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尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

マイナンバーと戸籍制度ー「デジタル改革」の本質

2021年03月27日 22時57分45秒 | 政治
 「デジタル改革関連法案」は「個人情報」に関して課題が指摘されている。無料通信アプリ「LINE」の個人情報が中国の関連企業からアクセスできる状態だったという問題も表面化した。「個人情報保護委員会」(という組織が政府にある)の監督が機能しているかと問われている。デジタル改革関連法案だけではないが、内閣提出法案に多くのミスも見つかった。コロナ禍で官僚の長時間労働が続き、提出法案のチェックが不十分だったということだ。現在の日本において、「デジタル改革」そのものが果たして必要なのかと思ってしまう。
(デジタル法案に多くのミス)
 ところで、朝日新聞3月25日朝刊の記事では、この法案の提出目的について以下のように説明されている。「今回の法案のきっかけの一つに、コロナ禍で公的な給付金の手続きが滞ったことなどで浮き彫りになった「デジタル化の遅れ」(菅義偉首相)がある。平井氏(平井卓也デジタル改革相)は「すべての行政手続きをスマートフォン一つで60秒以内で可能にする」と話すが、集めた情報をいかに流通させ、使いやすくするかという狙いがある。」と書かれている。

 これは果たして実現可能なのだろうか。例えば平井卓也氏のホームページを見ると、「昨年の特別定額給付金における反省も踏まえ、国民が任意で一人一口座を公金受取口座としてマイナンバーとともに登録できるようにします」と書いてある。しかし、2020年の特定給付金は「国民一人一人」に支給されたものではなかった。確かに支給対象は「一人一人」だったけれど、支給方法は「世帯ごと」だった。僕はそれを当時やむを得ないことだろうと書いた。何故なら、政府資金の給付も民間金融機関を通して行われるから、「振込手数料」が発生するはずだからだ。世帯ごとの振込みなら手数料は半減するだろう。

 「マイナンバー」とは「パーソナルナンバー」であって、「ファミリーナンバー」ではない。昨年、給付金をマイナンバーカードから申し込めるという大宣伝を行った。しかし、そのうち自治体からはマイナンバーカードからの申し込みは止めて欲しいと言う声が聞こえてきた。マイナンバーカードからの申請だと、本人は判るけれど申請通りに同居家族がいるかどうかは手作業で確認していくしかない。かえって面倒だったのである。それなら初めから郵送で申請して貰った方がいい。

 じゃあ、どうすればいいのか。「マイナンバーカード」を「ファミリーカード」にすることは出来ない。世界に「アイデンティティカード」の持参を国民に強制する国はいくつもあるだろうが、家族全員の情報を載せたカードを作っている国はないだろう。面倒だし、そもそも「本人確認」が目的なんだから。日本の現行のやり方だと、写真を載せた上で本人が引き取る必要がある。そうなると「ファミリーカード」だと、家族全員の写真を載せて家族全員そろって受け取りに行く必要が出て来る。そんなことは不可能だ。

 そもそも日本では「家族関係」で国民を把握してきた。律令以前から「戸籍」が残っている国だ。近代になって、再び国民全員の戸籍が作られてきた。今でもパスポートの発行年金の受給手続き相続手続き婚姻届の提出(本籍地以外に届ける場合)など多くの場合に「戸籍謄本」が必要になっている。平井氏が言っているのも、多分「戸籍謄本を取らなくても、パスポートの申請が出来るようにする」ということではなく、「マイナンバーカードがあれば、スマホから戸籍謄本を取れるようにする」ということだろう。

 では「戸籍そのものをデジタル化すること」は可能だろうか。それは不可能だし、やってはいけないと思う。150年以上もある全国民の家族情報をデジタル化するのは、あまりにも膨大な仕事量が必要だ。よほどの人員とお金を投じる必要がある。そういう事情もあるが、「戸籍は差別の大本」である。デジタル化して、情報が流出したら内閣総辞職ものだ。やるとしたら、国が発注した会社が子会社に派遣社員を集めてデジタル化作業を進めるに決まってる。差別外国人差別ハンセン病差別などが残る中で、安易に戸籍情報をデジタル化は出来ない。

 政治家や芸能人のそれまで公にしてない家族情報を見てしまったら、どうするか。罰則をいくら厳しくしても、中には戸籍をスマホで撮ってツイッターに上げる輩がいないとは限らない。だから、戸籍をデジタル化は出来ない。そうすると、日本で「デジタル化」というのは「紙の書類を取りやすくする」ことにしかならない。スマホから出来れば便利かもしれないが、役所に行けば済むことばかりである。そうなるだろうと僕は思う。

 自民党保守派には何よりも「家族の絆」を強調して「夫婦別姓」に反対している人がいる。しかし、家族をバラバラにして「個人」で把握していこうというのが「マイナンバー」制度であり、デジタル化である。何で保守派はこれに大反対しないのか。多分よく判ってないのだと思う。僕はじゃあ、どう考えているか。「マイナンバーは要らない」と反対運動をしている人たちもいる。僕も要らないとは思うが、「戸籍制度」の方が要らないような気がする。それも考えてみる必要がある。世界でも戸籍がある国はほとんどない。「顔写真のない個人ナンバー」で済むのではないか。
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