうなと以前から思っていたのだが、やっぱりそうだった。
(十勝平野テレカ)
 植物由来の有機物が溶け込んでいるのが、果たして体にどんな意味があるか。僕にはよく判らないけど、透明だけど黒いお湯が掛け流しされているのが気持ちいい。調べれば世界にもあちこちにあるんだろうが、僕はやっぱり十勝平野のお湯という感じがする。広々とした大地と大きな空、観光して一日を過ごした後に入るサラサラした黒湯。それが魅力なのである。帯広のホテルを調べてみれば、ずいぶん多くのホテルに温泉が付いている。ビジネスホテルもあれば、「北海道ホテル」など町の中にありながら、森にいるようなリゾート感があった。

 ところで十勝平野の魅力は温泉だけに止まらない。ジャガイモ、小豆、インゲン、小麦、テンサイなどを中心にした一大穀倉地帯になっている。だからお菓子が美味しい。「マルセイバターサンド」やホワイトチョコなどで知られる六花亭や、バームクーヘン「三方六」で知られる柳月など全国に知られる菓子メーカーがある。六花亭本店があることは知っているが、車で行くとつい宿を出るのが億劫になってまだ行けてないのが残念。しかし六花亭がすごいのは、「六花の森」や「中札内美術村」という文化施設を作っていることだ。
 (中札内美術村)
 帯広から南へ行った中札内(なかさつない)村に画家坂本直行(さかもと・ちょっこう)の記念館がある。誰かと言えば、見れば誰もが一度は見てると思う六花亭の花柄表紙絵を描いた画家である。僕が最初に行ったときは、それぐらいしか出来てなかったけど、その後どんどん増えてちょっと離れたところに「美術村」を作ってしまった。ホームページを見たら、いっぱい美術館が並んでいるので驚いてしまった。絵に関心がなくても、美しい森とレストランがある。是非一度訪れて欲しいい場所だ。こういう施設を作るお菓子メーカーを生む十勝の力を感じる。

 また十勝には池田町もある。誰も思いつかなかった北海道でのワイン作りを成功させた町である。元祖町おこしの象徴みたいな町で、「ワイン城」まで作ってしまった。また近くにはアイスクリームが美味しい「ハッピネスデーリィ」という魅力的なお店がある。以前はスパゲッティが美味しかったが、今はピザが食べられるようだ。もちろんアイスクリームやソフトクリームも必須。北海道でずいぶんアイスやソフトを食べた気がするが、ここはベスト級だと思う。お土産で飼って家に送って、当時飼っていた犬にもちょっとあげたら「今までで一番美味しいアイスだね」と言ってた。
 (ハッピネスデーリィとアイスクリーム)
コメント
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